Hop Creep【Dry Hop と二次発酵の不思議な関係】

Hop Creep【Dry Hop と二次発酵の不思議な関係】

こんにちは!谷澤です。
とてもとても光栄なことに、最近SNSでお知り合いになった方などに誘われることも少しずつ増えてきました。もっと早くからやるべきだったなーと後悔もしつつ、新しい出会いに感謝する毎日です。

また、2020/04 に記事を少し更新します。その前に駆け足メモ程度にgoogle documentに調べたことをまとめましたので、一番下のリンクから飛んでみて下さい!(近いうちにブログのページに盛り込む予定です)
ただ、今回のブログの内容に+αという感じなので、一旦読んでみてもらってからの方がいいかもしれません!

今日は、Hop Creep【ホップクリープ】について、みなさんと共有できたらなと思います。

About "Hop Creep"

では、まずそもそもホップクリープがどういったものを指し、何が問題として提起されているのかを紹介します。

Hopによる再発酵

ホップクリープとは、ホップに内在する酵素(アミラーゼ二種やアミログリコシダーゼ、限界デキストリナーゼ)が、ドライホップによりビール中に再度添加され、発酵を促進することの現象を指します(ここでは、そう定義します)。

その再発酵に際して何か問題が起きているから名称がつき、現象として認知されるのだと思います。また、齟齬防止のために、発酵終了時からのホップ添加をドライホップとし、ディップホップ製法などと呼ばれる発酵中のホップ添加とは分けることにします。
発酵中のホップ添加もドライホップとしてしまうと、色々とややこしなくなりそうなので😂

少し話が複雑かもしれないので、簡単に説明します。
ビールが発酵する条件は、酵母が分解して栄養にできる糖分があること、それに適した環境(温度、FANなどの栄養源、pHなど)が整っていることです。
一般的にエール酵母と呼ばれる種類では、自分たちで分解して栄養素にできるのは単糖と特定の二糖類なことが多いです。ドライホップをするときのビールの状態は、基本的にこれらのうち大部分が既に発酵に用いられています。ですので、発酵は終了し、熟成(貯酒?)と呼ばれる状態に入ります。
余談ですが、『まだ切れそう!』『もう切れないかもな~』などテイスティングで議論になりがちなところです。

栄養素とする糖分があまりない以上、酵母としてもやるせなく、発酵する気力もありません。しかし、ここにドライホップを施すと、ホップ由来の酵素が新たな糖分を作り出します。量で言うと、ごくごく微量です。SG(Specific Gravity, 比重)でいうと、1~2ポイントくらいだと言われています。糖度で言うところの0.5pointくらいですので、1L中の3~5gくらいの砂糖が発酵に用いられましたくらいに考えてもらえたら分かりやすいですね。それくらいの量です。

このドライホップによって、新たに生み出された糖分をもとに発酵が再スタートします。この現象をホップクリープと呼びます。ごく微量の糖分を生み出し、発酵が再スタートすることが実は大きく味わいに寄与するとは、ビールの沼は深く広いものだと再認識しますね。

ホップクリープに影響を与える要因

では、ホップクリープがドライホップによる再発酵だと認識した上で、この現象に影響を与える要因を抑えておくことにします。
以下のサイトを文献として使用させて頂きました。

(*2020/04 現在、参考にしていたページがなくなっていました!ごめんなさい_(._.)_)

上記のサイトで紹介されていた記事を参考にすると、ホップクリープに影響を与える要因は以下のようです。
条件は、同じ糖分構成のビールで、なおかつ同じ割合[g/L]でドライホップされたビールです。酵素自体がホップ由来ですので、たくさんドライホップすればそれだけホップクリープも進みます。それ以外の要因ということです。

  1. 液温
  2. コンタクトタイム(ドライホップ期間)

の2点が強調されています。それ以外にも実験では、ホップの種類や部位(coneか、seedか)、経年劣化しているかどうか、pHなどです。しかし、どれもあまり優位な実験結果はなかったようです。つまり、まとめるとこういうことになります。

ホップクリープと3つの要因
ドライホップされたビールは、投入されたホップが多ければ多いほど発酵は促進される。また、投入してからの時間の長さと、液温に相関して発酵は促進される。

これが、ホップクリープと他の要素との関連だと抑えることにします。ちなみに、上記のサイトにはホップの形態に関しては明記されておらず、ペレット90、45、ホールホップ、オイルなどとの差異は分かりませんでした。多分、オイルではホップクリープは起きないはずですが、推測で進めるのは良くないので、どこかで調べときます! 

ホップクリープの問題点は

ドライホップによるホップクリープの発生ですが、果たして何が問題なのでしょうか。既に言われている問題点と、僕自身が考える問題点を与える影響を軸に、列挙できたらと思います。

Pointホップクリープが与える影響
①最終的な比重が下がり、アルコール度数が高まる。
②ドライホップする前よりもドライな仕上がりになる(はず)。
③ボトリング後にガス圧が上昇しすぎる可能性がある。
④発酵が再スタートするので、それに伴う代謝物(ダイアセチル、VDKsなど)が出る。

この中でも、品質に大きな影響を与えるのが③と④です。
①と②に関しては、言ってしまえば「誤差」の範囲でも納める程度の問題だからです。ホップクリープによるアルコール度数の上昇も微々たるもので、0.1%ちょっと上がるくらいです。ただ、甘みに関しては、元々のスタイルや敏感な人などによっては、だいぶ印象が変わってしまうということはあるかもしれません。
ラクトースを例に出してみると、20g/Lを目安にスタウトに投入されることがあります。ミルクスタウトといった、大好きなスタイルです。スクロースを1とした甘みの単位:甘味度でみれば、ラクトースは0.16ですので、砂糖の6分の1程度の甘さです。つまり、3~4g/Lほどの砂糖(ショ糖、スクロース)がビールに足されたものと同じような訳です。ホップクリープでは、だいたいそれくらいの量の砂糖を追加して分解するというわけです。

では、それ以上に大きく影響する③と④はどんな効果があるのでしょうか。章を分けて考えます。

ボトリングとホップクリープの関係

まずは③ボトリング後にガス圧が上昇しすぎる可能性がある。から、進めていくことにします!

どうしてこれが問題なのかというと、単純に危険だからです。密閉された瓶の中で計算よりも多くの炭酸ガスが発生すれば、開栓したときに中身が溢れることはもちろん、すごい勢いで王冠が飛んでいくこともあります。もっと多くのガスが発生した際には、ビンが破裂することだって理論上はありえます。
では、実際に瓶内二次を例に取ってどれくらいホップクリープによって追加の炭酸ガスが発生するのかを考えてみることにします。

5g/LのスクロースからCO2が発生する量

ホップクリープで実際に5g/Lのスクロースが分解されて、再度発酵に用いられると仮定したらば、どれくらいのガスボリュームのビールになってしまうのでしょうか。実際に化学式を用いてチマチマと計算すればいいのでしょうけども、僕の能力では正確な値を出すことは高校生のときでも若干怪しいので、割愛します!笑

今回は、Palmerさんの”How to Brew(4th edition)”を参考にさせてもらいます!余談ですが、これは本当に良書ですので、日本でこれから醸造を本気でやりたいと考えている方は一読する価値があると思います。HPでもざっくりした内容は勉強できますので、暇なときにお勉強しても楽しいと思いますよ!

How to Brew

The definitive book on making quality beers at home is available here, online, in the menu to the left. Whether you want simple, sure-fire instructions for making your first beer, or you're looking to take that next step with mashing, this book has something for you.

本題に入ります。この本で紹介されているガスボリュームと添加する砂糖(スクロース)の量を書いていきます。

20℃の液体1Lには、0.82Lの二酸化炭素が溶け込んでいる。Target Volumeに従って、以下の量の砂糖をプライミングとして添加する。

  • Target Volume:1.5L の場合 2.4g
  • Target Volume:2.0L の場合 4.1g
  • Target Volume:2.5L の場合 5.9g
  • Target Volume:3.5L の場合 7.7g

本のデータを元に僕が書いたものです。温度が上がれば、液体内に閉じこまる二酸化炭素の量は減りますので、プライミングシュガーをするときはまず温度を測ってやることが大事です。ちなみに、ターゲットボリュームは各ビアスタイルごとに目安はありまして、そこに後は自分の個性が出てくる感じですね。
スタウトは2.0前後で、ウィートビアならば3.0前後くらいが紹介されています。

それはそれとして、ピンクのマーカーを引いた二つの行をみて下さい。大体5g/Lの砂糖の有無でガスボリュームが2.0ほど異なる仕上がりになります。正確に言えば、5g/Lのプライミングをスクロースで行えば、1.81程度のガスボリュームが発生します。
ホップクリープでは、3~5g/Lの砂糖が消費されて発酵されると書きましたが、大量にドライホップすればこれくらいのガスボリュームが追加で発生すると考えてもいいわけです。もちろん、温度や量、FGによっても変わりますが、考え方としてはこれくらいでいいはずです。
つまり、通常通りのガスボリュームで仕上げようとすると、もしかしたら多すぎるかもしれない事態が起こりえます。

実際に、Brew Your Own のhop creep の記事では、3.0の予定だったボリュームが4.5になってしまったという例も出てきます。概ね、近い数値です。

再発酵によるフレーバーの発生

では、次は④です。

例として、ダイアセチルとVDKsを書きました。VDKsとは、Vicinal Diketonesの略です。ダイアセチルと同じと思ってもらって大丈夫です。
これらの物質は基本的にどのビールにも現れる可能性があります。なぜなら、発酵の代謝物として発生するからです。厳密に言うと、これらの物質の前駆体が発生します。しかし、ビールでは酵母がダイアセチルなどの物質を吸収しますので、ビールに残らないようにすることもできます。
よく使用されるテクニックでダイアセチルレストといって発酵後期に温度を上げる方法がありますが、あれはまさにこれを意図したもので、温度をあげてやることでダイアセチルの前駆体であるα-AcetoLactate[AAL]を酸化しやすくし、全てダイアセチルに変化させ酵母に吸収させる方法です。ちょっとややこしいですか。笑

ダイアセチルに関しては、それはそれで面白いのでどこかでまとめるとします。いつか。

さて、ホップクリープは発酵をもう一度促すものなので、これらの物質が再度発生する可能性を大きくはらんでいます。問題なのは、普通の発酵と異なり、酵母がダイアセチルを吸収できるチャンスが普通よりも少ないということでしょう。ここからは、僕の推量もかなり混じりますので、批判的に眺めてほしいです。

ダイアセチルが発生する仕組み

やっぱりこの辺から、少し紹介することにします。
ダイアセチルがビールに発生して、吸収される流れを簡潔に書きます。

  1. 酵母がAAL[α-acetolactate]を代謝物として生み出す。
  2. AALが酸化して、ダイアセチルが発生する。
  3. ダイアセチルが酵母に吸収される。

大分簡潔ですが、こんなところです。2番をよく読むとわかりますが、ダイアセチルは酸素がある状況でしか発生しません。例えば、ドライホップによって再発酵が起きたとします。代謝物としてAALがビールに発生します。しかし、だいたち熟成期間のビールは一切酸素に触れないように管理されています。ですので、この前駆体は前駆体のまま残ります。では、仮にこれを遠心分離にかけて酵母を隔離して、瓶詰めやケグ詰めをしたらどうなるでしょうか。

相当の大手でなければ無酸素状態でこれらの作業を行うのはかなり困難です。樽だってお店に繋ぐときにはホース内を二酸化炭素で満たしてない限り、酸素が混入する可能性があります(そこまでないと思いますが)。
酵母は既に遠心分離で隔離されているので、酸素のコンタクトにより、残留したAALがダイアセチルに変身します。しかし、これらを吸収してくれる酵母は、、、ということです。

これがホップクリープによるダイアセチル発生と関連付けられて考えられます。

どうやって防ぐ?ホップクリープ

さて、これまでホップクリープが引き起こす問題について、長々と説明してきました。これまでホップクリープが引き起こす問題について、長々と説明してきました。

次はどうやってホップクリープを防ぐかということです。ここでは、コメントや意見など本当に大歓迎です。僕なりの考えを紹介していくことにします!

Pointホップクリープの防ぎ方案

  1. ドライホップする前にパスチャライゼーションして、酵母を完全に活動停止にする。
  2. ドライホップする前に遠心分離して酵母を隔離する。
  3. ドライホップするときの液温をかなり低く(4℃)とかにして、発酵を促さない。その代わり、コンタクト面積を増やすためにrausing(二酸化炭素でバブリングすること)を多めに施す。
  4. ホップを投入前に75℃くらいで5分ほどお湯に浸漬して、その液体ごと投入する。酸化に気をつけて。
  5. ドライホップをした後に、ダイアセチルレストを取り、もう一度酵母に働いてもらう。
  6. ホップオイルを使用する。効果はあるか分からない。

こんなところでしょうか!もっとあるはずですね!もっともっと議論をホットなものにしたいので、どしどしコメント待っています!もちろんDMでも構いません。最高の議論をしましょう!!!

まとめ

お疲れ様でした!!
またこんな長い記事を書いてしまいました。今回の内容を簡潔にまとめると、

PointHop Creep/ホップクリープ
➊ドライホップをすると、ホップによる酵素の影響でもう一度糖分が生まれる。
❷その糖分を利用して、もう一度発酵が始まる。
❸発酵はホップの量や、液温、ホップを浸漬している時間によっても進行具合が変わる。
❹炭酸ガスの余剰発生や、発酵由来の香り成分が発生する。
❺ホップクリープを防ぐ方法は絶賛議論待ってます!!

こんなところです!いいなーと思っていたHazy IPA があれれ?ドライだし、なんかちょっと臭いかも、、となってしまうその前に、なってしまったときに、この記事が何か新しい道となったら幸いです。
伊勢角さんがhomebrewを合法化しようと動いて久しくないですが、もし解禁されたそのときは精一杯美味しいビールが作って、議論して、そして乾杯しましょう!

ご精読、本当にどうもありがとうございました🎈

追記!

追記で、ホップクリープについて調べ直しました!

また更新しなおますが、取り急ぎ。

Hop Creep*追加資料

Hop Creep Dry Hopによって再発する発酵 なにこれ👀 ホップクリープ/ Hop creepという現象についての研究をまとめたものです! なにそれ❔ ホップクリープ(このページでは以降、HC)は、 ビールの主発酵が終了したあとにDry Hop(以降、DH)を施したあとに再度発酵が進行することである。 これは、DHしたホップ由来の酵素が再度、糖分を供給することによって発生すると考えられている。 本題📙 そもそものはじまり 元々、発酵タンクにホップを追加投入すると発酵が進むことは1900年から記録に残っています(文献忘れちゃって探しています。。。)。 そのときは、ホップ...

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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