【危険か伝統か】Methanol/メタノール【旅行と酒】

【危険か伝統か】Methanol/メタノール【旅行と酒】

こんにちは!ANTELOPEのブルワー谷澤(やざわ)です!

ANTELOPEのことはこちらからどうぞ☟☟
お酒のこと以外にも色んな食に対して面白いことを発信していきますので、是非フォローしてくれると嬉しいです!🙌

イヴが本命なのか、今日が本命なのかいつも分からない時期ですね。このシーズンほんと好きなんですよね。年末にかけて街がどんどん活気づく感じ。こと、やざわくんはどうだったかというと、貯めていたお笑い工場委員会を見てご満悦でした。

さて、先日以下のようなニュースを見ました。

ココナツ酒飲み8人死亡、数百人が病院へ搬送 フィリピン

【12月23日 AFP】フィリピンで、高濃度のメタノールを含んだとみられるココナツ酒を飲んで8人が死亡し、数百人が病院に搬送された。当局が23日、明らかにした。  被害者は全員、先週末に首都マニラ南東のリサール( Rizal )で行われたパーティーに参加しており、酒を飲んだ後に腹痛を訴えた。  マニラにあるフィリピン総合病院( Philippine General ...

このココナツ酒(Lambanog)をパーティーで飲んだ人が(記事当時)8人亡くなられた事故です。原因はメチルアルコールでないかということで、酒においてメチルアルコールが致死量発生する可能性について考えてみたいと思います。

lambanog自体は蒸留酒のようです。その分、メチルアルコールも濃く危険視は高くなるはずです。しかし、酒類全体として劇物が発生するメカニズム、危険性を考えるのは無駄ではないと思います。
では、いきましょう!

メチルアルコールの添加で片付けて安心してもいい?

まず色んなところを議論する前に、ここから入らないと読者のみなさんを口説けそうにないので、ここから書いてみようと思います。
たぶん大多数の人が「メチルアルコールを混入してアルコール度数を不当に高めただけ」と思っているかと思います。僕も正直言えば、そうだと思っていました。でも、調べてみるとそれだけじゃない可能性、あるいは、メチルアルコールを添加していなくて致死量に至るメチルアルコールの生成が発生する可能性があるなと本気で考えています。

ポイントは2つ。
ペクチンを分解し、メチルアルコールを生成する酵母がいること。
メチルアルコールはエチルアルコールよりも沸点が低く、凝縮しやすいこと。

①は、フルーツに豊富に含まれるペクチンについて。このペクチンからメチルアルコールが発生する経路がありますので、豊富なペクチンを有する原料からは多くのメチルアルコールが自然に発生する可能性があります。

②は、蒸留酒、特に工業化していない蒸留酒での危険性を示しています。沸点の差を利用してメタノールを完全に分離できると考えるきっかけになること、エチルアルコールを蒸溜しているつもりが温度が低く、メタノールのみ蒸溜していたなどの可能性もありえなくはなさそうです。

僕はあまり海外経験は多くありませんが、旅行自体はとっても好きです。
東南アジアやアフリカなどに行かれることがある際に、現地のお酒を飲む機会は数え切れないはずです。エチルアルコールの添加がされていないという説明ならば、本当に安全か。
そんなポイントに疑問を投げかけて、良好な旅と酒の楽しみに少しでも貢献できたらと思います。

長くなりましたが、口説かれちゃった方は是非見ていって?👀笑

Methyl alcohol/メチルアルコール

では改めまして。
そもそもの骨幹ですから、まずはこのメチルアルコール/メタノールについて概要を抑えておくことにします。

Wikipediaで根本的なことをひっぱることにします。

  1. メタノール (methanol) とは、有機溶媒などとして用いられるアルコールの一種である。
  2. メタノール産生菌による発酵(製法の3)
  3. メタノール中毒は、取り扱い時の吸入、故意の摂取、誤飲などで起こる。メタノールの致死量に関しては様々な報告があり、個人差が大きいと考えられるが、ヒト、経口での最小致死量は0.3-1.0g/kg程度であると考えられている。これはエタノールの1/10程度の量である。
  4. 戦前の1933年にメタノールで増嵩ししたカストリの飲用から30名以上の死者が出たほか、第二次世界大戦後の混乱期には安価な変性アルコールを用いた密造酒によるメタノール中毒もしばしば起きた。
  5. 失明者が多く出たことから、メタノールの別称である「メチルアルコール」を当てて「目散るアルコール」や、その危険性を象徴して『バクダン』と呼ばれた。

