Hazy - 最近のわかってきたこと

Hazy - 最近のわかってきたこと

こんにちは!
現代醸造学の知識を発信するTOP CROPから濁りに関する記事をまとめたものがあがってましたので、さくっと紹介しようと思います。長くなるとは思う(というか長い)ので興味のある記事のところから読んでいってください👏でも全部頭から読んでくれても嬉しいですもちろん。

それでは今回の記事はこちらです。

  1. Intro to Haze
  2. Yeast and Haze
  3. Hazy IPA - A recipe for the new classic style.
  4. Uncovering a Gene for Haze
  5. What Does the Existence of a Hazy Gene Mean?
  6. Haze: Misconceptions

以上6個の記事を1枚にまとめてみました!
昔、Hazy IPAの濁りに関してやざわが書いた記事もあるので気になる人はどうぞ!

それでは行ってみましょうー!

1. Intro to Haze / 濁りってなんだろう

Introduction

ビールのトレンドは一時的なものです。一部は持続力を持つものもありますが、他のものは本当に多くの人に支持される地盤を築くことができないことがあります(Brut IPAってもう記憶から消えちゃいました?)。トレンドが成熟するにつれて、消費者はそのスタイルの味わい、外観、香り、あるいは特徴的な特性に対する期待を持ってきました。トレンドに左右されたくないブルワーやブルワリーは、これら消費者が持つ大きい期待に応える方法を見つけなければなりません。そうしないと、トレンドよりも水準以下と見なされて時代に取り残されてしまう可能性があります。
かつてはヘイズブームはトレンド追い求める者たちのものと思われていましたが、販売データはヘイジービールが他のどのホップ系スタイルよりも年々の成長率が高いことを示しています。ヘイジービールを受け入れる時が来ており、それを完成させる時です。このシリーズでは、具体的にはヘイズとは何か(そして何でないか)について、また乾燥ホッピングの研究と酵母がヘイズの安定性に与える影響についての洞察を述べ、いつもしっかりとしたヘイジービールを作るための手助けをします

要約すると、①Hazy IPAをもう"単なる流行り"と揶揄するのは間違ってるよ②流行りのスタイルはその"らしさ"を消費者に求められる③Hazyらしさの基本を紹介するのでぜひ参考にしてね、的な。

What is Hazy?

ヘイズとは濁りのことです。ビール以外での濁りの例としては、空気中の霧や煙などです。濁りは、光を妨げる微小な粒子が媒体中に浮遊していることによって引き起こされます。粒子の濃度とサイズに基づいて、生じる濁りはほとんど透明から完全に不透明まで様々です。通常、飲料水には濁りがないと思われますが、牛乳のように高い濁度を示すものもあります。

上記の画像は、肉眼で見た場合の異なる濁度レベルを表現したものです。各試験管の下にある数値は、ネフェロメトリック濁度単位(NTU)を示しています。ビール愛飲家にとってはあまり興奮する測定ではないかもしれませんが、研究者が醸造プロセスのさまざまな違いが濁りにどのように影響を与えるかを理解するのに役立ちます。

濁っているという状態は、液体中に微粒子が浮いているということ。NTUという単位で濁りの強さを比べることができるみたいですね。オレンジジュースは300-900NTUに収まり、Hazy IPAは200-1000の範囲に収まることが多いそうです。さて、ビール中に漂う微粒子は何なのでしょうか?

Haze in Beer

歴史的に、ヘイズはビールの敵でした。醸造業者は何世紀にもわたって、濁りを防ぐ方法を完成させるために努力してきました。ビールの濁りに関する理解のほとんどは、ラガーやイングリッシュエールなどの明るいビールスタイルに影響を及ぼすチルヘイズとパーマネントヘイズに関連しています。

チルヘイズは、寒い温度で麦芽のタンパク質と麦芽/ホップのポリフェノールが緩く相互作用するときに形成される濁りです(疎水性相互作用、水素結合、ファンデスワールス力)。このタイプの濁りは可逆的です。
パーマネントヘイズは、麦芽のタンパク質と麦芽および/またはホップのポリフェノールが共有結合されるときに発生します。この不可逆的な濁りは、長期間の熟成期間中に発生するか、加熱と冷却の反復サイクルで強制的に引き起こされることがあります。

