こんにちは!谷澤です!やざわ。どうしてもというなら矢沢でもよしとします。
今回は去年の12月ごろに志賀高原の山中からお届けした記事を更新するとともに、成長した部分、いまならこう考える部分など追記出来たらと思います。
ただ、懐かしい文章は割とそのままにしようかとおもいます。笑
今回のテーマは【麦芽/モルト】についてのざっくり解説です。ビールを構成する基本of基本。
ではいきましょう!
とりあえずビールの定義
Beer:ビール(蘭: bier)は、アルコール飲料の一種。様々な作り方があるが、主に大麦を発芽させた麦芽(デンプンが酵素(アミラーゼ)で糖化している)を、ビール酵母でアルコール発酵させて作る製法が一般的である。
現在は炭酸の清涼感とホップの苦みを特徴とするラガー、特にピルスナーが主流となっているが、ラガーはビールの歴史の中では比較的新参であり、ラガー以外にもエールなどのさまざまな種類のビールが世界で飲まれている。また、玄人好みのビールとしてバレルエイジドビールというビアスタイルも存在し、「短くても半年以上、場合によっては1年以上熟成させたビールを、さらにバレル(木樽)に入れて熟成させることでようやく完成」する。日本語の漢字では麦酒(ばくしゅ)と表記される。
出展:wikipedia
このビールのことについて原料から考えて4弾に分けてざっくりと説明してきます!
ビールの定義を大先生がやってくれましたが、ピンとこない部分が多いかもしれないのでちょっと詳しく説明していきましょう!
まず大前提として、
ビールはアルコール飲料の一つで、醸造酒です。アルコール飲料というのは、【アルコール:エチルアルコール】が溶液内に一定量とけている飲み物のことです。メチルアルコールは目の視神経を壊してしまうやつですので、気をつけないといけないですね。エチルの方です。
じゃあ、醸造酒じゃないものはなんなのかといったら、混成酒と蒸留酒ですね。リキュールとウイスキーが代表格でしょうか。この二つも今後説明しようか思います。(←ウイスキーは少しだけしたか。リキュールはしてないです。)
よし、ここからビールの根幹となるような要素を説明します!ビールについて少しでも興味を持っていただき、今後のビールライフが少しでも楽しい物になれば本当に幸いです!
まず、ビールの原料は麦芽、ホップ、酵母、副原材料、水の5つに大別することができます。
今回はそのうちの一つ【麦芽】について説明していきます。
(去年までは”水”は原料に入れていませんでした。今では水質が与える影響を非常に強く感じていますので、原料に加えます。水、大事。)
Malt/麦芽とは
我らがビールの根幹を担っている存在の麦芽。
昨今は色んなビールが世に出ていますが、水以外の原料において麦芽使用料50%を超えているものが多いのではないでしょうか。ビールの骨格は麦芽からできますから、一般的にはそうなります。
まずは役割よりも麦芽とは何だろうか。
発芽
基本的にビールで使う麦芽は大麦が多いですが、もちろん小麦を使うこともありますし、ライ麦、燕麦(オーツ麦)など様々な麦があります。それらをまとめて、麦が発芽(文字通り芽を出した状態)したものを麦芽と呼びます。
では彼らがビールを醸造するにあたりどういった役割を担っているのかを僭越ながら簡単に説明します。
麦芽の役割
- 糖分の供給
- タンパク質&アミノ酸の供給
- 酵素の供給
- 濾過層の形成
- 穀物由来の風味
こんな感じでしょうか。更新前は糖分と酵素の供給しか書いてなくて、まだまだ知識が浅かったようです。
最も重要な麦芽の役割は糖分、アミノ酸、酵素の供給と思います。濾過槽はマッシュフィルターを入れてしまえば、極論いりません。アミノ酸は意外に重要です。ざっくり説明していきます。
糖分の供給
お酒というものは、”糖分”を”アルコール”と”二酸化炭素”に変換することで作られます。その糖分を麦芽は持っているんですね。穀物や果実がお酒に使われる事が多いのは糖分を十分に含んでいるからなんですね。そのため、誰が飲みたいねん!って突っ込まれるの覚悟ですが、
「お肉」単体のお酒はつくることができません。なぜならお肉が十分な糖分を持っていないからなんです。
