【レシピ】Bock/ボックのスタイル【Brewer向け】

【レシピ】Bock/ボックのスタイル【Brewer向け】

こんにちは!クリスマスぼっち勢のやざわです。

今回は前回に引き続き、Bockについてです。
歴史でなんとなくピンときたはずですから、ボックのスタイルについて切り込んでいきましょう。参考文献は前回と大体一緒ではあります。
下の"Make your best ~"シリーズが分かりやすいでしょうか。

Search | Craft Beer & Brewing

For people who love to drink and make great beer.

よかったらボック以外のビールでもモリモリ検索してみてください。
英語が読めない場合はDMくれたら解説ページ作りますか。モリモリ。

では早速行きましょう!

5 bock styles

ボックのスタイルをかみ砕いていくわけですが、オーソドックスに5つに分類します。

1. Traditional Bock
2. Helles Bock/Maibock
3. Doppel Bock
4. Weizen Bock
5. Eisbock

これで行きます。もうhelles bock と maibockの違いを見つけられなかったので、一緒にする。
派生に関しては終わりがないので5つです。

Traditional Bock

トップバッターはやはり、これでしょうか。ボックと呼ばれるスタイルですね。
何をもって Traditional/伝統的な Bockかは、難しいところですが、とりあえず記事の通り紹介します。

【スタイル】
モルト由来のリッチな風味と、ロースティー、甘みと苦みのバランスが重要。そしてラガービールらしいドライなフィニッシュをハイアルコール(6~7%)でも実現することが求められる。Diacetyl はいらない。

【おすすめレシピのポイント】
①ベースモルトは、ミューニッヒとマリスオッター(ペールエールモルト)を2:1で。ピルスナーモルトや2-rowはハチミツらしい香りがして、合わない(筆者曰く)。複雑さを増したいならば、全体のモルトに対して、CaramunichとRoastmalt[130°L]を3%ずつ、Roast Ryeを1.5%入れるも良し。

②ホップのビタリング注意。苦すぎると甘みとのバランスが取れない。IBU30でFWH[first wort hop]だけで良し。

③イーストは、Wyeast2206(Bavarian Lager)が完璧。Attenuation:77%と低くなく、かといって、普通のラガーイーストが出すcrispyじゃない味わいに。

④発酵温度はかなり低めから。7℃でピッチ。発酵が始まったら4~5日待って、ゆっくり温度をあげていく。2日に1℃あげていく感覚。15℃まであげる。普通のラガーよりも高いように感じるが、これでダイアセレストとする。エアーロックが止まったら、ビールと酵母を分けて、2週間放置。そのあとは、コールドクラッシュ。ガス圧は2.25~2.5GVくらいを好みでチョイス。

【+α】
ここまで出来たらあとは冷蔵庫で放置しておけばどんどん上手くなるはず。ちなみに、このイーストWyeast2206はよく出てくるので、頭に入れておくのがいいかと思います。あと、マッシングは67℃のシングルステップでよいと思う。
筆者はWyeast2124(bohemian lager)よりもおすすめしてます。WyeastのHPで確認しても凝集性が高いか低いかくらいしかほとんど違いは見れませんので、正味好み。どっちかで作って、あかんかったら違う方で試してみて🎈

Home | Wyeast Laboratories

BREW LIKE A PROFESSIONAL SPOTLIGHT BREW LIKE A PROFESSIONAL SPOTLIGHT CORE BREWERS SPOTLIGHT OVER 30 YEARS OF CREATING FOR FERMENTATION PRODUCTS BREW LIKE A PROFESSIONAL SPOTLIGHT CORE BREWERS SPOTLIGHT 2 OVER 30 YEARS OF CREATING FOR FERMENTATION PRODUCTS Get the pitch rate data you need to get the best, most predictable results from your brew.