ビールの濁りにはまず2種類あります。チルヘイズとパーマネントヘイズで、どちらも麦芽由来のタンパク質と麦芽あるいはホップ由来のポリフェノールの結合が原因。それらが浮いて濁っているように見えます。チルヘイズは「ビールをキンキンに冷やすと発生する濁り」で、IPAなどのスタイルでよく発生しますね。Stone Brewingの写真が一番わかりやすいですね。

冷やすだけでこんなに発生してしまう濁りですが、瞬間的な味わいはなんら変わりません。温度を上げると濁りは一定元に戻ります。

パーマネントヘイズは、チルヘイズのもう一個上の現象でタンパク質とポリフェノールがより強く結合しています。そのため、温度依存性などはなく、一度濁ると再びクリアだったときには戻りません。長期の熟成で発生するときは酸化が一つのきっかけだったり、凍るくらい冷たくしたビールを常温に戻したりすると発生したりする濁りもこちらの含まれますね。

ビールの中の濁りについて話すとき、私たちは恒久的なものを指しています。それは発酵中に発酵タンクにホップをたっぷりと加えたときに魔法のように現れる乳白色の濁りです。このタイプのビールの濁りは麦芽のタンパク質とホップのポリフェノールの相互作用の結果として発生すると考えられています。これはまさに「ゴルディロックス」のシナリオです。これらのタンパク質-ポリフェノールの相互作用が多すぎると、コロイドの不安定性が発生し、魚の餌のフレークのようなものが渦巻き、雪の玉のようなものを作り出して缶の底に泥が沈んだような模様を描きます。逆にタンパク質-ポリフェノールの相互作用があまりにも少ないと、濁りはフルーツジュースのようで、白濁とはしません。

私たちの濁りに関する調査が続く間、ヘイズ最適化やドライホップのタイミング、酵母がヘイズの安定性にどのように寄与するかなど、私たちが行った実験について詳しく見ていきます。それまでの間、考える材料として一つの引用を残しておきます。

きれいな「Hazy」状態を作るにはタンパク質とポリフェノールによる相関関係が強すぎても弱すぎてもダメみたいですね。ここでいう相関関係というのは科学的な繋がりの強さのことで、強ければ強いほど周りを巻き込みどんどん大きな物質になって最終的に沈殿しちゃいます。逆に弱すぎても緩やかなつながりは小さな物質しか作れず、強い濁り状態にはならないということですね。

2. Yeast and Haze / 酵母と濁りの関係性

Haze and its sources

過去20年間、醸造業者とビール愛飲家の濁りに対する認識は大きく変わりました。特にアメリカでは、クラフトビール愛飲家はビールの濁りをありがたがり、時にはそれを期待するようになりました。濁り/ヘイズがホッピーなビールの芳香特性に寄与する証拠さえあり、ホップの疎水性成分を可溶化させる役割を果たすと考えられています。しかしながら、一部のビール文化では濁り/ヘイズは敵と見なされています。

例えば、英国のパブの客は、濁ったパイントをカスク(樽)から注がれると返品することがあり、ドイツのラガーブリュワーは多くのビールにおいて濾過なしで透明度の高い透明さを追求することがあります。

ビールの濁りに関する私たちの理解の多くは、チルヘイズとパーマネントヘイズを中心に回っています。ヘイズについて詳しく見てみましょう。以前はヘイズを取り除くことが目標でしたが、今ではヘイズを厳密に調べ、受け入れて完成させる方法を考えることが重要です。

濁りは、媒体中に浮遊している微小な粒子が光を遮ることによって引き起こされます。これは空気中の霧や煙のようなものです。粒子の濃度とサイズに基づいて、生じる濁りはほとんど透明から完全に不透明まで様々です。濁りは単なる概念ではなく、計測することができます。

