【さっと読む】Brewingの歴史 part.1【19世紀まで】

【さっと読む】Brewingの歴史 part.1【19世紀まで】

こんばんは!やざわです。
コロナウィルスで話題が持ちきりの今ですね。僕の周りにはまだ幸いなことに感染者の方はいませんが、被害の拡大が素早く収束することを祈ります。

今日はBrewingにピックアップした歴史を紀元前から19世紀までの範囲で簡単に紹介します。それ以降はpart.2に。
文献は最近受けた海外の醸造セミナーで得ました。最後にこの講義を受けているedXというサイトに関しても簡単に紹介しますので、気になる方は是非一緒に受けて議論しましょう。

目的と進行👀

目的:
この記事の目的は、醸造技術の発展がどのような流れで起きてきたのかの概要を紹介し、読者のみなさんと共にどんどんんと内容に肉付けをしていくことです!

進行:
ビールの醸造は現在から13,000年以上前に遡る可能性があります。それから少しずつ科学の恩恵を受けながら発展した醸造技術は、ラガービールの登場した15世紀、ドイツのビール純粋例が制定された16世紀、醸造技術に大いなる転機となった19世紀など多くの出来事と密接に絡んでいます。概要を紹介し、現代の技術と絡めて説明できるようなところは僕の考えもいれていけたらと思います。

では、まずは紀元前の世界から簡単に見ていくことにします👀

紀元前~

紀元前13,000年 earliest evidence

恐らくビールの原型であると確認されている最も古い歴史は、紀元前13,000年のイスラエルでないかと言われています。Raqefet cave というイスラエルの洞窟からその年代のものであるデンプン質と非常に小さい植物片が見つかりました。この植物片は大麦と小麦を含んでいました。穀物から糖分を取りだしていたのではないかと推定されます。

仮にこの当時にビール醸造に似た技術があったとしたら、発芽した原料ではなく、そのままの穀物をおかゆの様にして、ブレッタノマイセスなどに発酵してもらってたのかなーと。普通のビールは酵素を活用しないと活動してくれませんが、ブレッタノマイセスなどのビール酵母でないものなら強く発酵できた可能性はありえますし。

紀元前5,000年 Brewing in Iran

イランのGodin Tepeで、大麦を使ったビールの残りが壺から発見されました。まだこの時代でも発芽したものは意図的に使っていなかったのかもしれません。

Godin Tepeはイラン西部の考古学遺跡で、ケルマンシャー州のカンガヴァルの谷に位置しています。from wiki

紀元前1800年 Hymn to Ninkasi

「目には目を歯には歯を」で有名なハンムラビ法典ができた時代もこの辺ですね。その頃のビール醸造はといと、どうだったのでしょうか。

Ninkasiというビール醸造を司るシューメル地方の女神に対しての賛美歌が残っています。

You are the one who soaks the malt in a jar. 

The waves rise, the waves fall

Ninkasi, you are the one who soaks the malt in a jar

The waves rise, the waves fall.

賛美歌ですから、フィーリングで感じるのが良いと思います。直訳するのも野暮ですが、あえて翻訳するなら「ニンカシ様々」ですね。

9世紀~14世紀

時は移り、かなり近代に近づいてきました。日本で言うと平安時代から鎌倉時代付近までの出来事です。

9世紀 Brewing became a Job

811年 Capitulare de villis

Charlemagneという王様(?)が納める地域を統一するために様々なルールが記載されたものがCapitulare de villisです。その中の一つに醸造について記載されていたようです。ビール醸造をすることに特権を初めて与えられる出来事となり、これによりプロの醸造家というものが誕生することになりました。

816年 Recognition of brewing by Monks

カトリック教徒がビール醸造について認識し始めました。これにより教会でも併殺した醸造所ができ、そこで僧侶も働くことを求められました。ちなみにこの頃は、僧侶は毎日グラスいっぱいのワインか、グラス2杯のビールを飲むことになっていたそうです。よいしょ。

822年 First record of Hop Use

その当時はGruit/グルートと呼ばれる様々な植物を束ねたものがビールの醸造に使われていました。ブーケガルニのビール用版と思っていただけたらわかりやすいでしょうか。しかし、このときに初めて現代の主役であるホップの使用が確認されました。

場所はフランスのCorbieという地方にあるベネディクチン協会のAbbotという僧侶が「これからのAbbeyをどのようにしていくか」のルールにホップの使用を記載したようです。グルートはホップと同じような抗菌作用を持っておらず、10世紀から徐々にヨーロッパでホップの使用が認知されていきます。