これくらいで十分でしょうか。気になる方は直接調べてみてください。
今回最も注目すべき点は、2のメタノール産生菌による発酵と、3の致死量です。それ以外に関しては、基本的な知識くらいとして片付けてもらって大丈夫です。

さっそく上記のポイントについて書いていきたいのですが、wikiに書いてない情報で抑えないといけないポイントをまずは紹介したいと思います。

そもそもメタノールは"酔う"のか

結論からすると、僕には分かりません。

そもそも酔うとはエチルアルコールによる脳の麻痺と定義をつけるとすると、メチルアルコールによるハイの状態を酔うと簡単に説明するのはしっくりきません。
じゃあ酔わない!と片付けるのは微妙。
ということで、メチルアルコール中毒も一定量ならアルコールと似たような作用がするんだろうな程度の認識にします。

が、毒物ですので、ハイについては言及しません。
一応、論文レベルでハイなのか、味わいなのか分かりませんが言及している部分がありましたので紹介します。

Professor Benito Santiago, University of Spain (Personal communication, July 2015) opined that some years ago, methanol at low concentration was desirable in beer and wines. However, we were unable to find literature confirming this claim.

Spain大学のBenito Santiagoはよれば、メタノールはビールとワインにおいて低濃度なら好ましい成分だったとのこと。しかし、発言の裏を取ることができなかった。

出典:Methanol contamination in traditionally fermented alcoholic beverages: the microbial dimension

情報としてこれくらい。
ちなみにこの論文を中心に今後の話は展開していきます。そして、ハイになる(酔う)問題に関しては不明!
一つ言えることは、エチルアルコールよりも少ない量の摂取で簡単に重篤な症状を引き起こします。

メタノール中毒による死者数

上記の論文で紹介されている酒によるメタノール中毒の死者数と関連付けられる死者数を記載します。明確にメタノール中毒で亡くなられたと紹介されているわけではありません。

  • 2008年:180人以上(バンガロール・インド)
  • 2009年:138人(グジャラト・インド)
  • 2009年:25人(インドネシア)
  • 2011年:約130人(インドの村)
  • 2015年:27人(インド)

WHO(World Health Organization)は、 Kenya, Gambia, Libya, Uganda, India, Ecuador, Indonesia, Nicaragina, Pakistan, Turkey, Czech Republic, Estonia and Norwayを含む国々でメタノール中毒の勃発が増えていると警告しています。この周辺に旅行される方は現地の密造酒のみならず全てのお酒に対して注意深く検索をかけて飲むようにしてください。

とはいえ、アルコールを楽しむ場面というのは雰囲気としてそうなりづらいときも往々にしてあります。
ですから、僕なら行く前に予め調べておいた酒しか飲まない、あるいは必ずルールを決めて「ペロッと舐めるだけ」と決めておくなどすると思います。
興味を残したまま旅を終えるのはそれはそれでもったいないですし、これからメタノールの致死量に関しても言及しますが、ペロッと舐める程度ではいくら現地の酒で危険なものでも死にはしません(口をつけて飲めば危ないですよ)。
しかし、繰り返し旅行中に行えば失明などの重篤な症状がでることはかなりの確率でありえます。一日2ペロッが限界かと思います。くれぐれも怪しいなと思った酒を容器でもらうのだけはNGです。

メタノールの致死量

 WHO reported that blood methanol concentration above 500 mg/l is associated with severe toxicity, whereas concentration above 1500–2000 mg/l causes death in untreated victims.

同様の論文ですが、WHOが2014年に出したものによると、血中のメタノール濃度は500mg/Lで相当危険、1500~2000mg/L以上ならば未処置なら死に至るとのことです。
wikiでは、「最小致死量は0.3-1.0g/kg程度」とありますね。個人差が大きいようですが、体重が70kgの成人ならば以下のようになりますでしょうか。

70kg・成人・最低致死量のメタノール
21.0g~70g

次に、ドイツの法医学者ウィドマークが考案した呼気アルコール濃度を測定する式から、血中アルコール濃度を出す式を参考にしてみることにします。

 C(血中アルコール濃度mg/ml)=A(アルコール量g)/体重kg×γ(アルコール体内分布係数)
  (γ=低0.60ないし高0.96)

これはエタノールにおいてなのですが、メタノールでも同様の式が成り立つと仮定すると、上記の70kgの成人男性が致死量のメタノールを摂取した場合の血中メタノール濃度は、以下のようになります。

