アルコールとボディーの関係【残りは雑談】

アルコールとボディーの関係【残りは雑談】

こんにちは!Ble_です。
noteとブログをいったりきたりで、模索模索の毎日です。この記事は両方にあげてみようと思います。専門的でもあるし、単純に一つの話題として切り取っても面白かと思ったからです。

今回テーマにするのは【アルコールとボディーの関係】です。
発端はもやもやしていたビールのスタイルについてでした。それは【インペリアル/ Imperial】と称されるようなハイアルコールスタイルです。一般的に7~9%くらいまでのアルコール度数を示すことが多いように思います。
どうしてもやもやしていたのかというと、わざわざハイアルコールにする意味ある?というところでした。

Stand_up_OneLeg|note

痛風になっても、大丈夫。美味しいビールを飲もう。 そんなコンセプトで美味しいビールを作りたいと真剣に願う大学院生です。 ブログでは簡単で面白いビールの世界を。noteでは、もう少し具体的で、議論の場にもなるような活気を提供したいなと考えています🍺

個人的にはアルコール(エチルアルコール)には味があると思っておらず、同じ味わいなら度数が低い方がいいだろうと思っていたわけです。インペリアルが味わい深いのは単に高分子の残糖やたんぱく質が多く、それが味わいに寄与しているだけだろうと。クラフトビールはアメリカの文化だと思っていて(主観です)、彼らのアルコール耐性と日本人のそれとはやっぱり差があると思うから、アメリカではやってるスタイルをそのまま日本で流行らせるのはなんか違うよなーって、とんがっていた訳です。

僕が質問した2人のブルワーさんに聞いても、度数が高いとボディーが強くなるよと言われました。
バーテンダーをしている兄に聞いても、感覚的に度数が高いとボディーが強く感じると言われました。
お酒の大会なんかでもアルコール度数はボディーと評価されることがあるみたいです。

いよいよだな、と。いよいよ持論だけで声を大きくするのは間違っているな、と思ったわけです。笑
というわけで簡単にしか調べてませんが、自分なりに一つの答えを出したのでみなさんに紹介できればなと。
ただ、あくまで個人の考察であって(しかも机上のみ)、参考というか、面白話として受けいれていただけるととっても嬉しいです。

そもそもアルコールに味はあるのか

ここが最重要というか、結論になりそうなところですね。
アルコール度数そのものが味わいにどういった影響を与えるのか?というところに注目してみます。

オープンアクセスできる論文があまりなく、一つの記事になりましたが紹介してみたいと思います。
https://www.ienomistyle.com/column/20180110-254
こちらのページにエチルアルコールがラットの味覚にどのような刺激を与えたかについて書いてあります。

イエノミスタイル 家飲みを楽しむ人の情報サイト

ienomistyle(イエノミスタイル)はあなたの家飲み(ビール・クラフトビール・日本酒・ワイン・ハイボール・炭酸水・焼酎)ライフに特化し、新しくする国内初のWeb情報サイトです。家飲みに関するライフスタイルメディアとして、イベント情報やバイヤーこだわり商品、ちょい飲みやパーティーで活躍するレシピ(おつまみ)のご提案など食卓で役立つ様々な情報を発信していきます。

『味のなんでも小辞典』という本の内容のも含まれているそうですので、興味のある方は読んでみるとより深い知見になるかもしれません。是非、感想などを教えてください。笑

本題は、硲 哲崇氏による研究内容になります。
ラットの下にエチルアルコールを垂らすと、甘みと苦みを感じる神経が反応したということですね。つまり、エチルアルコールは甘みと苦みのある複雑な味わいをもとらす可能性があるということですね。これが人間にまるまる通じるかどうかはわからないのですが、可能性は大いにありそうです。〈もし生物学や神経学専攻の方で、このあたりに知識があるか方はご教授ください(´;ω;`)〉

僕は醸造酒において高アルコールだとボディーが強く感じるのは、単に砂糖が残っていることが多いからだと思っていました。実際にそれが占める効果が大きいと今でも思っています。ビールにおいて、高アルコールビールに濃色のものが多いと感じませんか?それはメイラード反応などを通じた糖分は色味が濃く、構造も複雑で発酵に利用されないためビール内に残り、色味を持たせるからだと思っています。もちろん色味の薄いハイアルコールビールもありますが。

つまり甘みがボディーの要因の1つだと考えていました。
しかし、アルコールが甘みに加えて苦みも味わいとして認識されるなら高アルコールのお酒はボディーがあると認識していいはずです。
以上でアルコールとボディーに関する考察は一旦終わります。以降は雑談というか、脳内でどんどん想像が膨らんだお話ですので、寝る前やお食事中の暇潰しにどうぞ。笑