14世紀 Hops as Mein Flavor Items

1300年頃から、ホップは「香り」成分としての側面が意識されるようになってきたようです。詳しいことはホップの授業があったときに書くことにします。

15世紀~18世紀

そろそろ日本ですら近代化が始まる頃です。日本ではお侍さんが切り捨て御免をしていた頃に、世界の醸造はどのような変革があったのでしょうか。

15世紀

1420年 Birth of Lager Beer

ドイツのBavariaで初めてラガービールの醸造が確認されました。もちろんそれまではエールビールの醸造が普通でした。ただ、暑い時期の醸造は雑菌汚染のリスクなども非常に高く、基本的には冷涼な季節での仕込みをしていました。

でも、夏に醸造がしたかったBavariaの人々は洞窟の中出なら醸造できるんじゃないかと気づきました。実際に醸造が出来ましたが、問題は夏以外の季節です。洞窟での醸造が気に入ったので、温度が低くなりすぎる季節の洞窟でも発酵が進むように徐々に「発酵温度の低い」酵母をどんどんセレクトするようになりました。純粋培養の技術があるはずもないので、発酵タンクの表面あるいは下から引き抜いたSlurry(澱)を再利用していたと思います。つまり、温度が低くても発酵したビールから取れた酵母からまた温度が低くても発酵したやつを、、、的な。妄想ですが。

bottom fermentation と呼ばれていた理由ですが、そのままです。底/bottomに酵母が溜まっていたからです。厳密に言えば発酵がゆっくりなため、周りの二酸化炭素も少ない上に凝集性も低いので浮力が少なく浮いて来れないだけですね。浮き輪の表面積も少ないし、入っている空気量も少ない状態ですかね。

1425年 Brewer in the Picture

初めてプロの醸造家が本の中で描写されました。Mendel Charity Bookという本です。絵の中に、六芒星が描かれているのが見れます。これはドイツのFranconia地方で作られたビールですよというマークみたいです(色んな説みたいですが)。

16世紀

1516年 Bavarian Pure Law

年代だけ聞いてもハッとする人も多そうな歴史の分岐点かもしれません。ドイツのBavariaでヴィルヘルム4世によって「Bavarian Pure Law/ビール純粋令」が制定されました。ドイツ語では、Reinheitsgebotと書きますね。発音が鬼畜ですが、正しく出来ますか?笑

ラインハイツガボット?みたいに聞こえますが、きちんと発音記号から読んでみてとしか言えません。

制定された当初の純粋令は、「ビールには大麦、ホップ、水のみとすべし」という内容でした。酵母がないのと、大麦しか記載されていませんね。この理由は以下の通りです。

酵母:この当時はそもそも存在を確認されていなかったので、原料という認識すらなかった。

大麦のみ:小麦やライ麦などの使用を制限したかった。パン屋で基本的に消費する原料なので価格高騰を巻き起こす可能性があったので、ビールは大麦に限定しなさいとなったようですね。ただ、一部の醸造所に小麦の使用を認めてしまいました。レアなビールは貴族の格好の的となり、独占されたみたいですね。面白い。

純粋令は度々改訂されまして、1993年では酵母の制限が明文化されました。例えば、ラガーイーストを使用する場合は大麦麦芽のみを使用しないといけないし、小麦やライ麦などを混ぜる場合はエールイーストじゃないといけません。あれ?ヴァイツェンボックは?と思ったけど、あれはエールイーストか。ドイツ以外では全然ラガーイーストで作って良いかしら。

1500年後半 Bottling Beer Appearance

1500年代後半には、遂にボトルビールが誕生したようです。

コルクで止めて、ワイヤーで巻いてました。現代のシャンパンやスパークリングワインとほとんど一緒ですね。ワインの影響もあって、このような詰め方になったのかなと思ったけど、ワインも1600年初期から~みたいな記述をよく見るのでコルク詰めの技術がこの辺りで発展したのかなーと思います。

17世紀

1680年 I see YEAST!!!

オランダの科学者 Antonie van Leeuwenhoeが顕微鏡で酵母の観測に成功しました。

しかし、この当時はまだ酵母は生き物だと認識されていませんでした。そのため、穀物由来の何かという結論になってしまいました。ここでもし、「酵母は生き物では?」という発見があれば、歴史は大きく変わっていたかもしれません。しかし、単純な発見というものは難しく、酵母が生き物だと発見されたのはこの150年後です。

18世紀

1760年 Thermometer is used in Brewery

James Baverstockによって初めて醸造所で温度計が導入されました。実は、1758年には既にMichael Combruneによって温度計を使えば醸造技術はもっと向上するぞ!と主張されていました。第一人者の椅子を取られてしまいました。

醸造技術が向上したのはもちろんですが、それまではどうやって温度を測っていたのでしょうか?ざっくりと3つの方法がありました。

1.手を突っ込む
2.液面に反射した顔が見えるかどうか
3.デコクション

手を突っ込むのは、説明不要ですかね。
液面に反射した顔が見えるかどうかというのは、顔が見えないほど液面表面が湯気で覆われていたらマッシュ温度が高すぎるぞ、みたいに使われれていました。合理的と言えば、合理的のような。

最後のデコクションは、一定量のマッシュを別の鍋で煮込んでから戻すことで温度を上昇させるテクニックです。どれくらい加熱したかではなくて、マッシュの体積で温度を管理するという考え方ですね。賢いのは、沸騰した液体が一定の温度で固定されていることに気づいていたことだな、と。温度計自体はあったから、沸騰したらそれ以上温度あがらないことは知ってたのかな。

1765年 Steam Engine

蒸気機関がJames Wattによって開発されました。仕事量を示す単位に「W/ワット」が使うようになったのは、彼の業績を称えたためです。

この産業革命が醸造に影響を与えた部分は、Milling/ミリングでした。モルトの粉砕をそれまで人力でやっていたか、動物にやってもらっていたのでしょうが、蒸気機関の登場で機械にミルを行ってもらうことが可能になりました。これにより、生産性は爆発アップで、ビールだけじゃなくてウィスキー作りも大きな影響を受けたはずです。その後から、ポンプでも蒸気機関が使われるようになりました。

1769年 Hydrometer is used in Brewery

フランス革命の20年前に、比重計が醸造所で使用されました。ちなみにこれを最初に使ったのも温度計同様にJames Baverstockでした。すごい。

アルキメデスの原理を利用した比重計は今でも広く使われています。比重計の登場で品質を一定に保ったビールを作れるようになります。同じモルト量、同じ温度、同じマッシュ時間だからといって、初期比重が全く一緒になるかと言われるとそうならないから不思議なんですブレンディ。同じ比重のウォートを作るには比重計はマストアイテムです。

1780年 India Pale Ale

後にIPAとなるビールが登場しました。耳が痛くなるほど聞いたとは思いますが、ロンドンのブルワーが植民地であった東インド会社にビールを輸出するために編み出したのが「多めにホップを投入する」ということでした。ホップの防腐剤的な効果(iso-a-acid由来)により、長旅にも耐えられるビールが完成しました。

だから名前にもインディアとついていますね。今ではインドとの関わりは全くないので、IPAは略称ではなく、正式名称としての地位を獲得しました。

19世紀以降~現代までは次回

今回の記事はここまでで、次の記事で19世紀以降から現代までの醸造技術の進歩を簡単に説明してみようと思います!

歴史を簡単に学ぶとなんとなく、ビールに対する愛情が少し深まりませんか?🎈
飲み会の席でも今回の内容が話のタネになって盛り上がったらとっても嬉しいです。

次はまた時間が空いちゃうかもしれませんが、なるべく早い内に紹介してみたいです!

edX: Science of Brewing

今回僕が受講しているのは、edXというオンライン講座です。
$99.99で包括的に醸造について勉強することができて、修了証をもらえます。修了証がいらないなら、一部の講義を無料で見ることも可能です。

edX

Gain new skills, advance your career, or learn something just for fun. EdX is a nonprofit offering 1900+ courses from the world's best institutions including Harvard, MIT, Microsoft, and more. Learn computer or data science, business, engineering, finance, history, language and more. Take advantage of flexible learning on your schedule.

内容も濃く、コミュニティー機能もありますから、不明な点はどんどん質問できます。僕はあいにく海外の大学で学ぶという選択肢を取らなかったので非常に良い機会でした。紹介してくれたパートナーにも感謝しています。

講義内容は全て英語ですので、もしかしたら受講に前向きになれない方も多いかもしれません。そんな方のために少しでも知識を共有できたらと思います。ただ、僕個人の考えとしては、なるべく間を通さない情報の方が価値が高いと思いますから(だからこそなるべくクリアな情報を届けるつもりで書いてるつもりではあります)、興味がある方は受講してみてはいかがでしょうか?

受講された方がいましたら、一緒に頑張りましょう!!!
議論の相手にはいつでもなりますので、相談して下さい☝笑

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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