C=21~70/70*[0.60~0.96]
C=0.18mg/ml~0.96mg/ml
C=180mg/L~960mg/L

となるでしょうか。弱冠WHOの基準とはズレます。
最低量を基準にしたいと思いますので、0.3-1.0g/kgの0.3g/L(メタノール摂取致死量)です。どれくらいかの例を挙げたいと思います。

メタノール度数(対体積):5%の酒があるとします。メタノールの比重は約0.8ですから、このお酒1Lに含まれるメタノールの量は40gです。つまり、上記の基準ならば一撃で死にます。USパイントくらいの量でもほぼ死にます。
WHO基準ならば、どれくらいなのかと言っても、だいたい5%のメタノール度数の酒を1L飲めば危険水域なのは間違いありません。

メタノールが酒で発生するまで

長かったメタノールの旅もひとまず済んだとして、次は本題の発酵でメタノールが発生するプロセスについて言及していきたいと思います。

重要なポイントは【ペクチン】【コンタミネーション】です。

ペクチン

ペクチンは、発酵中のメタノール発生における一番のkey factorです。
なぜならば、ペクチンが酵素によって分解されてメタノールが発生するという流れがあるからです。順に説明していきたいと思います。

その前に簡単にペクチンについて説明します。

ペクチン (Pectin) とは、植物の細胞壁や中葉に含まれる複合多糖類で、ガラクツロン酸 (Galacturonic acid)が α-1,4-結合したポリガラクツロン酸が主成分である。ガラクツロン酸のカルボキシル基がメチルエステル (methyl ester) 化されたものをペクチン、メチルエステル化されていないものをペクチン酸 (Pectic acid) と呼ぶ。
分子量は50,000 - 360,000で、特に植物の葉、茎、果実に含まれる。

出典:wikipedia

ちょっと難しいかもしれませんが、

・酸化したガラクトース(ガラクツロン酸)がたくさんくっついた高分子の多糖類
・植物や、果物の果実に含まれる

という点のみで十分です。よくビールでもフルーツビールを仕込むときにフルーツピューレを使って仕込むことがありますが、豊富なペクチンを含んでいます。関係ないけども濁り/Hazeの原因となります。それで、ホップにも1~2%のペクチンが含まれているという論文もあります。1950年代のものですが、下記から👇👇

Brewing Industry Research Foundation

ペクチンとメタノール

ペクチンからメタノールが発生するメカニズムです。

この図がわかりやすいのですが、Pectinase と Pectinesterase という2つの酵素が出てきます。この酵素は至るところに存在し、病原性や腐敗性を持つ微生物や菌が大体保持しています。

Pectinase:ペクチンをガラクツロン酸(ガラクトース)に分解
Pectinesterase:ペクチンのメチルエステル化されたところをメタノールとガラクツロン酸(pactate)とに分解

脱エステル化(エステルからアルコールとカルボン酸ができる反応)が起きる要件は色々と複雑に絡みそうですが、よくわからないので論文で紹介されている部分のみ紹介します。
ちなみにPectinestreraseは、Pectine Methyl Esterase[PME]とも呼ばれます。

Chaiyasut et al. () reported factors affecting the methanol production in fermented beverages including raw material size and age, sterilization temperature, pectin content and pectin methyl esterase (PME) activity (Note that PME activity is optimal at 50–60 ℃).

発酵性飲料にメタノールが発生する要因には、原材料の大きさ、熟し具合、滅菌温度、ペクチン量とPMEの活動具合を含む。ちなみに、PMEがもっとも活発になるのが50~60℃。

植物の細胞壁や果実に多く含まれるペクチンは構造の強度保持に関わっており、熟すということはペクチンが分解されていくことと考えられます。
ペクチンが分解されることで細胞壁の構造は弱まり、ガラクツロン酸が発生します。ガラクツロン酸はガラクトースになるんだろうから(正確に説明はできない)、甘みも増すんじゃないかと。ガラクトース自体はスクロースの30%ほどの甘みなのでそこまで甘くないですが、それでも砂糖は砂糖です。

どっちもすごい昔の論文ですが、一応果実の追熟によりメタノールが出ているのが確認できます。2つ目の論文はペクチン含有量が多いとメタノール発生量が多いことを示唆する内容です。
キウイフルーツの貯蔵方法と出庫後の品質変化に関する試験
新しい果汁清澄化酵素 pectin lyase 

