ワインを作ってる子から、ビールの泡に関して質問を受けたので回答しようと思い〼。
時間があまりないことと、当日に投稿したいという気持ちがあるので、見た目や文献などにこだわらず、さらっと書いていくことにします。
【質問】
グラスごとに泡立ちが変わる理由、缶のままと注いで飲むと味わいが変わる理由、発酵中に泡のロス?を減らすために意識すること
0. そもそもビールの泡は
ビールが他のお酒と区別される要因の一つに「泡持ち」があります。泡の有無は二酸化炭素が溶け込んでるかどうかですが、泡を保持できるかどうかは話が異なります。
もっとも大きな理由は麦芽由来の水溶性たんぱく質です。
本来、水に溶け込んでいる二酸化炭素は溶ける量が温度と外部気圧に依存してるので、それより多く溶け込んだものは外に逃げようとします。しかし、水溶性タンパク質の濃度が濃いと、たんぱく質の疎水基が二酸化炭素を包み、泡を簡単には逃げないようにします。
そこにホップ由来のイソα酸や、デキストリン、ミネラルが関与し、たんぱく質同士の繋がりをより一層強くします。今まで僕は、イソα酸がメインの泡持ちの要因だと思っていたんですが、ヴェルリーナヴァイセというドイツのサワーエールの例を考えて考えを改めました。
ヴェルリーナヴァイセと泡持ちの関係
話が逸れるので興味がない人はパスしてもらって大丈夫です!
ヴェルリーナヴァイセは、ドイツ発祥のスタイルなんですが、乳酸発酵を伴うスタイルです。乳酸発酵の方法は、ケトルサワーを採用することが多いでしょうが、昔はミックスで発酵させていた(はずです)。
乳酸菌とエールイーストのミックスをビールで行うとどんなことが起きるでしょうか。実は、従来のビールと同じ作り方をするとイソα酸量が乳酸菌の活動を抑制してしまいます。なので、伝統的なサワーエールというのはIBU6(イソα酸濃度6mg/L)とかに収まります。これはキリン一番搾りの1/3くらいじゃないでしょうか。
昔のサワーエールはイソα酸が少ないので、泡持ちが悪いことが多かったんです。でも、ヴェルリーナヴァイセの画像やレシピを見てると「泡持ちをよくするためにchit maltを入れるんです」「小麦麦芽を50%入れるんです」などたんぱく質量をブーストさせるアイデアで溢れていました。で、実際に泡持ちすごそうな画像ばかり。
あくまでイソα酸というのはたんぱく質を結びつける道具にすぎなくて、水溶性タンパク質が0に近い酒はどんなにビタリングいれても泡持ちは良くないのかな?って気がしますね。
1. グラスと泡立ちの関係
グラス選びと泡立ちの関係はあります。グラスの形状とグラスの高さが主なファクターでしょうか。物理学は専門じゃないので、まじなところは分からないんですが、液体がグラスにぶつかったときの衝撃が大きくなれば泡はたくさん出るはずです。
ビールの泡は、二酸化炭素が液体中から抜け出そうとしたところをたんぱく質に囲まれて、外に出れません。液体中の泡は小さいものより、大きい泡の方が外部との気圧差が少なく安定しているので、チャンスがあれば大きな泡になろうとします(ラプレス圧参照)。このチャンスと言うのは泡同士の衝突だったりします。
液体の運動が激しくなると分子同士の衝突も大きくなり、泡と泡が衝突するチャンスが増えるので、泡はどんどん大きくなります。つまり、液体が流動的になりやすいグラスは泡立ちが良いと考えていいと思い〼。グラスの高さがそれに関係するのは理解できると思うので、次は形状ですね。
経常的には、球体がいいのかな?笑ちょっとこれは本当に物理学専攻じゃないので分からないけど、なんとなく角ばってるグラスのほうが泡立つ印象。あとは、口が細くなるタイプは泡が多く立つように感じやすいですね(錯覚かも)。
とはいえ、基本的には注ぎ方のインパクトの方が大きいはずなので、グラスに合わせて試行錯誤ですかね。。
2. 缶のまま or 注いだビール
僕はキリンのグリーンラベルと黒ラベル500mlだけは缶のまま飲みたい派です。
好き嫌いの話ではなく、科学的にどんな影響が出るのかをさらっと見ていこうと思い〼。考えられる要素は、炭酸の強さ、泡の有無、香りの立ち上がりかた、酸素の巻き込み、温度変化の大きさ、とか?
