ビールの香り【Autolysed/自己融解臭】

こんにちは!
2010年って何してたかなと懐かしくなってきた谷澤です。

今日は、ビールの香りについて簡単にまとめていきます。
Autolysedというものですが、自己融解臭と勝手に訳します。酵母の自己融解による香りですが、どんな香りで、どういったことが原因で発生するのかまとめます。
また、自己融解によって起きる問題は香りだけではありません。特徴的なところでいうと、泡持ちですが、なぜそうなるのかも後半で触れてみます。

主な参考文献はYeast [by Chris White]とこちら↓↓です。

The Oxford Companion to Beer Definition of autolysis.

Autolysis. Brewing yeasts are remarkably robust organisms armed with strong cell walls and protective abilities to survive in acid conditions and alcoholic solutions. However, they are not immortal and will eventually succumb to a variety of stresses during fermentation, conditioning, and prolonged storage.

Autolysed/自己融解臭

Autolysis:自己融解

ということですので、酵母が自己融解したときに発生する香りのことです。単に酵母を覆っている細胞膜が弱って壊れてしまうことですが、これによって細胞膜内に存在するアミノ酸やヌクレオチドが溶液中に流れ出ます。
トータルで自己融解が進むとpHがあがります(Yeast P.164)。

アミノ酸には塩基性、酸性、中性と区別されますが、酵母内から溢れるものは塩基性のパワーが強いようです。ヌクレオチドは弱塩基性なのか弱酸性なのか分かりません。調べたんですが、理解できません。
また、再利用しようと思って採取した酵母溶液(slurry)のpHが採取してから1.0以上上昇していたら、自己融解が進みすぎている証拠です。求めていないならば、捨てましょう。

自己融解によって、漏れ出した物質には香りに影響を与えるものもあります。これらが作用して、与える香りをAutolysedと総称します。
アミノ酸や、ヌクレオチド、脂肪酸などが総合して影響を与えているようです。

Meatyな香り

Autolysedは、Meatyな匂いのようです。
肉を焼いたときの匂いって言われても肉によって違うだろ!って感じがありますが、フィーリングで納得することにします。

ビールでは合わないスタイルが多いようですが、ワインではわざとこの香りを出す方法があるようです。
それをSur Lie(シュリー)と呼ぶようです。
製法は、澱引きをするはずのタイミングで、あえて澱引きをしないで酵母とワインを長時間コンタクトさせることで自己融解の影響を強制的につけるようです。

そこでは、Umamiなる香り成分が認識されてるみたい。ヘーゼルナッツっぽいとも言われるようで、何がUmamiか若干認識がずれてるかもしれません。
ヌクレオチドにはグアニル酸やイノシン酸といった呈味性ヌクレオチドがありますから、これらが酵母から流出しているならUmamiなるものが液中に形成される説はめっちゃある。

重要なことは、どのスタイルでも絶対にNGじゃないってことです。
香りの構成を考えた上で、この香りは出したくない、この香りはちょっとなら許す、などと選択できるようになったほうが楽しいと思うし、ハッピーじゃない?🎈笑

自己融解の原因

自己融解によって発生する香りを認識した上で、どうやったらそれが発生するのか考察してみます。海外の文献などを参考にすると、自己融解の原因は以下のようです。

高すぎるpitch rate
酵母に合ってない高比重のwort
re-pitchのしすぎ
適切なラインよりも高い発酵温度
急速な温度変化(特にChilling)
コンタミによるストレス

それぞれについて深く書きたいですが、長くなるので気になった方はコメントを下さればまとめてみたいと思います。

基本的には、細胞膜にストレスをかける影響はすべて自己融解に繋がるはずです。
ですから、書いてはなかったですが、エアレーションがきちんとされてない状態でのピッチなんかも自己融解を早める可能性がありそうですね。

また、こうはいっても酵母によってストレス耐性も異なるので、この酵母では自己融解臭がでなかったけど、この酵母なら出るということはありえます。イーストのスペックシートだけでは判断しきれないはずですから、基本を抑えた上で出ちゃったら経験知として蓄えていきましょう。

基本的に自己融解はre-pitchとの相関性が高いと思われがちですが、開けたての酵母でも管理方法や発酵テクニックによっては発生することが窺えます。Kveik yeastの登場で高温発酵が日本では注目されていますが、chillingするときに急激にブレークするとストレスを多大にかける可能性とかもありそうです。

次は香り以外の影響です。

酵素の流出

酵母の細胞膜の中には酵素が含まれています。
エネルギーを取り出すために摂取したものを細かくする酵素は代謝活動で非常に重要です。そんな酵素が細胞膜が壊れることで流出します。

自己融解により流出する酵素で、大きな影響を与えるのがプロテアーゼです。
プロテアーゼなのでタンパク質/プロテインを分解します。さて、ビール溶液中のタンパク質が分解されるとどんな影響がありそうでしょうか?

まず一番先に思い浮かぶのは、泡持ちですか?それとも、ボディー
僕はボディーでした!
それ以外にもあげるとすれば、アミノ酸によるpHの変化とかでしょうか。難しいし、意識したことねえ。笑

ビールの泡持ちは、タンパク質がホップのiso-a-acidやポリフェノール、糖類なんかと強く結びつき、炭酸ガスを内包することで発生します。ですから、タンパク質が分解されると泡持ちは悪くなります。

また、タンパク質は物質として大きく、舌に触れるとtexture/ 食感を生むのかなと。
それが結局ボディーとなると思っています。Hazy or Juicy というのも、絹のようなtextureがジューシーに感じるからで、Hazyには高タンパクの原料が使われることがほとんどですね。オーツや小麦、ライなど。

プロテインレストの採用に賛否があるように、酵素によるタンパク質分解の影響も大きいです。
泡持ち悪くない?と思ったら、酵母の健康状態をチェックしてみてはどうでしょうか。

他の酵素

プロテアーゼ以外にも酵素が流出するようです。
具体的にどの酵素が出たとは書いてありませんでしたが、瓶内二次をしていたビールが自己融解の影響でオーバーカーボしてしまった例もあるようです。

しかし、酵素の働きはpHによって抑制されますし、ビールのpHはマッシュよりも低いですからそこまで活発に動くとも思えません。ただ、マッシュ時には働かなかった酵素がビール溶液中では働くことも容易に考えられます。
ホップクリープなどもそれが考慮できそうですね。

Hop Creep【Dry Hop と二次発酵の不思議な関係】

アミラーゼなのか、リミットデキストリナーゼとかなのか分かりませんが、濾過や遠心分離を持っていないマイクロブルワリーではケグの中に酵母が残留する可能性は大いにあります。ずーっと保管しておいた樽を繋ぐときはちょっと気をつけてみてください。

まとめ

こんな感じで色んな香り成分についても触れていこうかな!
ダイアセやDMSって色んなところで書いてるし、なんあらビア検でも勉強したりするのかな。知ってる人多そうだから、普通の記事じゃつまらないよね。

うーむ!
アイデア求む!笑

コメントどしどし応募しております!🎈

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]
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