と、ここでは東南アジアなどで採取される果物を原料として作られるお酒は、その原料の状態によってはそもそも発酵前からメタノールを含有する、あるいは生成する可能性があります。
あとは僕が勝手に計算したんでデータとしての価値はないですが、メチルエステル化したガラクツロン酸17gに対してメタノール1gが発生するくらいでしょうか。ざっくり、あくまでも。だから、100gのペクチンが完全に酵素によって分解したら、6gくらいのメタノールが発生しそうです。酒に残る量は知りません。

コンタミネーションが招くメタノール発生

ペクチンを多く含む原料を用いる場合には、多くの菌が保持するペクチナーゼなどの酵素によってメタノールが発生する可能性があります。

多くのビール醸造でペクチンを含む原料を使うことは経験済みですが、商業的な設備でメタノール中毒の事故が滅多にみないのはコンタミネーションの発生率が低いからではないでしょうか。対して、発展途上国で酒作りの技法がきちんと整理されていない場合にはコンタミネーションのリスクが何倍になるか検討もつきません。すなわち、メタノールが【製造工程で発生する】可能性が大いにありえます。ましてや、それを蒸溜する酒もあると思うと、メタノールを混入して無くても死亡事故は起きそうではあります。

イーストも持つPME

実はだいたいのアルコール飲料には、微量ながらメタノールが含まれています。これは汚染の有無に関わらず発生します。これも上記に書いてあるようなルートと全く一緒です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5028366/#CR8から紹介します。

Fernandez-Gonzalez et al. () genetically modified S. cerevisiae strain having pectinolytic activity.
サッカロマイセスセレビジエ属はペクチンを分解する働きをもつ、と修正された。

Strains of S. cerevisiae having PME activity could produce methanol during fermentation.
PMEが働くサッカロマイセスセレビジエ属は発酵中にメタノールを作ることができる。

麦芽やホップにも微量ながらペクチンが含まれています。そこにPMEが働くイーストを添加したらならばメタノールが発生するよ、というわけです。サッカロマイセスセレビジエ属から発生するメタノールの量は微量ですから、コンタミの発生がないなら健康を害する可能性は著しく低いです。

According to WHO (2014), methanol concentration of 6–27 mg/l in beer and 10–220 mg/l in spirits are not harmful.

少なくともコンタミ無しで作ったら、これくらいの範囲には収まるということでしょうか。27mg/Lのメタノールが入ったビールをメタノールで障害が出るまで飲んだら、その前にエタノールで重篤な状態までいくはずですから気にせず飲んでください。

ペクチン含有量

ここまでペクチンを含有し、コンタミネーションを主な原因としてメタノール発生を考えてきました。
しかし、実際の事故と結びつけるにはペクチンが一体どれくらい含まれるのかを調べる必要があります。前もって白状しておきますが、ヤシの樹液にペクチンがどれくらい含有されているかは分かりませんでした。

参考にしたのは次の論文と以下のサイトです。
The Japanese Journal of Nutrition and Dietetics

List of Foods High in Pectin | Livestrong.com

According to the Oregon State University Micronutrient Information Center, pectins are a type of dietary fiber that is found in a variety of fruits and vegetables. Pectin makes up the majority of the fiber in citrus fruits. Pectin is a type of water-soluble fiber.

これらから見る結論としては、

  1. 果実では柑橘系(特にオレンジ)の皮に最も多く含まれ、耐重量比で4%ほど
  2. ナッツ類では、5%以上含む可能性あり

そんなに多くないというのが感想ですが、仮に5%のペクチンを果実でもっている果物があるとします。ペクチン以外は全くワイン用のブドウであるその果物を使ってワインを作ってみることにします。面倒くさいのでペクチンブドウと命名します。

アサヒのお客様窓口では720mlに対して約1.2~1.5kgのブドウを使うと書いてありますから、贅沢に1Lに対して2kgのペクチンブドウを使います。ペクチンの投入量は100gということになります。
どんな作り方か知りませんが、とりあえず色んな菌が一緒に繁殖したしてペクチン酒ができました。ペクチンがすべてメタノールに変化していたとしても、6gほどのメタノール含有量です。

致死量のメタノールを摂取するにはペクチン酒を成人男性なら3Lほど飲むことになりそうでしょうか。
では、ペクチン酒を蒸溜したらどうなるでしょうか。具体的な数値は出すことができませんが、感覚的には、どんどん液体が純アルコール(メタノール+エタノール)に近づくのがわかりそうでしょうか。

