【雑談の発展】連続式蒸留を納得いくまで考えてみる。

【雑談の発展】連続式蒸留を納得いくまで考えてみる。

こんにちは!ANTELOPEのブルワー谷澤(やざわ)です!

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今回の記事は異様に長いです!気をつけてください。笑
いつもブログ長いよと指摘を受けるのですが、今日はそんなレベルじゃない気がします。どうしてかというと、リアルタイムでどんどん知見が広がっていっているからです。笑
でも調べ物ってそうですやん?笑笑
久々に脳みそを使ってあげているので、なんだか若返ったような気がします。さて、今回は前回の雑談の続きから派生して、連続式蒸留について頑張って書いてみたいと思います。追記してフューゼルアルコール(フューゼル油 / Fusel Alcohol )の話も絡めてみます。

読まれていない方も多いと思いますので、簡単にあらすじを説明します。

アルコール度数が10度近くのビールから感じるアルコール臭さと度数40度以上のウイスキーから感じるアルコール臭さが同じくらいに感じるぞ!
⇒問題はドイツ語で”いやな酒”という意味のフューゼルアルコールにありそうだ。これはアルコール臭さを演じるぞ。実はビールにはフューゼルアルコールが発酵により生まれるんだけども、ウイスキーではそのフューゼルアルコールが蒸留によって分離される可能性がありそう!
⇒だからウイスキーはビールよりもフューゼルアルコール少ないはずで、だからそんなにアルコール臭くないんじゃない?

うむ、こんな感じでした。
とりあえずフューゼルアルコールはウイスキーには少なそうという感じで終わりました。

そしたらば、身内からですね、こんな情報が来まして

”ウイスキーにはフューゼルアルコールを分離する工程があるよ!”
”アロスパス式蒸留を調べてみたら”

なんと頼りがいのある情報ではないか。もし仮にウイスキーでもフューゼルアルコールがあまり良くないものとして扱われているのであれば、いよいよ醸造酒の酒臭さというのはフューゼルアルコールが関係していると断言してもいいかもしれない。

そんな熱い胸騒ぎに急かされ、アロスパス式蒸留をはじめとしてウイスキーの連続式蒸留について考察してみたので覗いてくださるととても嬉しいです。

アロスパス式蒸留を2秒だけ紹介

日本語で単に調べてもまっっったくイメージが沸かない!
落ちている情報をかき集めてなんとなく整理してみますが、たぶん怪しいところや分かっていないところだらけなので、ほーんそんでそんで?くらいでお願いします。笑

酒文化研究所というHPによると、

連続式蒸留機は日本では戦前イルゲス式等が用いられていました。昭和25年(1950年)にフランスからアロスパス式蒸留機が導入され、30年(1955年)にはそれを改良いたしましてスーパーアロスパス式蒸留機が考案されます。さらに35年(1960年)に減圧蒸留塔を使う技術が完成して、水以外の不純物をほとんど含まない高品質なアルコールが造れるようになりました。

とのことです。
色々と書いてありますが、アロスパス蒸留器というのは、フランスから輸入された連続式蒸留器ということですね。が、それ以上の情報なし。

では、次に協和発酵(株)の”アルコールができるまで”という1970年代の文献からみてみます。

アルコールの蒸留器ではギョーム式などが有名でしたが、フランスのMELL社が開発したアロスパス蒸留機が昭和26年日本に登場~
さらに昭和29年低沸点物の抽出をより効率的にし併せて、熱効率の向上を目的として改良されたスーパー・アロスパス式が導入されました。
出典:アルコールができるまで/770,771頁

とのことです。またスーパー・アロスパス式という言葉が出てきましたが、いったん無視します。
依然としてアロスパス式がなんなのか分からないからです。笑
(あとから読みなおしてみたら、普通にアロスパス式について書いてあったので、是非皆さんも読んでみてください。笑)

3つ目です。SAKEDORIというHPを参考にしてみます。

アロスパス式蒸留器
フランスメル社が開発したアロスパス抽出塔を特徴とした連続式蒸留器。
通常の蒸留では不純物のフーゼル油はアルコールと共に共沸してしまうので、精製塔と分縮の棚を増やしただけでは分離できず純粋なエチルアルコールは得られません。
そこで、フーゼル油は水に溶けない性質を利用して、濃縮したアルコールの熱水を加えて不純物層を取り除く方法を思いつきました。(=加水抽出蒸留
1950年代に日本に導入。メル社はワイン粕から回収されるグレープスピリッツを対象に装置を作ったので、改良が必要でした。
1955年頃に改良されたスーパーアロスパス式が導入し始めてから、現在までほとんどのグレーン蒸留はこれでされています。
*出典を参考に文体、句読点などは筆者追記。

一番分かりやすいようで、結局イメージが沸きません。
が、ある文が遂に登場しました。それが、『不純物のフーゼル油』です。主観的な可能性もありますが、HPの筆者さんはウイスキープロフェッショナルを所有しているとのことで主観性オンリーという可能性は低そうです。やはり、ウイスキーでもフューゼルアルコール(フューゼル油)は取り除かれるべきものなのでしょうか

前回の雑談で述べたように、フューゼルアルコールの沸点はアルコールよりも高いはずです。なので、単純に考えるとアルコールと一緒に沸騰するわけなくね?ってなりそうですが、これは共沸という言葉を正確に理解しないといけません。しかし、大学受験でもっとも苦手だったこの分野をもう一度きちんと理解しようと試みるのはなかなかの苦行です。あとで別の記事として頑張って説明してみます。高校生だった10年前の僕自身に教えるように、もし大学受験や高校の理系科目に困る学生たちが何かの拍子にたどり着いてくれたら是非読んでくれたら嬉しいですね📚

また、フューゼルアルコールが水に溶けない性質を利用した方法が開発されたわけですね(フューゼルアルコールはプロパノールという完全に水に溶解する物質も含んでいますが、全体でみると非溶解性の物質が多いので総じて溶けないと一般的に言われているのでしょう)。
⇒追記:水に溶けない性質を利用しているかどうか不明瞭にしておきます。抽出蒸留というワードになりますが、これは溶液中の濃度をいじり、揮発度を変化させる蒸留方法だからです。後で説明します!

それがどんな方法かというと、加水抽出蒸留ということなんですね。
ということで、アロスパスの英語スペルも不明で海外文献にも引っかからなかったので、一旦このサロンパスみたいな蒸留法は置いておいて、連続式蒸留と加水抽出蒸留というものを見ることにします。

ということで今から、【蒸留】【連続式蒸留】について考察することにしましょう。話はそれからじゃないと前に進まなそうです。

蒸留とは

そもそも蒸留とは何でしょうか。理科の実験でやったような、やってないような。

蒸留(じょうりゅう、Distillation)とは、混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作をいう。通常、目的成分が常温で液体であるか、融点が高々100℃程度の固体の場合に用いられる。共沸しない混合物であれば、蒸留によりほぼ完全に単離・精製することが可能であり、この操作を特に分留という。
出典:wikipedia

すでに少しややこしい。物質は各々に異なる沸点がありますので、その差を利用してやると、混合物を温める際に沸点の低いものから先に蒸気となり分離できますよということです。料理とかで調理酒を使うことがありますが、あれでよく『アルコールを飛ばす』なんて表現使いますよね。あれとまさしく一緒です。調理酒からうま味成分だけ残して、沸点の低いアルコールだけさようならするわけです。
ちなみにうま味の代表格、グルタミン酸の沸点は330℃くらいらしいので、こちらを蒸留してみたい方はやめておいた方が良いと思います。火事になります。