【雑談】アルコール臭さの正体は?【👻】

これからは完全な妄想というか、頭の中の推論を爆発させるだけですので参考にはならないでしょうが。笑

僕はインペリアルスタウトやダブルIPAなんかからはアルコール臭さを感じることがとても多いです。感じるものはあまり美味しくない、というのが正直な感想です。それは単にアルコール度数が高いからだと思っていて、感じないものは他の要素で上手くマスキングしているんだろうなーと思っていました。ABV.7%のビールからはどれも同じアルコール臭さが根源的にあると考えていました。
度数が5%のビールと、10%のビールはぜんぜんアルコール臭さが違うし、とあるブルワリーのバレルエイジが14%のアルコール度数で、僕は正直あまり飲めなかったです。

ウイスキーはどうでしょうか。
ロックで飲むからでしょうか、アルコール度数のわりにアルコール臭さを前面に感じません。もちろん感じないわけではないし、慣れもあるとは思います。ですので、雑談程度に捉えてくださって構いません。アルコールによる刺激を除けば、臭さという面では正直高アルコールのビールとさほど変わらない気がする。

不思議だなーとぼやぼや調べ事をしているうちにちょこちょこ書籍なんかでも目にするある物質に目が付きます。
それが【 Fusel Alcohol 】です。
Fusel oils と称されることもあります。フューゼルアルコールとかフューゼル油とか。

さてこのアルコールは何かというと、プロパノールとかブタノールとかアミルとか炭素が3つ以上で構成されているアルコール類などを複数まとめてこう相称しているようです。

Distillation - The science of distillation

Distillation does not produce alcohol, it merely concentrates it. To produce a distilled spirit you need to start with an alcoholic liquid ('wash') to distil your spirit from. The majority of vodkas and all whiskies are distilled from a wash which is essentially beer made by fermenting cereal grains.

詳しい説明はこちらにのっていて、著作権の関係で引用できませんでした!

では、このアルコール君はどんなものなんでしょうか。

Fusel はドイツ語で" Bad Liquor "

ビールの歴史を作ってきたと過言でないドイツでは、fusel は【Bad Liquor / 悪質な酒】という意味でつかわれるそうです。
また、BYOの以下の記事ではフューゼルアルコールは”アルコール臭さ、消毒液臭さ”なんかと表現されているそうです。
https://byo.com/mr-wizard/higher-alcohols/

ドイツでこう表現されるのはフューゼルアルコールが二日酔いの原因となりやすいからだと指摘されてもいますし、単に臭いの問題ではないかもしれませんが。。。笑

まっ!フューゼルアルコールはアルコール臭い!として一旦話を進めます。笑
そんなフューゼルアルコールがどのようにしてビールやウイスキーに関係していそうでしょうか。

Fusel alcohol は発酵で生まれる

では、このアルコール臭い(はず)のフューゼルアルコールはいったいどうやってビールの中に誕生するのかというと、見出しに書いている通り【発酵】の過程で生まれます。ビール酵母は糖分吸収して、アルコールと二酸化炭素出して、代謝の結果として副生産物を排出します。ワインでも同様のことが起きています。

このフューゼルアルコールは高温で発酵させたときにより多く発生します。副生産物が多く発生するということですので、すなわち香気成分であるエステルももちろん多く発生します。単に高温発酵させればエステルが多く出ていい匂いのビールになるかと言われるとそうではなく、ほかにも色んなものがうまれるわけです。それをどうやってコントロールするのかが技術の見せ所と言えば見せ所ですし、たくさん勉強する必要のある分野でもあります。

ここで、ある仮説が2019年7月16日午前25時に誕生しました。

『アルコール度数の高い醸造酒はフューゼルアルコールも多い』のでは?

仮説の検証

発酵の代謝にともなってフューゼルアルコールが誕生するならば、同じ温度帯で発酵させた醸造酒はアルコール度数が高ければフューゼルアルコールも増えるはずではないか。
なんでかと言われても、アルコールを作ってる量が多いのだから、その副生産物だって多くないとバランスが取れないではないか!というひどい押し付けだ。これを科学雑誌natureに出すと、すごく怒られるはずだ。笑

でもこれを仮説としておくと、インペリアルスタイルのビールがやけにアルコール臭いのも納得しやすいのではないだろうか。『単純にアルコール度数があがって、エチルアルコールの臭みが増しただけですよ』と言われても納得いくが、よりアルコール臭いはずのフューゼルアルコールが増えたんですよ、の方がしっくりきませんか?笑

お次はウイスキーだ。
度数のわりにアルコール臭さを感じづらい理由はなんだろうか。

Fusel alcohol はアルコールよりも沸点が高い

もちろんここでいうアルコールはエチルアルコールである。ウイスキーは麦芽を発酵させ、醸造酒を一旦つくり、それを蒸留し、木樽に詰めて熟成させることで作られる。注目はこの段階にある”蒸留”である。