とりあえず僕が考える分には、自然な方法でフルーツから作られた醸造酒ならメタノール中毒が発生する可能性はかなり低いと思います。問題となっている樹液にどれくらいペクチンが含まれているかわかりませんが、20%とか含まれていたとしたら、醸造酒だろうとも飲み会したら普通に死ぬかも。

ちなみに紹介している論文に、とんでもないものが紹介されていました。

Kaikai is produced mostly from the sap of raffia palm and oil palm and to a lesser extent from other palms such as date palm, nipa palm etc. Laboratory analysis carried out by WHO and NAFDAC (National Agency for Food, Drug Administration and Control) show that the beverage contain 16.3 % methanol,

Kaikaiというヤシの木から取った樹液で作った蒸留酒ですが、16.3%のメタノールが含まれていたようですね。1L中に130gほどのメタノールが含まれてるいる計算です。アルコール度数も非常に高いでしょうから量は飲めないと思いますが、体重が軽い人や耐性が少ない人は1shotでも重篤な症状が出る可能性があります。
そういった酒に出会う可能性がありますし、下手したら日本でもhome-distilで出来上がってしまう可能性があります。

まとめ

こんなに長く調べていて、結局今回の事故の原因は不明でした。
メタノール混入もありえます。しかし、16.3%のメタノールを含む蒸留酒が確認されていて、これが自然にできた可能性が否定できない以上、メタノール混入と断定することはできません。

なかば強引に終わらせた感がありますが、ポイントをまとめておきます。

・ペクチンは植物の細胞壁や果実に含まれる
・熟すことでペクチンからガラクトースとメタノールが発生する
・PMEが働く醸造用酵母が存在する
・メタノールの致死量は個人差があるが、最低基準は0.3g/kg
・コンタミネーションによりペクチンの分解が進み、メタノールの濃度が高まる可能性強い
・醸造酒よりも蒸留酒の方がメタノール濃度が高くなりやすい

今回の記事の目的は、旅をするにあたり少しでも怪しい酒の危険性を考えるきっかけになることでした。全て拒絶するべきか、全て容易に受け入れるべきかという風に極論にすべき問題ではありません。
致死量、含まれる可能性のメタノール量を考えてきました。もちろん学術的なサイトではないですが、もしみなさんが酒を目の前にした際の判断基準くらいにはなるかと思います。

ただ、味がわからないのですね。メタノールは。
ただコンタミネーションが強く起きている酒は酸っぱかったり、嗅いだことのない香りがすることがあるはずです。発展途上国で綺麗な香りの現地酒を飲もうとするのが間違っているかもしれませんが、一応心構えとして。

よし!
気づいたらクリスマス終わってましたね!笑
みなさんはどんな過ごし方をされたでしょうか。プレゼント交換は7年前くらいからしてないなー。
年末年始も素晴らしい日々であることを祈っております🎈
酔いお年を🍻

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

COMMENTS

  • Comments ( 5 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. By indigo

    上白糖と水とイーストのみで醸造してそれを蒸留した場合はメタノールは発生しないのでしょうか。。

    • By 谷澤 優気

      indigoさん!
      コメントありがとうございます。

      結論から言えば、発生しないと僕は思います。
      ただし、上白糖がショ糖(スクロース)のみで構成されているものとし、水も純粋、イーストもエタノール発酵しか行わないものと仮定したい場合です。
      蒸留は元の溶液の成分を濃く抽出するとはいえ、そもそもメタノールが溶液に存在しない場合にはいくら蒸留しても発生しません。

      はずです~!
      もし、何か他意があるようでしたら、またコメントいただけたら、すぐ回答します!

  2. By Pieta

    Indigo さま

    どぶろくを作りました。 材料は、米、米麹 、水、ドライイースト だけですが、メタノールが発生する確率はありますか?
    人に飲んでもらう時に心配なのですが。。。
    (自家製醸造酒が違法でない所に在住です。気にせずアドバイスをいただけたら嬉しいです)  

    • By 谷澤 優気

      こんにちは!!
      ありません!(というよりあっても問題になる量じゃありません)
      僕が知っている範囲の米、米麹に大量のペクチンがあるなどとは聞いたことがないので基本大丈夫なはずです。

  3. By Pieta

    谷澤さま

    お返事ありがとうありがとうございます。安心して友人に振る舞えます。 こちらの記事とても勉強になりました、感謝です。
    いろいろなやり方でどぶろく作りをやってみていますが楽しいですね。どんどんできてしまうので人にあげてもいいのか不安でした。
    ありがとうございます。

Reply

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください