【ビール・発泡酒・第三のビール】それぞれの違い

【ビール・発泡酒・第三のビール】それぞれの違い

こんにちは!谷澤です!

今回もコメントより【みなさんの疑問】を紹介して回答していきたいと思います!!

「発泡酒」「第三のビール」、ビールそれぞれの違いは何でしょうか?

ということです。
クラフトビール文化が少しずつ広がってきたことで、発泡酒というジャンルにあまり抵抗がなくなってきた人も多いかと思います。ただ、未だに発泡酒は偽のビール、第三のビールはそもそもビールじゃないといった意見も多く聞きます。

何が正しいという訳ではないですが、今回は分かりづらい発泡酒と第三のビールとはどういうものなのか説明していきます。最期に個人的なビールのジャンルに対する想いを書いてみたいなと思います。(この記事は2020年7月に更新しています)

疑問解決の第一弾はこちら☟

【一杯目が美味しい理由】&【生ビールを飲んでも喉が痛くならない理由】

まずは酒税法について

発泡酒や第三のビールに知る前に、酒税法について簡単に説明していきたいと思います。

酒税法とは:

アルコール度数が1%以上のものは、お酒として扱います。
嗜好品なので税金をとります。
原料や製法で、お酒はジャンルごとに大別します。
アルコール度数が高いものは多めにお金を取りますよ(濃く作って、薄めて飲んだら節税できるから)

かみ砕けば、こんなところでしょうか。

アルコール度数とは、一定温度下におけるエチルアルコールの割合のこと。
嗜好品とは、タバコ・酒など無くても生活に支障は起きず、お金に余裕のある人だけ『嗜む(たしなむ)』ものを言う。
ジャンルは、”麦芽を使えばビールやけど、果実なら果実酒やで”という感じ。

ウイスキーやリキュールはアルコール度数の規定があって、その規定を超える度数1%については、1KL(1000L)につき1万円の追加課税が発生します。

次は、ビールでは実際どのような酒税区分が当てられているのかを見ていきます。

「ビール」とは

酒税法が少しずつ変化する今、2018年4月1日より、ビールの定義そのものも大きく変わりました。

従来のビール:麦芽使用率が2/3以上、副原材料は認められたものだけ(糖分など)
改正後のビール(2020年6月現在):麦芽使用率が1/2以上、副原材料としては様々なものが麦芽の重量の5%まで認められる

何が変わったかのかというと、麦芽以外のものをもっと沢山いれてもいいですよフルーツやスパイスを加えてもビールと見なしますよ、ということです。

『麦芽100%』

麦芽100%使用。よく見かけるビールの謳い文句ですね。戦後、日本のメーカーで最初にこの謳い文句でビールを作ったのが『YEBISU』。

そもそも何に対しての100%なの?という疑問を持ったことはないでしょうか。
大事なのは、【麦芽使用率】という言葉です。この麦芽使用率というのは、水とホップを除いた原料のうち、麦芽が占める重量の割合のことです。酵母については、原料として見なされていませんので無視されています。

麦芽100%とは、麦芽のみ使用してますので副原材料は全く使用していませんよ、ということです。ドイツのビール純粋例に則れば、これが本来のビールという認識で間違いはありません。しかし、現代のビール文化では、その定義は古いです。様々な幅を持ったビールの魅力を閉じ込めてしまっているからです。

麦芽100%だけがビールじゃないということを認識して頂けたらと思います🎈

発泡酒とは

発泡酒とは、麦芽を使用したお酒の中でビールに含まれてないものです。例えば、麦芽使用率30%で、あとは全部果汁とスパイスです、みたいなレシピ。

ちなみにアルコール度数は20%を超えてはいけませんし、他のお酒と混ぜてもいけません。ホップの使用に関しては、定義がありません。

発泡酒の印象と、ビールに含まれていく流れ

発泡酒というと、大手の作る発泡酒のイメージが強いでしょうか。
僕の父も、発泡酒など飲めん!という偏屈さを数年前まで持っていました。生きてきた時代が違うので、仕方ありません。その世代の方にとっては、ビールこそ正義で、発泡酒はビールが買えない人達に向けた偽物ビールという認識なんだろうなという印象です。

