コーラとシャンパンの泡ってほんとに違うの?

コーラとシャンパンの泡ってほんとに違うの?

こんにちは!やざわです。

今日は前々からビミョーに気になっていた、「炭酸飲料のきめ細かさ」についてです。なんとなく掴みかけた部分があったので共有してみたいなと思います!ただ、全然情報量として少なくて、みなさんの意見や今後出会った文献次第でどんどん更新していくことになります(..)

では行ってみましょう。

そもそもの経緯

そもそもどうしてこんなことを調べようかと思った話を簡単にします。

以前、”自然発酵で出来た泡はきめ細かくて、コーラなどの泡は荒い”みたいな話を聞いたことがあって、なんとなく理解できる部分はあるけど、「二酸化炭素は二酸化炭素なんだから、発酵だろうが強制的に炭酸付けてようが変わらんのちゃう?」と府に落ちませんでした。

話は変わって、今日は日曜日でしたので、最新ワイン学入門という本を読んでいたんですね。理由は特になく、読みたくなったからというだけなんですが。そこでシャンパンの話が出まして、伝統的製法(メトード・トラディショネル)という方法で作ったワイン(シャンパン)の泡は”きめ細かく持続性が高い泡”が得られると。その反面、”原酒に炭酸ガスを強制的に吹き込む方法”で炭酸をつけると、グラスに注いだ瞬間に大きな泡が勢いよく立ち、あっという間にはじけますよと。

全く同じようなことがワイン学入門と題した本に書いてあったので、これはいよいよバックボーンが何かあるだろと思って調べることにしました。そういう経緯です。はい。笑

最新ワイン学入門

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熱力学の教授による一見解

フランスのランスにある、University of Reims Champagne-Ardenne/ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学
こちらの大学で、熱力学の教授をされているGérard Liger-Belair氏による”泡の解説”がありました。

The Science of Bubbles in Wine | SevenFifty Daily

The owner of Air's Champagne Parlor in lower Manhattan, Ariel Arce, pours a sampling of Ulysse Collin's terroir-focused single-vineyard Champagnes: a Blanc de Noirs and a Blanc de Blancs. The Blanc de Noirs sparkles vigorously on the palate-"joyously," says Arce-with bright pinpricks of effervescence accentuating the tangy, assertive red fruit.

上記のサイトから見るに、液体を注いだ時に発生する炭酸ガスの荒さは以下のようにまとめられます。

【液体の炭酸ガス荒さ】
①瓶内の二酸化炭素圧力が高ければ高いほど、泡は大きくなる(荒くなる)
②液温と炭酸ガスの荒さはあんまり関係ない
③液温は液体の粘度と関係があり、粘度は二酸化炭素が抜ける速度と関係がある
発酵の有無や、自然発生に関してなどは全く書いてないのは教授がもちろん熱力学専攻だからです。それぞれ細かく見ていきます。

まず泡が発生する理由

そもそもどうして泡が発生するのかを考えてみます。
ビールやシャンパン、コーラなど発泡性の飲料は容器の中に二酸化炭素が一定溶け込んでいます。それも常圧で二酸化炭素が液体に溶け込む量よりも多くの二酸化炭素が溶け込んでいます。常圧常温で液体に溶け込む二酸化炭素の量は決まっているので、それ以上の二酸化炭素を液体に閉じ込めるには常圧よりも高い圧力を強制的にかける必要があります。

一番単純なのは、二酸化炭素を高圧で強制的に液体に溶け込ませ、容器を密閉すること。容器の爆発さえ無ければ、一撃で炭酸飲料の完成です。しかし、瓶内発酵をするビールの場合やシャンパンは別の方法で二酸化炭素が溶け込みます。どうするかというと、密閉された容器の中で発酵をさせます。発酵ではアルコールと二酸化炭素が発生します。容器が密閉されているので余計に発生した二酸化炭素によって瓶内の圧力はどんどんあがっていき、二酸化炭素が液体内に溶けます。

しかし、それらの二酸化炭素は栓を開けてグラスに注がれるときには、常圧に晒されます。本来溶け込める量よりも多くの二酸化炭素が含まれているので、二酸化炭素は外に逃げていきます。ただ、液体中の二酸化炭素が泡となるには微細なエアポケットが必要のようで、大体グラスについている埃などがエアポケットを作るようです(理系じゃないので、これ以上細かい説明はできません(..))。

上記のサイトから引用しておきます。

That’s because for a bubble to form, it needs a birthplace, a microscopic pocket of air to help it emerge from the liquid. Most commonly, such nucleation sites are invisible hollow cellulose fibers shed from a cleaning cloth onto the inner surface of the glass.

高圧なら泡は荒くなる

さて、泡の荒さに言及していきます。
二酸化炭素は高圧になればなるほど、抜けていく炭酸ガスも多いわけです。泡が発生した時には、周りの泡も巻き込んで大きな気泡となるのは容易に想像がつきます。沸騰している鍋に蓋のっけて内圧を上げると泡がぼこぼこ!ぼこぼこ!っておっきくなる感じでしょうか。

炭酸ガスが多ければ多いほど、泡はおっきくなる。

液温と泡の荒さは直接的にはあんまり関係ないかも

液温が高いと同じ圧力でも、液体に溶け込める二酸化炭素の量は減ります。ですから、当然ぬるい方が炭酸ガスが液体から逃げる量は増えます。つまり泡も当然荒くなるはずなんですが、どういう訳か教授は別にそこまで重要じゃないよと。

それは次に説明する粘度と液温の方が関係があるからということなんですが。

温度と粘度、粘度と泡の荒さ

液温による炭酸ガスの溶解率よりも重要らしいのが、この液温と粘度の関係

温度があがると液体の粘度は小さくなり、下がると粘度は大きくなります。ジンをおうちで凍らせて飲んだことがある方ならわかるかもしれませんが、トロッとしてますよね。そんな感じ。

液体の温度が上がると粘度が小さくなるので、二酸化炭素が逃げていくスピードが増すようです。これはなんとなく想像できますよね。泡が抜けていく速さと荒さの関係は言及されてませんが、本質的には早く抜けていく泡は”荒い”と捉えられそうですね。

シャンパンとコーラの比較

泡と液体の関係を理解したうえで、シャンパンとコーラの泡の大きさを探っていきます。
まずシャンパンとコーラの瓶内圧力がそもそもどれくらいなのかというと、明確に定義があるわけではなさそうなので探してみて多そうな数値を勝手に当てはめました。

シャンパンの最大容器内圧力:4~6気圧
コーラの最大容器内圧力:3~5気圧

筆者が勝手に予想して作成

どこから出したのかというと、シャンパンは海外の色んなサイトからで、コーラは日本のjis規格で炭酸水が"0.29MPa以上"という規格からとりました。大体1気圧が0.1MPaです。炭酸水自体は絶対に3気圧以上で保たれてるわけですから、コーラもそれと同等かなと。

容器の違い

シャンパンの方がコーラよりも泡がきめ細かいというなら、熱力学的にはシャンパンの方が炭酸ガス量が少ないということになります(液体の粘度は同じものとして)

たぶん詰めたときはシャンパンの方が内圧は高いんじゃないかな~と思うんですが、教授も言っている通り、長期熟成させていく途中でコルクで栓をしている容器からは徐々に二酸化炭素が漏れると。そのおかげで内圧が下がって、シャンパンの泡は細かくなるんだと言っているようです。

たしかにそうなると、ペットボトル容器って技術進歩もあるから、あんまり炭酸ガス抜けなくなっていってるはずですよね(コルクはしてないっていう予想)。ならば、コーラの方が内圧が高いわけで、結果として泡が大きくてバチバチするんじゃないんでしょうか。

グラスの問題:きめ細かい泡を作るのは、丁寧に飲む粋な心

なんだかんだで一番重要な問題はこのグラスにあるのでは?と思いました。

先にも話しましたが、泡の発生には微細なエアポケットが必要。それは大体グラスを拭いたときの布による繊維質が原因となるようです。よくグラスが汚れてると汚れてるところに泡がつくとか言いますよね。

で、教授は面白い実験もしていたようです。

グラス内に強酸をかけて、誇りや汚れを全部溶かして極力エアポケットをなくしたグラスにしたそうです。そこにシャンパンを注ぐと、なんと泡が全く立たなかったようです。まるでスティルワイン(泡のないワイン)のようだと。

僕はオーセンティックバーでバイトしていたこともあって、そのときにグラスは必ず二度拭きしていました。二度拭き専用の布は特殊な繊維で作られたものだったので、それによってグラス内に繊維質がつかなかったんだと思います。たぶんシャンパンを飲むときってお店はめちゃくちゃグラス綺麗にしているのではないでしょうか

そうなると、いくら内圧が高かろうが、泡立ちは少なく見えるんじゃないでしょうか。特に高級なシャンパンともなれば余計にグラスは綺麗でしょうから、それによってより泡立ちが少ないはずで。よくシャンパングラスには、底に傷がついていると言いますが、それはその傷のみにエアポケットを作って、そこからしか泡が立たないようにしているのでしょうね。

まさにこんな感じ

結論

なんやかんやと個人的に納得したので、まとめます。

【泡の細かさ】
・グラスが綺麗な状態(ほこりなどがほとんどない)なら、コーラでもシャンパンでも泡立ちは一緒
・同じグラスに注いだときは炭酸ガスが多い方が泡は大きく荒い
・冷やして注いだ時は液体の粘度が大きくなり、泡が長く残る

結果としては、発酵方式とか直接二酸化炭素を吹き込んだからといって泡が綺麗になるかどうかは関係ないじゃないかと結論付けました!どんなお酒も最高のコンディションのグラスと温度で飲めば、静かできれいな泡が現れるはずです。それがコーラでも。

ただ、炭酸水などは糖類やたんぱく質が全く溶けてなく、粘度がそもそも少ないので同じように綺麗に注ぐのは難しいのかなと思います。以上です!個人的にはすっきりした!細かい泡は、それだけ大事に飲まれてきたという証なんだという極めて素敵な結論。ぐっすり寝れそう!!!おやすみさい🎈

最後に

今回ヘッダーに使った画像は、東京のオーセンティックバーOPA門前中町店です。

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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