濁りを取り除くべき!という考えが必要なビールのスタイルもたくさんあると思ってる派の谷澤ですが、ホップの成分が濁りによって可溶化し良い効果を表す可能性があるならどのスタイルにも濁りは効果をもたらすかもしれません。ですので、濁りは取り除くべきと頭ごなしで考えるより、一度理解してから取り除くべきかあえて濁らすべきかをジャッジするのが大事とのこと。

Haze in beer

ブルワーは様々な濁りのコントロールを試してきましたが、その多くは麦芽とホップからの寄与に焦点を当てています。麦芽に関しては、小麦や他の高タンパクの穀物を使用してタンパク質含有量を増やすこと、またオーツからのβ-グルカン含有量を増やすことがヘイズの要因の一部であることが証明されています。また、ドライホッピングも重要な要素であり、主要な理論はホップのポリフェノールがヘイズの発展に重要な役割を果たすというもので、そのために私たちはNEIPAなどのスタイルをヘイズと関連付ける傾向があります。

β-グルカンというのは大麦にも元々しっかり含まれている糖質ですが、麦芽になるときに酵素が働きこのβ-グルカンを溶かしてくれます。溶けの良い麦芽、と言うとこのβ-グルカンがよく分解されているものを差したりします。この物質は濁りの原因にもなるのですが、それ以上に麦汁に粘度を与えてスタックを引き起こす可能性があるんですね。濁りの原因としてオーツはタンパク質が豊富だし、β-グルカンも豊富だし濁り要因として優秀ですね。
(過去のオーツの記事も貼っておきますので良かったら!)

Yeast and haze

原料とプロセスがヘイズにどのように影響するかについてはたくさんの議論がありますが、私たちは酵母がヘイズにどのように影響するかに焦点を当てたいと思います。私たちの用語としては、「ヘイズポジティブ」という言葉を使って、ビールのレシピでヘイズを促進するために使用できる菌株を指し、「ヘイズニュートラル」という言葉を、ヘイズにほとんどまたは全く影響を与えないと思われる菌株を指します。私たちは、さまざまな菌株を使用し、サンプルを異なるタイミングでドライホッピングにさらした実験を実施することで、ここに至りました。ドライホッピングのタイミングは、醸造の最終段階でホップを加えるタイミングのことです。ノックアウト(煮沸終了)後、1日目、2日目など、最大7日目までのさまざまなタイミングで実験を行いました。

これらの実験からの主なポイントは以下です:

  1. 早い段階のドライホッピングは、ヘイズを除去する方法かもしれません。ノックアウトドライホップを加えたフラスコでは、サンプルがクリアになる傾向がありました(これはヘイズポジティブとヘイズニュートラルの両方に当てはまります)。
  2. 中期から後期のドライホッピングは、ヘイズを促進します。特定のホップの品種は他よりも多くのヘイズを生み出します(例えばGalaxyなど)。
  3. ヘイズは沈降とは関係ありません。沈降が少ない酵母の中にはヘイズを生じるものもあれば、影響を与えないものもあります。言い換えれば、ヘイジーIPAのヘイズは、酵母が懸濁している結果ではありません。ドライホップを増やすと、ヘイズも増えます。ヘイズの量はドライホップの量と相関関係がありました。

酵母と濁りの関係性の研究結果です。まとめてしまうと、酵母の沈降性能(flocculation)が濁りに与える影響は一定少なくて、ドライホップの量が重要そうだということですね。でも、ヘイズポジティブとヘイズニュートラルという区分けがあったというのも忘れてはいけません。沈降性能とは別な部分でヘイズに影響する部分がイーストにはあるようです。

3. Hazy IPA / 最近のレシピ

私たちはヘイズについてたくさん執筆してきました。非常に多くです。だからこそ、ヘイズポジティブな酵母株と遅いドライホッピングスケジュールを活用するヘイジーなビールのレシピを後に公開することにします。これら2つの要素は、安定したヘイジーなビールを設計する上で不可欠であることが分かっています。

濁りを考える上であまり話題にならないことは、ホップの選択です。
私たちは、Cascade、Citra、Galaxyという人気のあるホップ品種をテストして、ヘイズポジティブな株を使用するレシピでどのようにヘイズを生み出すかを調査することにしました。

Cascade、Citra、Galaxyとドライホップのタイミングの関係性(左軸が濁りの単位。数値が大きいほど濁ってる)
名言はされてないがさすがにドライホップの量は各ホップで一定と考えていいと思います。

発酵中盤でのドライホッピングがヘイズしやすいと認識されてることも多いですが、我々はそうではないと考えます。私たちの研究では、発酵後期の段階でのドライホッピングが全体的に最も良いヘイズを生み出す傾向があり、ノックアウト時(煮沸後)のドライホッピングではほとんどヘイズが生じないことが分かりました。これを3種類の異なるホップで探求するのは楽しいことでしたし、CitraやGalaxyのようなホップが多くの醸造業者にとってヘイジーなビールに使用される理由が理解できます。これらのホップは魅惑的な香りを生み出すだけでなく、ヘイズにも影響を与えるのです。同じレシピのさまざまなバリエーションで多様なホップ品種を試してみることをお勧めします。

ヘイジーな見た目を決定づける重要な要素は、ヘイズポジティブなイーストの選択と後期のドライホップとのこと。ホップの選択も濁りのレベルに影響を及ぼす可能性が示唆されていますので、採用率の高いホップは香り以外でもメリットが大きいのかもしれません。
以下、レシピです。

  • Batch size 1 barrel (~31 gallons)
  • Boil time 75 mins
  • IBUs 45
  • SRM 5.5
  • OG 16.5°P (1.067)
  • FG 5.19°P (1.020)
  • ABV 6.2%
  • Pilsner malt
    55lb (69.6%)
  • White wheat malt
    12lb (15.2%)
  • Flaked oats
    6lb (7.6%)
  • Golden naked oats
    6lb (7.6%)
  • Citra hops (12% AA)
    0.5lb | whirlpool 10 mins
  • Galaxy hops (14%AA)
    0.5lb | whirlpool 10mins
  • Citra hops
    2lb | dry hop day 7
  • Galaxy hops
    1lb | dry hop day 7
  • Strata hops
    1lb | dry hop day 7
  • Yeast
    British V (OYL-011) @ 16.5 million cells/mL

Process

Single infusion mash at 156°F (68°C) with 1.25 qts/lb water to grist ratio (2.6L/kg). Target 5.2 – 5.4 mash pH. Knock out and ferment at 68°F (20°C) for 2 weeks. Dry hop on day 7 (or when within 0.5 – 1°P of terminal) and monitor gravity to ensure hop creep is complete. Once gravity is stable for two days, crash to 32°F (0°C). Once crash is complete, rack off hops and carbonate. 

特に変哲のないレシピなようにみえますが、これが研究室レベルで考えたものだと思えば細かいところに色んな要素があるのかなと思います。一発目を作るときはこのスケジュールを全く真似して練習するのも近道だと思います!

4. Uncovering a Gene for Haze / 濁りに関係する遺伝子とは

上で触れられた「Haze Positive/ヘイズポジティブ」なイーストの遺伝子についてです。HZY1という遺伝子が濁りに与える影響とはなんでしょうか。イーストプロファイルの新しい必須事項になるかもしれない情報です。

2022年において、クラフトビール醸造業者は約2400万バレルのビールを生産し、そのうちヘイジーIPAとダブルIPAが約10%を占めていました。ほとんどの醸造業者は、ヘイジーIPAに特定の酵母株を使用しており、これにより一部の消費者や業界アナリストは、すべてのヘイジーなビールが同じ味だと考えていることもあります。私たちがヘイズの源を調査した結果、酵母はビールのヘイズの生成と安定性において重要な役割を果たすことが示されました。醸造業者が長年にわたって気づいたように、一部の酵母株は他のものよりもシグネチャーのあるオレンジジュースのようなヘイズを生成するのに適しています。私たちはその貴重なヘイズ遺伝子を探し求めることを使命としています。