蒸留とは沸点の違いを利用して、さまざまな成分を分離することである。蒸留酒でいうと、水とエチルアルコールの沸点の違いを利用しているわけである。水の沸点はご存知の通り100℃である。それに対して、エチルアルコールの沸点は78℃であるから、醸造酒を火にかけて温めると先にエチルアルコールが揮発して、分離されるわけだ。それを集めて冷やすとエチルアルコールは水分に戻る。ただ、エチルアルコール以外にも様々な香気成分が一緒に分離されるわけだから単にエチルアルコールを木樽にぶちこむと、ウイスキーは味が違うのである。だからこそウイスキーは面白いんだろうと思う。

話が脱線しかけるので、次はFusel alcohol の話だ。
フューゼルアルコールは上記で説明したようにプロパノール以上の様々なアルコールが混じっている。炭素が1つのアルコールがメタノール、2つがエタノール、3つがプロパノール、4つがブタノール、、、、的に理解してくれるとプロパノール以上という言葉の意味が伝わりやすいでしょうか(様々な語弊があるのは承知ですが、あくまで分かりやすいかどうかというところに焦点を当てています)。
プロパノールの沸点は97℃だ。ブタノールは118℃、アミルに関しては130℃を超える。つまり、97℃を超えない温度で蒸留すれば、上記のフューゼルアルコールは蒸気となって回収されないはずだ。
火のかけかたや、温めた方、ポットの質などによって一部ほかの液体よりも高温になり一定量のフューゼルアルコールが揮発するかもしれないが、量は多くないはずだ。


また、あまり関係はないのだが補筆として、フューゼルアルコールは親水性がエチルアルコールに比べて高くない。どうしてかというと、wiki先生をお呼びする。

アルコールはヒドロキシ基を持つことがその特徴である。ヒドロキシ基のためにアルコールは他の分子と水素結合を形成したり、極性分子としての性質を示したりする。そのため、同じ程度の分子量のエーテルに比べ、沸点や融点が高い。

アルコールのヒドロキシ基が親水性を持つ一方で、アルコールのアルキル基は疎水性を持つ。エタノール、メタノール、プロパノールなどの分子量の小さいアルコールでは、ヒドロキシ基が支配的であるため水に対して無制限に溶ける。一方で、ブタノールでは水にほどほど溶解し、ペンタノールでは水から遊離するようになる。
出典:wikipedia

要は、アルコールというのは-OHというヒドロキシ基が炭素と水素がたくさんつながったやつにちょこんとくっついているわけだ。この-OHが親水性をもっていて、分子量が小さい(ここでは炭素の数が少ないこととする)アルコールでは-OHの占めるパワーの方が大きいわけだ。でも分子量が増えるとこの力が弱まり、親水性が小さくなり、水に溶けなくなっちゃうよという話だ。


なにはともあれ、すべてのフューゼルアルコールが蒸留で得られるわけでもないだろうと思うのだ。
ともなると、ウイスキーはビールにくらべてフューゼルアルコールの量が少ないと想定できはしないだろうか。

また、種類総合研究所によれば、ウイスキーをつくるための醸造酒をつくるときには大量の酵母を投入すると書いてある。
『お酒のはなし』https://www.nrib.go.jp/sake/pdf/SakeNo05.pdf

基本的に酵母の投入量が多ければ多いほど、発酵による副産物は少なくなる。これは、また別の章での説明が必要なくらいのことなので割愛したい。僕もあまり理解していないのが大きな理由だが。笑
とにかく、大量の酵母を投入したウイスキー用の醸造酒はフューゼルアルコールが少ないはず。
加えて、サントリーさんによれば、ウイスキー用の醸造酒のアルコール度数は7%ということなので、そんなに高くない。

以上のことから推測するし、ウイスキーに含まれるフューゼルアルコールの量はビールよりもかなり少ないはずだ。

アルコール臭さを過剰に演出しているのが、フューゼルアルコールだとするならば、度数の高いビールはウイスキー以上にアルコール臭さを感じてしまうのではないか。
逆にウイスキーがそれほどアルコール臭さを感じないのは、蒸留によりフューゼルアルコールが一定量除外されているからではないのだろうか。

これが今回の雑談の結論だ。
夜更かしをして、現在朝の5時。恐ろしい。が、非常に楽しかった!!!!
やっぱり調べ物をするっていうのは、こうじゃないと。ニートゆえの贅沢な時間の使い方でした。

ここまでご精読本当にありがとうございました。
何かお酒って面白いって思ってもらえることがあれば、非常に幸いです☺

では、また✌

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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