ビールの酒税分かりづらい問題【解説】

ビールの酒税分かりづらい問題【解説】

こんにちは!谷澤です!

今回は前回の記事で触れたビール、発泡酒のおまけになります。それが酒税になります。クラフトビールは高いのは、人件費と原価が根本的に高いからなんですが、酒税も少しネックになってきます。

税率が一本化されるらしいぞ、、
発泡酒が高くなるらしいぞ、、
でもよくわからない、、

昔の僕もこんな感想を抱いていたのですが、同じような悩みの方に、読んでもらえたらと思います!では、いってみましょう!

ビール、発泡酒についてはこちらから☟

酒税とは

上の記事でも紹介しましたが、もう一度酒税についておさらいしましょう。

①アルコール度数が1%以上のものは、お酒として扱います。
②そんでもって、嗜好品なので税金をとります。
③原料や製法で、お酒はジャンルごとに大別します。
④アルコール度数が高いもの(健康が害する恐れがあるから)はその分だけ多めに税金とります。

と、ざっくり概要を話してきました。ここでひとまず現行の酒税に関して確かめてみましょう。

実はいますでにビールの酒税が変化している渦中に我々はいます。何がどう変わっているのかは後でじっくり説明します。ここでは一旦現在の税制を確認してみましょう。

 区  分 税 率(350ml当たり) アルコール分 1 度当たりの加算額
発泡性酒類 【円】  
  ビール 77.0 0  
  発泡酒①(麦芽比率50%以上) 77.0 0  
  発泡酒②(麦芽比率25%以上50%未満) 62.3 0
  発泡酒③(麦芽比率25%未満)  47.0 0
  その他の発泡性酒類 (新ジャンル、チューハイ等) 28.0 0
     
醸 造 酒 類  49.0 0
   清   酒  42.0 0
   果     実    酒 28.0 0

国税庁のデータをもとに作成。
ビール類と、それ以外の日本酒やワインなどをデータとして取りました。

ビールの酒税:77円/350ml

ビール:麦芽比率が50%以上で、副原材料が認められた範囲内(品目・量)で使用したもの

麦芽比率が50%に引き下げられたのは2018年のことで、それ以前は66%以上の麦芽を使用している必要がありました。また、副原材料の使用についても同時に大きく緩和されて、ビールと名乗ることのできる品種が増えました。しかし、逆に言うと、ビールと名乗らないといけない品目も増えたということです。

肝心な税率は、1KL当たり 22万円です。1KLは1000Lのことですので、1Lあたりは220円ということになります。

350mlあたりだと、77円になります。

みなさんが普段コンビニやスーパーで買う缶ビールの77円が酒税として価格に乗っているわけです。では、発泡酒はどうなのでしょうか。

発泡酒の酒税:47~77円/350ml

ビールの次は、発泡酒の酒税を確認していきます。

発泡酒は、使用する麦芽比率によって酒税がビール一本当たり(350ml)、約47円、62円、77円と3段階で変化します。ビールの酒税が77円なので、発泡酒の麦芽使用率が高いものはビールと同じ酒税になります。

麦芽使用率 50%以上:77円
麦芽使用率25~50%:62円
麦芽使用率25%未満:47円

麦芽の使用比率によって、酒税が変わるというのは何も不思議な感じがしません。しかし、実情として、大手の作る発泡酒というのはほとんどが一番低い税率の発泡酒です。麦芽の使用率が25%以下という発泡酒の括りです。

理由としては至極明快で、単純に大手の作る発泡酒というのは「安くて、ビールらしい」お酒というスタンスです。麦芽使用率を中途半端にして、値段も高くなるのではどれも中途半端な印象です。後でも説明しますが、第三のビールはもう大手の発泡酒と何ら遜色のない味わいです。つまり、麦芽の使用率をどんなに下げても、もう似たような味わいは作り出せる技術が確立されてきています(麦芽使用率0%の新ジャンルの場合)。

しかし、これはあくまで大手の世界です。クラフトビールの世界では、明確な味わいのコンセプトのもとに、麦芽の使用率が変化していきます。フルーツの量、はちみつなどの糖分量、などと相談して酒税が変化してきます。

新ジャンルの酒税:28円/350ml

新ジャンル(第三のビール)は、その他の醸造酒、あるいはリキュールの「その他の発泡酒」というカテゴリーになります。その他の醸造酒も、リキュールも発泡性を有していて、なおかつアルコール度数が10%未満ならば酒税が変化します。

新ジャンルの酒税:28円/350ml

コンビニに並ぶRTD(ready to drink)などは最大のアルコール度数が9%に収まってます。あれ以上だと、酒税が高くなり低価格で提供することができません。

新ジャンルは麦芽を使用しないか、発泡酒に別の酒を混ぜて作っています。「本麒麟」や「麦とホップ」などは後者の手法を取っていますが、なんら遜色がありません。こうなってくると、発泡酒の麦芽使用率がもっとも低いタイプの酒税よりも新ジャンルの方が酒税が15円/350ml も安いので、売らない手はありません。サントリーも発泡酒は一切作らなくなりました。

こう聞くと、大手が発泡酒を作り続ける理由があまり見えません。味わいとしてどうしても発泡酒じゃないといけないという明確なものや、ヒットした商品が残るだけなのかな?という気がします。少なくとも、新商品で従来のようなタイプが発泡酒で出ることはないと思い〼。

ただ、ただですよ、個人的にはグリーンラベル超推しなので、是非作り続けていってほしいと思っています!笑

酒税一本化の流れ

ビール類の酒税は、2026年に一本化される流れを国が決めました。それまでは段階的に酒税を変更していきます。

その第一弾として2018年に、ビールの酒税が下がり、新ジャンルの酒税が上がりました。酒税がどれくらい変化していくのかは、以下のサイトが非常に分かりやすいのでそちらを参考にしてみてください◎

「ビール系飲料」の酒税一本化で、10月からビールが安く、新ジャンルは高くなる? - 価格.comマガジン

「暖かくなってくると、ビールががぜん美味しく感じる」という人も多いのでは? そのビールを含め、「発泡酒」「新ジャンル」などの「ビール系飲料」にかかる酒税が、今年2020年10月から段階的に変化していくのをご存じでしょうか。簡単に言うと、ビールにかかる税金が安くなり、安さが大きな魅力だった発泡酒や新ジャンルにかかる税金が高くなります。これによってビール系飲料はどう変化していくのか? ...

製造的な話に少し触れると、やはり発泡酒とビールを区別するのは本質的ではないという国の理解でしょうか。クラフトビール文化の進みから、フルーツをたくさん使用したビールや、麦芽使用率の低いビールなど様々なものを認めていくということだは思います。

ただ、その分、今までの発泡酒免許なら少ない製造量でもクリアできたという「製造者側のメリット」が薄くなってきそうです。全てビールなら現状同様に60kL以上の生産量が必要になる可能性もあります。

広がりゆくビール文化は大きな酒税法によって制限を受けています。大手の圧力もあるでしょうから、なかなか簡単に変化することはないと思いますが、とにかく好きな酒を自由に美味しい作りやすい世の中になっていってほしいなと思い〼

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

COMMENTS

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  1. By Takeo Kikuti

    こんにちはTakeoKikutiです

    ビールの税率が意外と高いんですねえ
    そう考えると新ジャンルに期待が高まります

    なんだかビールが飲みたくなってきました

    • By Ble_

      こんにちは!TakeoKikutiさん!!

      新ジャンルに期待は高まりますね!ビールの味という固定概念にこだわらずにいろんなビールっぽい美味しいお酒が広がれば、マイクロブルワリーも色んな刺激を受けると思います!

      飲んじゃいましょう!飲みたいときの飲むビールが一番です。
      Ble_

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