ここでいう1バレルはざっくり100Lちょいってイメージでよくて、そんなことより面白いのは「ヘイジーが同じ味だと思われる原因が特定のイーストばかり使っているから」と考えてるところ。日本で「これやっぱりLondon Ale Ⅲの味か」とか言わないですもんね。てか今もLondon ale Ⅲって使うのかな知らん。

How we found HZY1

私たちのチームが既に行ってきた多くの作業に基づいて、酵母がビールのヘイズの発展に重要な役割を果たしていることはすでに確信していました。

古典的な酵母遺伝学の手法と現代のバイオインフォマティクスを組み合わせることで、ドライホップに依存した酵母由来のヘイズに関与する酵母遺伝子を特定することができました。私たちは2つの菌株を交雑させました:ヘイズポジティブな菌株の一つであるOYL-011と、ヘイズニュートラルなワイン菌株です。この交雑の結果生まれた子孫の一部はヘイズポジティブでした。その後、ヘイズポジティブな子孫をヘイズニュートラルなワイン菌株に複数回クロスバックさせ、ヘイズポジティブな子孫をヘイズニュートラルなワイン菌株に交配する作業を繰り返しました。その結果、99.2%がヘイズニュートラルなワイン菌株の遺伝子を持ち、0.8%だけがヘイズポジティブなOYL-011菌株の遺伝子を持つヘイズポジティブな子孫が得られました。全ゲノムシーケンシングを使用して、ヘイズニュートラルなワイン菌株のゲノムとヘイズポジティブなバッククロス菌株のゲノムを比較し、最終的にこの「ヘイズ遺伝子」を特定しました。

この遺伝学的アプローチから、新しい遺伝子YIL169Cを特定し、そのヘイズ促進の役割からHZY1と名付けました。HZY1の機能についてはほとんど何も知られていません。HZY1遺伝子にさらに詳しく迫ると、ヘイズポジティブなバッククロス菌株では、N末端のセリン豊富領域とC末端のセリン/スレオニン豊富領域の2つの領域に「繰り返し」が拡張されていることが分かりました。

私たちのOmega Yeast株コレクションの全ゲノムシーケンシングデータからHZY1の配列を調べると、N末端ドメインの拡張がヘイズポジティブな菌株と強く相関していることがわかりました。一方、ヘイズニュートラルな菌株は拡張を持っていないか、非常に短い拡張を持っていました。その後、私たちは複数のヘイズポジティブな菌株からHZY1遺伝子をノックアウトし、これらの菌株がもはやヘイズポジティブでなくなったことを確認しました。これにより、HZY1がドライホップに依存したヘイズにおける役割が確認されました。

難しく感じますが、地道な交配を何度も繰り返し最終的にヘイズポジティブな特徴を与える遺伝子を発見したということです。HZY1という如何にもHazyな名前の遺伝子でいいですね。遺伝子をノックアウトするというのは、遺伝子を欠損させることで遺伝子工学的な用語です。HZY1遺伝子が欠損するとドライホップしてもヘイズポジティブほど濁らなかったのでしょうね。

こちらが各種イーストと濁り度合い(NTUs)の比較実験。HZY1遺伝子が確認されているイーストと、その遺伝子をノックアウトしたイーストで濁り度合いを比較したものですがこう見ると明らかです。ヘイズポジティブなイーストはまだ数が少なく、採用率が偏るのも仕方がないようにも思えます。ただ、逆にこれまでヘイズポジティブかどうかという指標がなく、「沈降性能が高い」イーストは採用されていなかっただけに思えます。それらのイーストを使ってみたら、めちゃキレイに濁った!という可能性もあるのかもしれません。

5. What Does the Existence of a Hazy Gene Mean? / その遺伝子がもたらす意味は

長いので谷澤が簡単にまとめました。

  • Hazyな見た目とジューシーさに相関性がないように思える
  • 遺伝子技術によって、HZY1遺伝子を排除し濁りをよりコントロールできるようになるかもしれない
    ➣West Cost IPAやHoppy LagerなどのスタイルでDHをしても濁りづらいビールを簡易的に作れるようになるかも
  • 流行りのスタイルは消費者からの「スタイルらしさ」が求められる。その基準を追いやすくするためにも濁りのコントロールが簡易的になるのはいいこと。その重要なポイントはHZY1遺伝子を持つか持たないか。

6. Haze: Misconceptions / 濁りに関する新しい考え方

濁りについて研究してきた彼らだからこその提言です。

誤解①Flocculationが低いイーストをHazyなビールに使うべき

もしヘイジービールの醸造が初めての方であれば、低沈降性の酵母を使用することがヘイズの安定性に重要だと言われることがあるかもしれません。いまだに一般的な説として、ヘイジーなIPAに見られる濁りは酵母が液中に存在するためだとされています。これが多くのヘイズ志向のビールが結局は澄んでしまう理由となっており、最も沈降しにくい酵母でも時間と共にビール中から沈むためです。結果として、ビールが様々な程度の濁りを持って注がれることがあり、樽の底から注がれるビールはしばしば望んでない量の酵母が入ることになります。また、瓶詰めされたビールにとっても不都合であり、消費者にはグラスに注がないようにするか、缶を「転がして注ぐ」といった指示をする必要が出てきます。したがって、確実にヘイジーなビールを作るためのアプローチは、酵母が液中に存在させることではないと考えることが妥当です。

さらに、我々の研究によれば、沈降(フロック形成)はヘイズの安定性と相関しないことが示されています。低沈降性や高沈降性の酵母に関する事例を見つけましたが、これらは当社が「ヘイズポジティブ」と呼ぶものであり、特定の条件下でビール内で安定した濁りを生成するような振る舞いをすることを意味しています。

↑沈降性能(酵母の沈み具合)と濁り度合い(NTUs)の検証です。ドライホップを施してから7日感が経過していますが、これまで定説として唱えられていた「低Floccularationはhazy向き」というのはあまり正しくなかったかもしれません。ヘイズポジティブな株が低flocなものが多く見つかってしまった勘違いしてきた過去かもです。僕も今の今までそう思ってました。現実にはヘイズポジティブであればflocが低かろうが高かろうが一定の濁りは安定的に生み出せるようです。

誤解②麦芽以外の材料がヘイジーには必要

年月をかけて、人々はタンパク質やベータグルカンを増やすためにあらゆる方法を試してきました。小麦やオーツを麦芽醸造の際に多く使用したり、ポリフェノールのためにガロタンニン製品を使ったりすることさえありました。さらに、何人かの醸造家が煮沸中に生の小麦粉を加えているとの噂も長い間存在しました。これらはすべてヘイズを形成し、それに貢献するためのツールと言えますが、それらも"使いこなす"には特殊なテクニックや経験が必要です。過剰にツールを使用すると不安定さを引き起こし、ヘイズが魚の餌のフレークのように見えることさえあります。私たちはここでお伝えしたいのは、これらのいずれも厳密には必要ではないということです。適切な酵母株を選び、適切なタイミングでドライホップを追加すれば、大麦の麦芽だけでヘイズを作ることができます。

↑100%麦芽だけで作ったビールの濁り度合いを酵母ごとに比べた図。適切なイーストと適切なドライホップのタイミングを間違えなければしっかりと濁ったビールを作ることができるようです。

Hazy IPAに「小麦」「オーツ」が入っていることがスタンダードなクラフトビールの世界です。Hazyの祖であるAlchemistが作るheddy topperにはオーツは入っておらず小麦のみです。味わいの追求のためにタンパク質やβグルカンをブーストさせもっとりとした口当たりを作るのですが、"キレイに濁らせる"目的のために他の手段を用いることもあったのが事実です。煮沸中に小麦粉入れるのは知らなかったですが。

この誤解を誤解しないようにしてほしいのですが、「Adjunct/副原材料は不必要だ」と言ってるわけでありません。濁りを安定的に生み出すという目的において副原材料はマストじゃないよということです。小麦やオーツは濁りを生むだけが目的のアイテムじゃないですし、味わいに対してのインパクトもとても大きいです。むしろ考えるべきは、小麦やオーツを使ってなくてもイーストとドライホップのタイミングによっては大きく濁る可能性があるということです。

誤解③発酵中期でのドライホップが濁りを最大限生み出す

品種選択がどのようにヘイズに影響を与えるかを学ぶ過程で、後にドライホップを行うほどビールがより濁る傾向があるという興味深い結果を発見しました。この観察結果は、従来の常識であった発酵中間時のドライホッピングが最良だという考えとはまったく反対するものです。

ワールプールホップして、発酵中期にして、最後にもドライホップするっていうホップスケジュールが多いイメージでした。濁りが一番つくのは後期のドライホップということですね。画像はドライホップの投入タイミングを変えたものの濁りを比較してます。一番左はドライホップをしておらず、一番右は初日と7日目にドライホップをしています。ドライホップの量はすべて8g/L。day1~day7まで比較しています。

こう見ると右側2番目(day7)が濁りをつよく感じますね。イーストはBritish V(OYL-011)がヘイズポジティブで、West Coast AleⅠ(OYL-004)がヘイズニュートラルなもの。濁り方のレベルも違います。

こちらも、あくまで濁りやすさは発酵中期より発酵後期の方がという話です。DHのタイミングはイーストの有無や揮発性の考慮なども大いにありますので、考える指標の一つとして覚えておくといいくらいですね。

誤解④Hazy is Lazy - ヘイジーは手抜き

ヘイズブームが始まった際、一部の頑固な伝統主義者はヘイズに反対し、中にはヘイジーなビールが存在するのは、それらの醸造家が自分たちのビールを澄ませるのが面倒で我慢がならないからだとまで言う人もいました。しかし、私たちや多くの醸造仲間も、バッチごとに一貫した濁りを生成することは難しい作業であることを発見しました。オンラインの醸造アドバイスフォーラムを見渡してみると、数多くの醸造家が、従来のヘイジーなビールのレシピがいきなり明るくなってしまう理由を尋ねているのが見て取れます。

実際のところ、製品に安定した濁りをもたらすためには大規模な研究開発の努力が必要です。多くの小規模や中規模の醸造所は、複数の酵母株を試してさまざまな麦芽の組み合わせを見つける時間やスペースを持っていないことがしばしばあります。

私たちのヘイズに関する研究は、ヘイズの起源やそれを完璧にする方法を理解し、醸造家が信頼性のあるヘイズをビールに生成することができるようにすることを目指しています。私たちは醸造におけるヘイズについてさらに学び続け、時間が経過するにつれて研究の最新情報を共有し続けることを目指しています。

確かにHazyなビールは一定避難される時期もあったと思いますし、僕も個人的には「濁ってないビール」は高品質な印象を持ってしまう派です。ただ、クラフトビールは嗜好品という側面と強く戦い、細部にまで表現をこだわり抜く造り手が多いことも周知の事実です。以下、HOP BUTCHERのRoseさんの引用です原文でどうぞ!

These beers require the same love and care as any others. We want to be gentle, careful, and un-rushed when making beer, and the concept of ​‘laziness’ implies that brewers are taking an easy or uncaring approach. If it was lazy or easy to make these kinds of beers, we wouldn’t be working so hard to unlock it.

JUDE LA ROSE, HOP BUTCHER FOR THE WORLD

Hazy IPAにこんなに真剣に働いている人たちがいるのに、どうしてLazyやEasyなスタイルであろうか、いやない。のやつね。

まとめ

今回はHazeに関する記事をまとめて紹介し、最近の研究結果からHazeを見てみました。イーストの選択やドライホップのタイミングなど目から鱗な情報も多かったのではないでしょうか。

濁りに対する偏見は今も昔も変わらずあると思っていて、やざわも「ピカピカなビール」は高品質に思えてしまうタイプです。イーストの選択によっては意図せず濁ることもあるし、それが昔考えられていた手抜きなビールとは異なる見え方ということです。

Hazyなスタイルにもnon Hazyなスタイルにもすべてのスタイルに大いなる愛を持って接していきたいです。やざわ

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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