また、ウイスキーはよくビールを蒸留したものと表現することがあります。話として分かりやすいので、手を入れずにそのまま紹介します。
ビールのアルコールはだいたい5~7%のものが多く、これを上記のように蒸留してやるとどうなるでしょうか。ビールに含まれるアルコールは沸点が低く、熱を加えてやるとアルコールが優先的に気化していきます。もちろんそれ以外にも麦芽由来の揮発成分や一定の水分も気化していきます。それを冷やしてやると気化したものがもう一度液体になります。できたあがった液体はもとのビールよりもはるかにアルコール度数が高い無色透明の液体となります。これがウイスキーのニューポットと呼ばれるものです。ニューポットはアルコール度数が70度にも達することがあって、これを加水したりしなかったり、樽に詰め詰めして寝かせたりブレンドしたりしたものがウイスキーとして市場に出回っているわけですね。ちなみにウイスキーの色は樽由来だそうですね。

お次は連続式蒸留。
焼酎とかでも単式蒸留とか、連続式蒸留とかで甲乙をつけていますよね。さて、その違いの根拠は一体なんでしょうか。
その前に共沸についてのリンクを張っておきます。【まだ完成していませんm(__)m】

共沸

もともと目に見えない物質の運動を理論的に考えるのが非常に苦手でした。数学でいえば、空間把握。物理でいえば、電気。化学でいえば、理論そのもの。だから、この共沸なんてワードも覚えていないし、原理もよくわからない。
高校受験のため、大学受験のためになんとか理論を頭に叩き込んですぐに使えるようにしておいた僕と同じや学生は多いのでないでしょうか。

大人になって、お酒を嗜めるようになった僕から高校生のころの僕に理論を少し簡単に説明してみました。
たまにはインターネットで寄り道するのもありだったかもなー。笑

≪現在作成中です。すぐ作りますので、しばしお待ちを。。≫

連続式蒸留とは

実際のウイスキーの製造を例にとって考えてみます。
5~7%のビール(実際にはビールじゃなく、醪/もろみと呼ばれています。以下、誤解を避けるために醪とします)を単に一度蒸留するとどうなるでしょうか。いったん、サントリーさんによる単式蒸留についてみてみることにします。

サントリーさんのHPにはこちらから✌✌

サントリーさんによれば、単式蒸留は普通2回行われるという。一回目を初溜と呼びます。醪の初溜では、アルコール度数約20度ほどの液体がゲットできます。これをローワインと呼ぶそうです。様々な成分が含まれているこのローワインは香味成分も豊富ですが、雑味もそれ相応なそう。
そのため、これをもう一度蒸留してやります。これを再溜と呼ぶそうです。これにより得られるものはアルコール度数が65~70度くらいになるそうですね。
もちろん色んなやり方があるはずなので、これが正解じゃないですが、蒸留のイメージがしやすければなんでもいいです。

丁寧にその下に連続蒸留が説明されています。

連続蒸溜器(パテント・スチル:Patent still)による蒸溜方法で、日本やスコットランドのグレーン・ウイスキーにこの方式が使われます。
連続式蒸溜器はモロミ塔と精溜塔の2つの部分からなり、塔の中には数十段の棚があります。
モロミ塔の塔頂からモロミを送り込み、同時に下部から上部へ蒸気を送り込みます。そしてこの蒸気によって加熱されたモロミ中の揮発性成分が取り出され、冷却されて溜出液に戻ります。
原料のとうもろこしの個性に合わせて非常に高濃度(94度)まで蒸溜するため香味成分が少なく、くせがありません。口当たりをなめらかにし、モルト・ウイスキーの強い個性を柔らげます。
出典:サントリー

ね。イメージ沸きづらいですよね。笑
ちなみにwiki先生もっと不親切なんでここからは僕が自分なりに絵を書いて説明する!!笑

うまくできねーや。笑
赤い矢印が醪が流れるラインで、青色が水蒸気です。一番右上から一切熱を受けていない醪流れてきます。醪が通るラインを水蒸気が温めますので、醪の熱をうけてアルコールを含めた様々なものが揮発します。拙い説明で麦感強いと書いたのは、このあたりから蒸留される成分は麦感が強いよということです。上記の単式蒸留でいう初溜と同じような成分になるはずです。
ただ、果たしてこの醪入り口付近にあがってくる水蒸気は本当にただの水蒸気でしょうか??