僕が知らないだけでもちろん十分に糖分を含んでいるお肉の存在はありえますが。
そんなところにしておいて、大事なことは麦芽というのは十分な糖分をもっていて、煮ると非常に美味しい麦ジュースができあがるということです。
タンパク質&アミノ酸の供給
麦にはタンパク質が備わっています。成長するために必要なわけです。発芽の仮定でこれらが分解されていきます。
タンパク質というのはアミノ酸の合体ですから、分解されるとアミノ酸になります。このアミノ酸はどうビール作りに影響を与えるかというと、健全な発酵に必要です。
どうしてかというと、酵母も生き物ですから栄養が必要です。その一つにアミノ酸が入ります。それ以外にも亜鉛などありますが、それも麦芽が十分持っています。
ちなみにこれらのアミノ酸をFANと言います。Free Amino Nitrogen の略です。
これくらい必要ですよという目安がありますが、現代の麦芽は非常に溶けが良く、高性能なのでベースモルトから十分供給されます。発酵の最初24~36時間で消費されるようです。
(文献:https://beerandbrewing.com/dictionary/o1j9KOtQ4v/)
しかし、モルト使用比率を極端に落とす、発泡酒免許で果実酒を作るからモルトをほとんど使わないなどのレシピにするときは、別途栄養素を足してやる必要があります。
有力なのが、イーストです。ドライイーストなどは栄養が非常に豊富ですので、煮沸のときにパラパラ振りかけてあげると十分な栄養素がいきます。
酵素の供給
この酵素というのは、日本酒の【麹】もたくさん種類を持っています。米には酵素が存在しないため、米の糖分を分解する麹が別途必要だったのです。
酵母が必要な糖の供給を麦芽はおこなってくれますが、多糖類なんですね。それをそのまま酵母は吸収することが出来ません。しかし、麦芽は酵素という非常に優秀な存在もその内に秘めています。そのため、ビールでは麹などを別に追加する必要がありません。最近では味わいのために麹を投入するブルワーも増えてきました。
余談ですが、古来の日本酒が酒米を口で噛んでから投入していたのも、「唾液」に含まれる【アミラーゼ】を利用していたからです。
日本酒は以上ですが、ワインはどうなのかというと、
ブドウの糖は果糖/フルクトースですので、発酵しやすいです。そのため、酵素がそもそも必要ありません。ビール作りで発酵中にフルーツを追加すると発酵が非常に活発になるのはそのためです。
また、酵素を絵本チックに書いたことがあります。最後のおまけに加えておきましたので、怖いもの見たさの人は見てみてください。汗出ます。
濾過槽の形成
濾過槽の形成の重要性に気がついたのはオクタゴンの千葉さんの下で研修したからなのは間違いないです。綺麗な麦汁を取ることは机上の理論だけではなかなか立ち向かえません。
さて、濾過槽をどうやってモルトが形成するかというと、穀皮/ハスクと呼ばれる皮が麦芽と麦芽の間に隙間を作ることで濾過槽が作られます。
ですので、穀皮を持たない麦芽(小麦、ライ麦など)は濾過槽を形成する能力が非常に低いです。穀皮が混ざっていない分、挽き方によっては小麦粉のようになってしまいます。小麦粉は細かいですから、密集すると隙間がほとんどできません。ですので、麦汁が入りこめる余地が少ないです。
つまり、挽き方/Milling でも細かく挽きすぎると、糖分の回収量は多い(お湯に触れる糖類の表面積が大きいから)のですが、濾過に時間がかかりすぎます。濾過に時間がかかるのは、単純に労働生産を下げるだけじゃなく、味わいにも影響を与えます。例えば、ポリフェノールの過剰抽出やマッシュアウトしていなかったら酵素が余計に働いてします可能性もあります。
穀皮を混ぜてあげないと通常のマッシング(67℃付近のシングルステップインフュージョン)ではモルトが作る濾過槽の目がギュッと詰まりすぎていて、液体が下から回収できません。
これをスタックすると言います。
スタックする原因は実は穀皮だけじゃありません。粘度も関係します。
タンパク質の多い原料は粘度が高いことが多いです。グルテンの影響だと僕は思っています。ですので、プロテインレストを取らないと、いくら穀皮を混ぜていてもスタックするか可能性がありえます。
特にライムギをたくさん使ったIPAを作るときなどは、通常のシングルステップインフュージョンでは詰まる可能性大です。マッシュフィルターがあれば話は別です。
βグルカンは細胞壁を形成していて、糖分の周りを覆っています。これが発芽するにつれて、どんどん酵素によって分解されていきます。つまり、溶けの悪い麦芽はβグルカンが多く残っていて、糖分の収率が悪いです。
また、このβグルカンは粘度が非常に強いです。溶けの悪い麦芽をたくさん使用して、なおかつ、マッシング中にたくさんかき混ぜるとβグルカンがゲル化して、大変なことになります。
これはスタックとかのレベルではなく、1mlも下から出てこないようです。現代ではよっぽどのことがない限り起きないとは思いますが。
また、どうして濾過槽を形成したいかというと、キレイな麦汁を取るためです。綺麗な麦汁がどうして必要かというと、麦芽や穀皮を煮込んでしまうと余計な雑味が大量にでます。ですので、煮沸前に形成した濾過槽を何度も麦汁を通してあげてクリアな麦汁を採取します。
穀物由来の風味
無理くり追加しただけです。
味!ということですね。味。モルトは味がありますから、それも重要な要素です。
使う前には必ず試食すること。料理するときに味見するのと一緒です。
まとめ
ご精読ありがとうございました!
結局更新すると、たくさん内容が増えてしまいました。なるべく簡潔に書くつもりでしたが、結構増えてしまいました。
お次はホップについて更新したいと思います!
また来年はどんな知識を得ているのか楽しみです。ではでは🎈
おまけ
酵素の絵本
今から24歳当時の僕が書いた子供向け物語をお届けします。ノーカットで。
非常に怖いです。
酵素くんは酵母くんの成長をいつも想ってくれている大切な大切な存在なのです。
~酵母くんとおっきなキャンディー~
- (画像はイメージです)
ある夏の昼下がり、酵母くんは釜の中で遊んでいました。
しかし、どんな元気な酵母くんも遊び疲れてしまうことだってあるようです。
「やあ、麦味の素朴なキャンディーはいらないかい」
麦芽マンです。
「たーくさんちょうだい!」
はしゃぐ酵母くんをそばに、麦芽マンはポケットにその大きな手をつっこみます。
「ごらん、マルトースキャンディーだよ」
両手に握りしめた拳から甘くて懐かしい香りが漂います。
、、、
、、、、、
「食べれないよ」
「いつだって麦芽マンの出しくれるキャンディー食べれないよ」
なんと麦芽マンのマルトースキャンディーは夏の暑さで、すべてくっついてしまっていたのです。
これでは酵母くんもキャンディーを食べられません。
悲しくしょげる酵母くんの前に酵素マンズが現れました。
「酵母くん!いまこの酵素マンズが助けてあげるからね!」
さあ、登場人物がごちゃごちゃしてまいりました。
「α-アミラーゼーーちょっぷ!」
「β-アミラーゼーーきっく!」
「プロテアーゼーースライサー!」
「(略)」
1時間という長い時間をかけて、何人組かもわからない酵素マンズたちがマルトースキャンディーならぬ高分子キャンディーをさながらボス戦のごとく破壊していきます。
気づくとそこには、酵母くんの口にぴったりさいずのマルトースキャンディーがたくさんあるではないですか!
「いただきます!」
「ミネラルも抜群でおいしいよ!」
酵素マンズたちのおかげで麦芽マンの提供した多糖類キャンディーがマルトースキャンディーに変化しました。こうして遊び疲れた酵母くんもまた元気に活動できそうです。
「ありがとう酵素マンズ!」
ぶっ、とアルコールと炭酸ガスで出来た大きなおならをして酵母くんはお釜の中を元気にまた走って行きました。
めでたしめでたし。
どうでしょうか。僕は脇から冷や汗が止まりません。
当時はこの記事を書いたとき朝の7時だったようです。はい。
というわけで、酵素の働きを絵本チックに書いてみました。
内容は非常にシンプルで、酵素が多糖類を分解して酵母が吸収できるような糖に変換するというものでした。
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