Helles Bock/Maibock

こやつのせいで色々と時間を吸われた!笑
なんでかっていうと、この二つがどう違いのか、そもそも一緒なのか明確な説がないように思えたからです。結局、僕の中での結論は、一緒!笑
5月に飲むならMaibockと呼ぼうかなと思ったけど、Maibockの方がポピュラーっぽい呼称だし、もう好きにして。

【スタイル】
例えるなら、濃いめのドイツラガー。でも、一般的なボックよりは色が薄く、メラノイジン(焦げ感)のキャラクターが芯じゃない。ホップは普通よりも強めに効かせる。You know, like as "bieres de garde". そんな感じ。

アルコール度数を高めるだけがポイントじゃないし、モルティー感を強めるためにロースティングしたモルトを単に加えるのは、Maibockじゃない。それは少し明るい色をしたTraditinal bock。
Maibockは非常にモルティー感があるレシピだが、Traditional bockとは違う面でも強さがあるんだから、単純な思考でモルティー感を増そうとするのはよろしくない。薄い色には薄い色の理由がある。それを自分の懐で温めて、改良。

【おすすめレシピのポイント】
①Munichが重要だが、そこまで多く使わない。以下のようなレシピから始めるのを薦める。マリスオッターを使う理由は、素晴らしいビスケット様を出すのに重たくなりすぎないから。もっとMunichやViennaを増やすと、このバランス感を壊すこともあるから気を付けること。OG1.075で狙って。

40% pils
20% munich
40% maris otter

②ホップはビタリングのみならず、アロマにもちょっと意識を使ってみる。Mt.Hoodが筆者曰くナイス。60分と15分の煮沸。IBUは25を目指してやってみて。

Hop図鑑【Mt.Hood】

③イーストはWyeast2206(Bavarian lager)か、WLP830(German lager)が良い。

10℃でピッチング。3日に1~2℃上がるイメージで温度管理。言及されてないけど、15~16℃くらいまであげたら放置でいいはず。糖度が切れて、フューゼル感も感じなくなったら発酵はオッケー。ラッキングして、冷蔵庫でラガーリングしましょう。

【+α】
ダイアセを感じるならば、温度をもう少しあげてみてもいいかも。ラッキングのガス圧も2.0~2.5で調整していいんじゃないかな!
上手に作れた場合は”Liter-at-a-time" Beer になるらしいですよ。いいですね。僕もいつか1Lでオーダーされる日が来るのを夢見てがんばろ🎈

Doppel Bock

きましたね。ダブルボック。ドッペルゲンガーのドッペル。
ラガーが好きならば、これを避けては通れないよとまで言われる最高峰ラガースタイル。楽しみですね。

【スタイル】
もともとはモンクが断食中に栄養源として飲んでいたビールだから、本来のドッペルボックは残糖が豊富なビール。でも、結局モンクごとに作っていたからレシピは色々。非常に幅が広い。現代は残糖が少なく、その分ハイアルコールではありますね。ボディーが薄いものもあるようです。
共通認識としてあるのは、メラノイジンによる焦げ感に支えられたモルティーさ。キャラメル、トフィー、フルーツも少しあるかも。イメージはスペシャルBだわね。

アルコールの風味にも言及がされておりました。一つの意見として面白いので引用しておきます。

the alcohols should add a baked-apple flavor (think cobbler) and a spicy note on the finish.

【おすすめレシピのポイント】
①まずは、Munich。仕上がるビールに対して、0.357kg/L(15lb/5gal)の割合でやってみて。基本的にはこれオンリーでも問題ないが、少しだけ別なモルトも加えてみよう。Munichに対して1/60の量でCarafaⅡや、Victoryを足してみて
僕はチョコレートモルト足したり、ロースティッドウィートモルト足してもすごく良さそうな感じする!