棚ごとで起きている反応が理解の鍵

連続式醸造機にはラインと表現した部分がたくさんあって、棚と呼ばれています。この棚の段数が多ければ多いほどクリアな蒸留成分が得られるはずですが、どうしてでしょうか。

色んなサイトに書かれている”連続式蒸留は単式蒸留を繰り返しているから”という説明は非常に分かりやすいようで、核心をつくのは難しいです。単にずっと水蒸気による熱を得ていて、長い間蒸留されるのでは?と勘違いされている方も多いのではないでしょうか。僕も完全にそう思っていました。だから、単にライン(棚)の容積が狭いから熱効率が良く、単純に工業化に向いているのかなとか、焦がしづらいとかそんな理由だと思ってました。

なんでかっていうと、ただ蒸留されている時間が長いだけなら単式蒸留でも同じことできるじゃないか、って考えたからです。最上段、つまり醪の入り口で初溜と同じ現象が起きて、薄くなった醪にまた蒸気があたって、さらに成分を蒸留させる。そんな風に勘違いしてしまうともう迷宮です。

この迷宮から抜け出すには、棚ごとに起きている化学反応を理解する必要があります。

連続式蒸留機の一番下の棚

まずは連続式蒸留機の一番下の棚を見てみましょう。
醪は捨てられる直前のため、成分はもっとも薄くなっています。これも理由はあとでわかりますが、それよりも直観的に理解しやすいと思います。

まず、この醪がある程度のアルコールのみを保持していると仮定します。最下段の棚にはまっさらな水蒸気が供給されています。その水蒸気は棚にぶつかり、醪を温めます。温められた醪はアルコールを揮発させます。

ただ、ちょっと待ってください。発生したアルコールは一体どこへゆくのでしょうか。実は、この棚には指程度の穴が無数に空いているようで、そこをすべての蒸気が通過するようです。
*出典:https://www.ballantines.ne.jp/scotchnote/15/index.html

つまり、この最下段の棚で起きている現象は二つです。

①水蒸気が醪を直接温めて、アルコールが揮発する。
②水蒸気は醪に熱を奪われて水にもどる。

この2つの反応が起きています。ここで注意しないといけないのが、すべての水蒸気が水に戻るわけではありません。醪を温めるのに使われた水蒸気が水にもどるだけです。
そして、醪から一定のアルコールが揮発します。それらは棚に開けられた穴を通って水蒸気と一緒に次の棚を目指して龍の如く昇っていきます。今回は分かりやすくこの棚を抜けてくる水蒸気に対して均一に10%分のアルコールが含まれていると仮定します。

では、次は下から二番目の棚ではどんなことが起きているか考えてみましょう。ちょっとワクワクしてきませんか?

これが下から二番目の棚で起きている反応です。ちょっと明るくしすぎてしまいました。

さて、最下段よりも成分の濃い醪が流れてきます。最下段はこの醪が一度蒸留されたものが流れてくるわけでそれはそれで至極当然です。
では、この棚を温める蒸気は何かというと、先ほど説明した水蒸気にアルコールが10%混じったものです。水蒸気100%とどんな違いが生じるでしょうか。ここでも2つの反応が生まれます。

①蒸気が醪を温めて、醪を温めてアルコールなどを揮発させる。
②アルコールを含んだ蒸気は醪に熱を奪われて水とアルコール(液体)になる。

①は先ほどと一緒です。異なるのは②の方です。
水蒸気のみの場合と違って、アルコール(気体)も温度が下がれば水蒸気と同様に液体に戻ります。この戻ったアルコールはどうなるかというと、醪内に留まります。蒸気が通った後の醪はどうなっているでしょうか。成分は変わっていないでしょうか?