炭酸の強さ&泡の有無&香りの立ち上がり方
切り離せないので、同時に議論します。缶のまま飲む場合は、グラスの口面積よりプルタブの口面積が圧倒的に小さい、注いだときに揮発する二酸化炭素がない、など色んな要点から二酸化炭素が多い状態になります。注がないので泡の形成もなく、喉を通るときの爽快感(あるいはヒリつき?)もぐっと大きくなります。コーラの一気飲みはしんどいけど、生中*なら、、みたいなところあるのは喉の刺激を泡がカバーしてくれてるからです。*一気飲み、ダメ絶対🙅
また、揮発性の香りは二酸化炭素と共に押しあがってくるので、グラスに注いであげた方が香りを感じやすいです。
この時点でグラスに注いだ方が美味しいことが多そうですね。
酸素の巻き込み
醸造しているときは、酸素の巻き込みが~ってめっちゃ気にするのに、いざ飲むときには蔑ろにされがちな酸化。美味しく作ってるんだし、せっかくなら飲むときも酸素は少ない方が良いよな、と僕は思ってました!そういう面では缶の方がよくできてそう。ただ、提供する側はこっそり酸化が進みづらい仕組みを考えてもいいかもですが、飲むときは気にしなくていいと思う!以上!(酸化が進みづらい仕組みってなに笑笑
温度変化
缶はそのまま飲むと、手の熱が伝わりやすいので、すぐぬるくなりますね。スチールよりガラスの方が比熱が高いので、温度変化も少ないです。手で握るタイプのグラスでも、冷たいまま飲みたい場合は注いだ方が美味しく飲めそう◎
ちなみに僕は、グリーンラベルだけは缶のまま飲んじゃいますね。まんじうまい。最高。
3. 醸造中の泡ロス?について
泡は注いでからしか発生しないので、発酵中の泡ロスは二酸化炭素ロスと解釈します。
そもそもビールの二酸化炭素はどうやって溶け込ませるのかというと、方法は2つです。
①発酵により発生した二酸化炭素を溶け込ませる
②強制的に二酸化炭素を溶け込ませる
②のやり方が主流だと思いますが、①のやり方から説明します。その前に発酵の前提を置いておくことにします。
【発酵の前提】
1. 発酵タンクはクローズド(二酸化炭素が自然に漏れることはない)
2. 発酵タンク内に発生した二酸化炭素を排出することは可能
3. 外から二酸化炭素を発酵タンク内に送ることも可能
ビールは主発酵を通してアルコールと二酸化炭素が出ます。タンクを密閉していると発酵による二酸化炭素が発生するので、内圧がどんどん上昇していきます。内圧が高いのは酵母にストレスをかけますし(そういうテクニックもあるけど)、なにより内圧が上がりすぎるとタンクが耐えられなくって重大な事故が起きる可能性があります。そこで、タンクには内圧を逃がす仕組みがあります。これをエアロックといいます。エアロックは出口を水でトラップしているので、タンクからの二酸化炭素は出れますが、タンク外からはトラップの水があるので中に何も入ってきません。
👉タンク内が陰圧になると、トラップの水を吸い込むという超汚染リスクになるので、タンクの急冷は気を付けて。
発酵中に酸化炭素がビールにつきますが、あくまで温度と外圧に依存した量しか溶け込みません。その量でいいならば、あとは温度を一定にして管理しておくだけですが、基本的にはプラスして二酸化炭素をつけることが多いです。そのときに①or②の選択肢を取ります。
①自然発酵の場合:ボトルやケグに詰めるときに、砂糖とイーストを添加。容器内で再発酵を促し、二酸化炭素を添加。
👉計算や温度管理を間違えると、これも大事故になる可能性ある。砂糖の量があってても、コンタミしたら非発酵性糖分も発酵されるので楽勝で爆発します。最大級の注意が必要。
②強制的に付ける場合:主発酵が完全に終わったら、狙っている圧力まで二酸化炭素を外部から注入。狙いの圧力まであがったら、そのまま1~2日放置。その後、詰める。
👉①の方法よりもかなり安全で、狙った二酸化炭素量にしやすい。唯一気をつけることは、二酸化炭素の止め忘れ。今は安全弁がついてることがほとんどですが、万が一にもがあるので、まんじ気を付けて。
というわけでビールに二酸化炭素をつける工程を見ました。
①と②、どちらも場合でも狙っている二酸化炭素量に最初から近い方が経済的にいいのは間違いないです。二酸化炭素の流出を抑える方法はエアロックを閉じる、あるいはタンク内の温度を下げる、の2択です。この2択は、発酵に大きな影響を与えすぎるので、単に二酸化炭素の流出を抑えるためにはやらない方がいいと個人的には思っています。
というので、今回の回答は「二酸化炭素のロスを抑えるためだけに、何かすることはない」でしょうか。
終わり
今回は、色々とざっくばらんに書いてみました。寝言でも、まじめに書くと結構な文字数になってしまう。
質問等々あれば、またいつでも読んでください◎
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