クラフトビールの世界では、本質的なところでは発泡酒もビールも一緒です。要は、麦芽の使用比率が高いか、低いかだけの話で「うまい酒をつくる」というスタンスに変わりはないからです。発泡酒だからまずい、という認識は個人の自由ですが、それはどうしても「中国製だから悪い」と括って頑なに中国製品を忌み嫌い人と似たものを感じます。

国の方針としても、ビールの酒税は一本化されていきます。
どういうことかというと、「ビール、発泡酒も全部ビール」という流れになっていくということです。2026年に、そうなるという国の指針です。

ビールで使って良い副原材料

(改正前)

副原料として使用できるものは、麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉等に限定されていました。

(改正後追加された副原材料)

イ 果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮した果汁を含みます。)
ロ コリアンダー又はその種
ハ ビールに香り又は味を付けるため使用する次の物品
イ こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料
ロ カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
ハ かんしょ、かぼちゃその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含みます。)
ニ そば又はごま
ホ 蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
ヘ 花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品
ト かき、こんぶ、わかめ又はかつお節

さまざまなアイテムが増えています。これらの副原材料をモルトの5%以上で使用するか、これらに該当しないアイテムを使用すると、如何にモルトを使用していようが、発泡酒になります。

例えば、フナ寿司という食材が滋賀には存在します。それを微量でも投入すれば、モルトほぼ100%、ホップ、イースト、水で作ったお酒もビールではなく発泡酒になります。発泡酒とビールの区別とはそんなレベルの話です。

では次は、第三のビールについてです。

第三のビール/新ジャンルとは??

国税庁のデータによると、発泡酒の生産量は減っていて、その代わりに新ジャンルなる第三のビールの売り上げが伸びているようです。大手では、サントリーは一切発泡酒を作るのを止めて、ビール or 新ジャンルという構造になりました。

ビールと発泡酒を区別するのは、ナンセンスと上では申し上げましたが、新ジャンルはどうでしょうか。見ていくことにします。

厳密に言えば、ビールではない

麦芽を少しでも使用すれば、発泡酒になるのは大体理解して頂けたと思います。あとは比率や副原材料の割合でそれがビールになるのか、発泡酒のままなのかというところまで来ました。

では、新ジャンルと呼ばれるものはなんなのかというと、発泡酒から外れたビール風飲料です。可能性として考えられるのは、3つです。

①麦芽の使用率0%
②別の酒を混ぜた
③アルコール度数が20%以上

それぞれ具体的に見ていきます。

第三のビール①麦芽の使用率0%

そもそも麦芽を使用していないビール風飲料です。では、何を原料として発酵させているのかというと、麦芽でない何かの穀物です。米、じゃがいも、スターチなどなど。

ドラフトワン(サッポロビール) - エンドウたんぱくを原料とする。
のどごし<生>(麒麟麦酒) - 大豆たんぱくを原料とする。
ジョッキ生(サントリービール) - とうもろこしを原料とする。

wikipediaによると、上記のような感じです。
酒税的にはどうなるのかというと、「その他の醸造酒」です。これらの原料から得られた酒にホップを加えたり、麦芽化していない麦を加えたり、あるいは麦の香料を加えるなどして作られたのが第三のビールです。

説明だけ聞くと、まがまがしいですね。一応、メーカー側としては、味わいの追求としてこのような作り方を行ったとありますが、基本的には「節税目的」が大きな理由だと思い〼。その辺に関しては、別の記事で触れていきたいと思い〼!

第三のビール②『リキュール(発泡性)』

次の第三のビールは、麦芽を使って醸造しているけども、別の酒を混ぜているので発泡酒から外れたケースです。酒と酒を混ぜるので、リキュールになります。発泡性としているのは、発泡性かどうかで酒税が変わるからです。ちなみにアルコール度数が10%を超えると、その他の発泡酒という酒税区分は受けられません。ストロングゼロなどのハイアル飲料が9%で留まっているのも、酒税的な理由があるはずです。

本麒麟や、麦とホップなども、このジャンルです。

大体混ぜているのは、麦由来のスピリッツが多いのでしょうか。
スーパードライでも、一番搾りでも、発酵タンクに別のスピリッツを入れてしまえば、第三のビールになります。実際には、国税局もそんなことを許して税収入が下がるのは認めないと思うので、ちゃんと第三のビールは第三のビール用にレシピや設備があると思いますが。

感覚的には、麦芽を使用している分(使用しなくてもいいのですが)、こちらの方がビールに一応近しいのかな、と。

発泡酒(国内製造)(麦芽、ホップ、大麦、コーン、糖類)、大麦スピリッツ

これが原材料の一例です。
発泡酒を原料に、それに大麦由来のスピリッツを混ぜているので、発泡酒からリキュールになった、という訳です。

第三のビール③アルコール度数20%以上

一応、これも発泡酒の定義から外れます。何になのかというと、雑酒です!

日本では、基本的にビールのアルコール度数(ABV)は20%未満、という認識があります。確かに特殊な作り方をしない限り、アルコール度数が20%以上のビールを作ることは難しいです。特に国内では、大手が積極的に醸造学の研究を進めてきているので、そんな大衆受けするはずない研究をするはずがありません。

結果として国内でABV 20%以上のビールなど見受けることがありませんから、ビールの定義でもアルコール度数は20%までというのは納得がいきます。
ただし、現代の進んだ醸造学の中では作れないことはありません。

ありえないとは思いますが、今後第三のビールでABV 20%以上のお酒で、原材料:麦芽、ホップ のみという表記のものが出てくる可能性はあります。

まとめ

少し駆け足で、ビール、発泡酒、第三のビールについて解説してきました!
酒税についての記事も読んでもらうことで、どうして大手がこの発泡酒よりも第三のビールを作るようになったのかなども理解しやすいかと思い〼

今回は、読者の方からのコメントがきっかけで記事を書きました!
もしも気になることがありましたら、DMでも、コメントでもなんでもご自由に!どしどし、ご応募お待ちしています!🎈

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

COMMENTS

  • Comments ( 4 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. By サボテン

    疑問をぶつけてもいいでしょうか!
    フルーツビールが大好きなのですが、その中には
    ビールにフルーツの風味がついただけのようなもの
    フルーツの味がしっかりとするもの
    がある気がします。
    作り方に違いがあるんでしょうか?
    あとフルーツビールってどんなフルーツでも作れるんですか?
    よかったら教えてください!!( ^ω^ )

    • By eikichin1129

      サボテンさん!
      二度目の疑問、本当にありがとうございます!
      今回はフルーツビールということで、僕もどこかで記事にしようと思っていました笑
      大きなポイントは2つじゃないかと思うんです。
      1⃣入れる果物の量
      2⃣入れるタイミング
      前者はわかりやすいとして、後者は少し複雑です。発酵というのは酵母が生きていて、なおかつ利用できる糖分が存在する場合に発生します。
      このときに発酵の影響で様々な香りが揮発するということがあります。
      ですので、発酵が終了した段階でフルーツを入れる、瓶詰する前に混ぜ込むなどすると香りがダイレクトに残りやすいです。
      しかし、過剰なフルーツ感はビールの世界観を壊してしますこともあります。そこが腕の見せ所というか、面白いところでもありますね!!

      フルーツは実は何でも作れます!
      ビールを腐敗させる恐れのある乳酸菌を含む果実は僕は今のところ知りませんが、
      もし発見されたらそのフルーツでビールを作るのは難しいということが出てくるかもです!
      でも今現在ぼくはどんなフルーツでもビールと組み合わせることが可能だと思っています!
      Ble_

  2. By サボテン

    ご回答ありがとうございます( ´∀`)
    ちなみにオススメや、将来作ってみたいフルーツビールはありますか?

    • By eikichin1129

      いえいえこちらこそ、ありがとうございます!!(^^)/
      僕のおすすめは、サンクトガーレンさんのチョコレートオレンジスタウトです!
      素晴らしいバランスで、フルーツの良さがビールと最強にまっちしています!

      将来的に作りたいビールですね。
      僕はハチミツとブラッドオレンジを使った爽やかなビールが作りたいです!!
      Ble_

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