出たものと入ってきたものを考えてみます。
水蒸気に少しアルコールの混じった蒸気によって温められた醪は蒸留されているのと同じことでアルコールを含む様々なものが気化していきます。それとは逆に醪の中に新たに留まるものは水90%でアルコールが10%の液体のみです。つまり、純粋なアルコール濃度が濃くなっていきます。

どんどん同じように考えていくと、上の段に行くほど(エキス分が)濃い醪になって、蒸留して揮発する成分はアルコール以外にも多くなります。しかし、あがってくる蒸気も同様にアルコールや揮発成分の濃度が上がっていきます。これが冷やされてはまた醪の中にもどって、繰り返し上昇してくる蒸気たちによって蒸留されます。

これが連続式蒸留が連続式と呼ばれる所以です。

ポイント
1.上の段にいくほど蒸気が含む成分が濃くなる。
2.   濃くなった蒸気がまた醪の中に冷やされて戻っていく。
3. 醪中の純粋なアルコール濃度が上がっていく。
4. アルコール濃度の上がった醪からはよりアルコール度数の高い蒸気が発生する。

どうでしょう。僕はすごく納得いったんですが、もしかしたら色々とはしょったり、逆に分かりづらくなっているかもしれません。質問などなるべく早く対応しますので、どしどし待っています!

では、いよいよ本題か!と思いそうですが、まだです。
【加水抽出蒸留】です。

加水抽出蒸留とは【アロスパス蒸留機含む】

これは単に水を加えた抽出蒸留ということのようです。じゃあ抽出蒸留とはなんでしょうか。

今度は”ブリタニカ国際大百科事典”より引用します。

普通の蒸留では分離できない混合液体に,沸点の高い第3の成分 (溶剤) を添加して,蒸留分離する化学操作をいう。第3成分と混合液体中の各成分間との親和力の大小により揮発度に差を生じさせて,選択的に抽出分離する。

難しく感じますが、大丈夫です。
普通の蒸留では分離できないというのは共沸状態にあるとかでしょうか。共沸については別なページで説明します。
ともあれ、大事なのは揮発度に差を生じさせることで分離できない混合液体を分離できるようにするということです。

実際にどうしてそうなるかは、高校化学の知識を大幅に超えるところであると思うので、そうなんだーにしておきます。僕が理解できそうなところまではきちんと責任を持ちます。笑

最初の方に紹介した文献(アルコールのできるまで)に、貴重な情報がありました。

アロスパス式蒸留機の特長は,粗アルコール溶液に温水を加え,アルコール濃度を10%程度まで薄めながら精留することによって,不純物を除去するところにあります。このような蒸留を抽出蒸留といいます。抽出塔の内部ではほとんど濃度勾配がありません。アルコール発酵もろみに含まれている不純物はメタノールを除いて,アルコール濃 度が20%以下の時には比揮発度がアルコールよりも大きくなります。このために低アルコール濃度を保ちながら精 留することによって不純物の大部分をアルコールと分離できます。

よいしょ。
なんならアロスパス蒸留機の特徴まで書いてある。これを読む限りアロスパス蒸留機というのは、加水して不純物を揮発性の差から取り除く方法のようです。

どうしてそんな面倒なことをするかというと、フューゼルアルコールをなるべくウイスキーに残したくないからなんです。
あまり良くない香りとして認識されているようだからです。

そしてこのフューゼルアルコールはエチルアルコールと共沸状態を作ります。たくさん出てくるので、簡単な説明を。共沸状態をつくる溶液は溶液と同じ濃度の蒸気しか蒸留できないんです。水とエチルアルコールも実は共沸状態を作ります。それはアルコール度数が94%付近になったときです。その状態ではいくら普通の蒸留をしても、濃度94%のアルコールを含んだ蒸気しか出てきません。つまり、エチルアルコールはそれ以上の濃度で分離できません。
ちなみにこの共沸状態で蒸留されているものが、スピリタスという物理的にも最高度数の蒸留酒です。面白いですよね。

戻りましょう。エチルアルコールとフューゼルアルコールが共沸状態を作るので、普通の蒸留をいくらやってもフューゼルアルコールを完全に分離することはできません。

そこでアロスパスだ。
なんでか知らんが、溶液中に温水を加えてアルコール濃度を20%以下(実際には論文で10%程度となっていますが)にしてやることで、なんとアルコールよりもフューゼルアルコール(不純物という表記)の揮発性がアルコールよりも優先されるようだ🎈
優先されたフューゼルはお先に、と言わんばかりに揮発していきますのでこれで分離することができます。
どうして温水なのかはわかりませんが、もしかしたら設備の仕組み上か、あるいは温度を保持するためか、なんにせよ反応に影響のある部分ではないと思います。

これが加水抽出蒸留、あるいはアロンパス式蒸留の仕組みです。

アロスパス式蒸留

・フューゼルアルコールとエチルアルコールの混合溶液に水を加えてやることで、共沸状態にあった溶液に揮発度の差が生まれる。それを利用してやることでフューゼルアルコールを高い精度で分離することが可能になった。
 

まとめ【感謝🎈】

長かったですよね。卒論の導入くらい書いたんじゃないかな。笑
個人的にはすごく楽しかったです。少し触れた共沸についてはまた後日詳しいことを書きますので。

さて、僕自身ウイスキーの知識はほんとにこれっぽっちもありませんでした。でもビール同様に素晴らしいお酒で研究や歴史も誇れるほど積まれてきたものがあります。それをこの記事を通じて勉強することができました。きっかけを与えてくれた兄をはじめとして、読んでくださる皆様の応援あってこその成長だと心から思っています。ありがとうございます。

また、この記事を通じることで焼酎も少し勉強になるかと思います。
単式蒸留がシングルモルトと表現できるならば、焼酎は乙類と呼ばれるものですね。乙類の焼酎は味わい深いものが多いとされているのも蒸留の仕方に由来があるはずです。ちなみに泡盛は乙類の焼酎で、黒麹菌をつかったものです。然り、味わいが豊かで好きな人も多いですよね🎈

本当にここまでご精読していただきありがとうございました。
では、僕は飲みに行ってきます!(笑)

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

COMMENTS

  • Comments ( 4 )
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  1. By sakamaki

    ウイスキー検定の勉強でアロスパス式を調べていて行き当たりました。とてもわかりやすかったです。ありがとうございます。
    ニッカがコフィー式を導入したのが1963年(このときアサヒビールが出資したため、ニッカはアサヒの関連会社となります)。竹鶴政孝が当時「あえて古い形式の連続蒸留機を導入した」というのが有名な逸話なのですが、アロスパス式が1950年代にはあったことがそのことなのだと納得しました。

    • By Ble_

      sakamakiさん!!!!
      ありがとうございます!
      まさかまさかビールブログから初めて、ウイスキー検定を勉強されている方のもとに僕の机上が届くとは思ってもいませんでした。本当にうれしいです。
      最近はすこし忙しくて更新が止まっていますが、またよかったら覗きにきてくださるととってもうれしいです。
      アロスパス式は僕も調べてみてもなかなか情報が出てこなくて、自分で納得いくように考えていくしかありませんでした。
      ただ、そうした知見が別のsakamakiさんの知見により拡張されて、新しい知見が生み出されるのはいつでも気持ちがいいものです。

      ウイスキーも奥が非常に深いですよね。
      検定はとても崇高で、誇りや楽しみにつながるはずです。応援しています。心の底と静岡の端っこからではありますが。
      Ble_

  2. By maltheads

    ウイスキー検定の勉強でアロスパス式を調べていて行き当たりました。とてもわかりやすかったです。ありがとうございます。共沸についてもぜひまとめお願いします。

    ニッカがコフィー式を導入したのが1963年です(このときアサヒビールが出資した縁で、現在ニッカはアサヒ傘下となっています)。当時竹鶴政孝が「あえて古い形式の連続蒸留機を導入した」というのが有名な逸話なのですが、アロスパス式が1950年代にはあったことがそのことなのだと納得しました。

    • By Ble_

      maltheadsさん!ありがとうございます!
      コメントが非常に類似しています!笑
      共沸了解です。化学的には結構ややこしくて、きっと色々なマスターの方に違うぞと怒られそうではありますが、なんとかまとめてみたいと思います!!
      Ble_

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