あっ、Special Bもめっちゃいいかも。個人的にすごくザクロっぽい感じあって、いいモルト。
OG:1.080を狙っていく感じ。足りなかったらボイル時間を延ばしたらいいんだけど、味わいが濃くなりすぎちゃうからバランスを考えて採用してみて。

②ホップはビタリングしすぎないこと。甘みとのバランスを考えて、投入。でも、少なすぎるとよろしくない。なんでかっていうと、ビッグビアなので熟成をすることも楽しめるから。ホップが少なすぎると、コンタミの可能性もあって、熟成した頃にはバーレーワインになっちゃうかも。
ハラタウやテトナンガーおすすめされてます。IBU22をFWHでとる。レイトホップは、1g/Lくらいで20分煮沸するのがいいかも。レイトホップは好みで。Saazとかもめっちゃいいし、シュパルターセレクトとかもめっちゃいいとおもう!グラッシーだったり、紅茶っぽさがある品種がお勧め。

③イーストは、Wyeast2308(Munich lager)がおすすめ。Wyeast2206よりも、attenuationがちょっと低めで、ハイアル耐性、ダイアセチルの生産が少ない。ダイアセチルは入っててもいいんだけど、多すぎると甘い香りになりすぎちゃう。

10℃でピッチング。4日後から温度を上げ始める。2日に1℃ずつくらい、16℃までもっていく。16℃になったら、2週間放置。これで大体切れきって、クリアな味わいに。アルコール感を感じるようならもう少し熟成してもいいかも。

【+α】
範囲が広いので、自由度も大きい。好みに合わせて、色んなモルトを少し足してみても面白いし、イーストの品種を変えてみてもいいかもしれない。個人的には、フルーツをボイリングで入れるの結構ありな気がする!リンゴとか。シナモンもいいかも。

Weizen Bock

さて、四番目は小麦ボック。
個人的にはあまり好みじゃないけど、出会ってないだけかもなと思い、作ってみたい。

【スタイル】
多くの人が、Dunkel Weizen と比べるらしいんだけども、それは適切な比較じゃないと。どうしてかっていうと、下記のように捉えているから。

Weizenbock as a cross between a banana protein shake and Belgian Dubbel.
バナナ味のプロテインと、ベルジャンダブルとの何か

普通のヴァイツェンと同じようなイーストらしさがありつつも、トラディショナルボックのモルティーさを受け継いでいるのが、このビール。
個人的にはフェノリックな香りが強すぎて、バナナ味のプロテインまじでめっちゃわかる。飲んだのまだ2種類しかないが。バナナ味のプロテインがわからない方は、ぜひケンタイのバナナ味に無脂肪牛乳を注いで飲んでみてくれ。フェノリックさに共感すること間違いなしだ。

【おすすめレシピのポイント】
①モルトは次の4:2:1という構成を基本にしてみて。小麦オンリーとか、ほとんど小麦などにしても、あまり美味しくなかったそう。狙う比重OG:1.084。アクセントに、munichの1/4ずつ、Crystal 45, Special B, and Chocolate Ryeを加えてみて。

Wheat:Vienna:Munich
4:2:1
Crystal 45, Special B, and Chocolate Rye
1/4

②ホップはIBU30を超えないようにするなら、どう使ってもいい。スパイシーな香りがするやつがいいかも。Kent Goldingとか、ハラタウもやっぱりいいかも。

③イーストは、Wyeast 3068 (Weihenstephan)が一番簡単。22℃でピッチングをおすすめ。これは結構高めの温度だから、色んなもの出るけど発酵が終わるまでじっくりまつこと。切れたら、温度を1~2日に1℃のペースであげる。不必要な香り成分が消えたら、発酵はOK。ガスボリュームは最低でも2.5くらいにしておく。高くても問題ない。

【+α】
レシピだけで美味しそうだけど、マッシングに工夫を持たせて、あえて45℃でレスト挟むとかもしていいかも。理由は4VGの余計な生成を促し、バナナ感を強めるため。同じ理由でグルコース入れてもいいかも。が、マッシングで生成された香りの前駆体は官能的に理解できるほどじゃないという記事も読んだので、Try and Errorでやってみましょう。

Eisbock

最後になりますのは、変態ビール。その名のアイスボック。
その名の通りでボックを凍らすことで、水分を取り除き、味わいや度数を濃くしたビールである。生まれは、洞窟でビール置いてたら、凍ってて~的な感じだった気がする。調べたら更新します。

【スタイル】
単にドッペルボックを凝縮しただけに思われるかもしれないが、もっとも重要なポイントはドッペルボックのときには感じなかったものがアイスボックになると感じるようになる可能性があるということ。なぜなら、すべての濃度があがるkら。だから、アイスボック用のドッペルボックを仕込む必要があるのです。
甘すぎず、アルコールも強すぎずの感じで作りたい。度数的には濃縮具合にもよるが10%以上にはなるでしょう。

【おすすめレシピのポイント】
①ドッペルボックを作るときは、100%Munichじゃなくて、ちょっと別なモルトをアクセントに加えるのをお薦めしているが、ことアイスボック用なら100%Munichがおすすめ!とのこと。味わいが濃縮されるからもともとのレシピはシンプルな方がいいということでしょうね。OG:1.080を狙って。多少の差は正味、全く問題ない。

②ホップは苦くしすぎないように。IBU20くらいを一つの目安に。おすすめは、だいたい一緒だからテトナンガーとかハラタウで良さそう。成分的に色々見比べてみて、似たようなものをチョイスするかブレンドしてみるとか楽しいかも。

③イーストは戻りまして、Wyeast2206がおすすめ。よく切れる品種で、濃縮したときに味わいが濃くなりすぎないからとのこと。むしろ重要なのは、ビッグビアなのエアレーションをしっかりすることと、ピッチレートをしっかりとること。書いてないけど1.5くらい、あるいは2.0でも可能かも。主発酵がおわったときに、breadyで、a bit thin(よく切れてる)感じなら成功。

いよいよ凍らせます。楽なのはコーネリアスみたいなケグだろうけど、プラスチックのカーボイとかバケツでも可能ではある。ガラス容器みたいに割れる心配があるものは避けて。冷凍庫にぶちこんだら、数時間に一回揺らしてあげましょう。でも、”ぼちゃっ、ぴちゃっ”みたいな音を立てるのはよろしくない。優しく。
目安は、25%くらいの水分が抜ける頃がゴール。でも明確な答えはないから、とにかくチェックしては振り、チェックしては振り、の繰り返し。

⑤ゴールだと思ったところで、ラッキング。筆者はそのまま詰めるそう。イーストは追加しないと書いてあるが、プライミングの有無は不明。まあ、しないということでしょう。これも実験してみください!笑
僕はそうだな、しそう。笑

【+α】
アイスボックのテクニックは、ホームブリューが禁止の日本でも実験できるんじゃないかと思っています。僕が考える遊びはこう。

1⃣好きなビールを6本くらい買う
2⃣よく殺菌した密閉容器にビールを全部入れる
3⃣凍らす
4⃣空の炭酸ペットボトルに詰めなおす
5⃣寝かす

どう?笑
必要なら試験官カーボしてもいいし。これなら、合法的にオリジナルアイスボック作れないかな。大人の自由研究にどうですか。めっちゃ面白いと思う!笑

おわり

さて、これでボックの話は終わりです。
ラガーが好きな方は虜になっちゃうボックですが、アルコールが高いので好みも分かれそうですね。日本で作ってるところはそんなに多く聞きませんね。
美味しく作るには実験と理論どちらも使うことが近道だと信じておりますので、この記事が何かの助けになれば幸いです。

飲み専門の方も、まだ飲んだことが少ないスタイルであると思いますので、これをきっかけに素晴らしいビールと出会い、素晴らしい時間を過ごしていただけたら嬉しいです。最高のものに遭遇した場合は、是非教えてください🎈

では、この辺で。
次はそうだなー。乳酸菌について更新しないとな。

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

Reply

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください