こんにちは!antelopeのブルワー谷澤(やざわ)です。
今回はポリフェノールを整理するということで、記事を書いていきたいと思います。前回の記事では、ポリフェノールは総称ということでたくさんの種類の仲間がいることを書きました。今回はその仲間達について書いていきたいと思います。
前回同様に醸造にあまり深く踏み込まず、あくまで頭の中を整理するという目的です📙
ではいきましょう!
前回の記事はこちらから↓↓
ポリフェノールの仲間
おさらいということで、ポリフェノールの代表的な仲間を羅列します。正直、1~2個くらいしかメジャーじゃないですが、紹介していきます。
【代表的なポリフェノール by wikipedia】
フラボノイド
フェノール酸
エラグ酸
リグナン
クルクミン
クマリン
オレウロペイン
フラバノイドの理解が深まれば9割5分okなので、フラバノイドからいきましょう。あとは興味のあるやつだけ各自深掘りしてください。
フラバノイド/Flavonoid
フラバノイドは植物界に広く存在する物質で、基本骨格は上の図のようなものです。ただ、フラバノイドも総称に過ぎず、様々な物質が存在していますので、単にこの骨格を基本とした何かを指します。今回の記事でも「ポリフェノールの中にフラバノイドがあって、フラバノイドの中にカテキンやタンニンがあるんだね」ってところまでいけたらゴールだと思っています。フラバノイドは広い概念で、7,000種類以上も存在しているようですので、その中でも代表的なものを紹介します。
【代表的なフラバノイド】タンニン
お酒に興味がなくても聞いたことありますね。普通、化学物質は「構造」で分類されますが、タンニンは知名度が高すぎて「性質」で分類されるという特例措置を受けています。要は、「タンニンっぽい」特徴をもつ化合物は全部タンニンと呼ぼうということです。ここでいうタンニンっぽさは、『渋味を呈する』ということです。この区分けはとても大きな分類となりますので、ざっくりした呼び方がタンニンだと整理すれば良いかなと。例として、次に紹介するカテキンも2つくっついたら、タンニンと呼ばれるようになります。タンニンっぽさは、渋味に集約されるのですが、これはカテキンが単体では渋味を呈さないが重合すると渋味を帯びるようになるということですね。
渋味に関してはpart 1で解説していますので、気になる方は呼んでみて下さい。
【代表的なフラバノイド】カテキン
上で紹介したカテキン。日本人には馴染みが深いものですね。分子量自体は小さく、酸化重合しないと渋味を呈することはないようです。これは、カテキンの分子量が小さくて、口腔内のタンパク質と結合しても影響が少ないからという理由です。カテキンがくっつくといよいよ渋味も無視できないということで、タンニンと呼ばれるようになります。ちなみに、カテキンが4つくっつくと、最大クラスの渋味を帯びます。この例がカキタンニンです。
構造的には、フラバノールという分類になります。また、厳密に言うとカテキンとは特定の分子を示すのですが、実際にはお茶の渋味成分をまとめてカテキンと称することが多いようです。
【代表的なフラバノイド】アントシアニン
ブドウの実皮やムラサキイモ、ブルーベリー、などの赤紫色をした植物体に多く含まれている色素成分。肝機能の向上を助け、疲れ目の解消などにも効果的といわれる。
果実や花の色味(赤、青、紫)を示す水溶性色素のことをアントシアンと呼び、その中で特殊な構造をしているのがアントシアニンです。なので、カテキンのように『これです!』っていう分子を示すわけではないです。色んな果実に含まれるアントシアニンですが、構造をみるとカテキンよりも小さい分子ですので単体では渋味を呈するレベルではなさそうです。これらも酸化重合すると、渋味を帯びるようになるのかもしれませんので、アントシアニンが豊富なお酒を長期熟成すると一時的に渋味が強まる瞬間があるのでしょうか?うーん、分からない。
アントシアニンとブドウの面白い記事あったので、張っておきますね(こちら!)
【代表的なフラバノイド】プロアントシアニジン
アントシアニンと似てるやつ。これも実は特定の分子を示すものではなく、特定の構造をした分子のグループです。特定の構造の要素は2つです。
①フラバノールが炭素同士がC-C結合してること
②無機酸で加熱するとアントシアニジンが発生すること
フラボノールの代表格はカテキンです。ですので、カテキンが炭素結合で重合したものはプロアントシアニジンになる可能性があります。カテキンは一定量までの重合は渋味を呈することになりますので、プロアントシアニジンも渋いはずです。あれ?カテキンって重合するとタンニンになるんじゃなかったの?となりますが、タンニンのグループにプロアントシアニジンが含まれるいう理解でok
【代表的なフラバノイド】ルチン
構造的には、クェルセチンというフラバノイドと糖分が結合している配糖体と呼ばれるもの(アントシアニンも配糖体という構造)。ルチンはカテキン同様に特定の物質名を指しています。ニガソバと呼ばれる独特の苦味があるソバの実に多く含まれているらしいのです!ニガソバはルチンというフラバノイドが入ってるから苦いのか?と思うと、「それ苦いんじゃなくて渋いんじゃないの?」と思えます。実は、ニガソバにはルチンが豊富に含まれているのですが、同様に豊富なルチン分解酵素も持っているみたいです。ですので、ソバ粉への加水を行った瞬間にルチンが分解されてクェルセチンと糖分に分解されてしまいます。このクェルセチンというフラバノイドがニガソバの苦味なようです。
ルチンもクェルセチンもどちらも分子量は小さいので、渋味を呈するほどではなさそうです。カテキン同様に単に味蕾の苦味センサー的なものを刺激するのかな?📙
【代表的なフラバノイド】イソフラボン
女性の味方的な立ち位置のイソフラボン。色んな議論が活発なようですが、大豆に多く含まれているのは揺るぎない事実のようですね。イソフラボンもカテキン同様に特定の物質を指すのですが、広義ではイソフラボン類と呼ばれるグループ全体をイソフラボンとまとめているようです(これに関してはカテキンも同様)。
健康かどうかよりも、渋いかどうかしか気にならなくなってきますね。昔、欧米ではイソフラボンはエグい、渋いと忌み嫌われていたと、ある記事に書いてありました。ほんとかどうかは知りませんが、個人的にはあんまり豆乳が渋いなーとは感じないですね_(._.)_
これでフラバノイドの代表的な仲間の紹介はおわりです!
地味にホップの苦味成分であるフムロンもフラバノイドやで、みたいな記事が出てきたんですがよく分からなかったんでパスします。
フェノール酸/Phenolic acid
フェノール酸は、そのまんま。クロロゲン酸というコーヒー豆に含まれる成分が代表的なようで、紹介したいと思います。
【代表的なフェノール酸】クロロゲン酸
画像の左上にある-OOHのところが酸です。コーヒー酸とキナ酸との化合物。
ポリフェノールの一種で、タンニンと似たような働きをするそうです。ただ、現代ではタンニンと認めれていないようです。というのも、渋味を与える活性が低いみたいです。コーヒー豆の含有量はカフェインより多いみたいですが、熱に不安定なのでお湯で抽出されるとコーヒー酸とキナ酸に分解されてしまうみたい。深入りのコーヒー豆が苦いのは、色んな要素があるみたいですが、その中でも重要なのが酸とアミノ酸の反応(メイラード反応)で発生するメラノイジン。その貴重な酸がクロロゲン酸だったりするので、焙煎が深くなるほどクロロゲン酸の量は減るらしい。
ちなみにクロロゲン酸は、マルトースをグルコースに分解する酵素(マルターゼ)の働きを阻害する効果が認められたそうです。ワールプールでコーヒー豆を大量に使用したら、ビール発酵しづらいかもしれない!!浅煎りのコーヒー豆を使うときはちょっと考えないといけないかも。
エラグ酸/Ellagic acid
多くの植物に含まれるポリフェノールの一種。特にイチゴ、ラズベリー、クランベリー、ブドウに含まれる。植物の中では配糖体のエラギタンニンという形で存在しているみたいで、摂取すると容易に加水分化してエラギ酸が遊離する。これまでのポリフェノール類と同様で重合すれば渋味を呈するようになりそうですね。オーク樽などの豊富に含まれていますから、深掘りすればバレルエイジのお酒と何か相関を持ってきそうですね!
リグナン/Lignan とクルクミン/Curcumin
まとめて紹介します(よく分からなかっただけ)
リグナンは、イソフラボンと似たような効能(エストロゲン様)があるようで、ゴマに多く含まれているそうです!
クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種。ウコンってかなり独特の風味と苦味あるいは渋味がありますが、クルクミンが担ってそうです。
上記2つは今の僕では深掘りしても何も出てこなかったので今後に期待で_(._.)_笑
クマリン/Coumarin
桜餅の桜の匂いはクマリンが大きく関与しているいわれていて、シナモンにも含まれる芳香成分。植物の中では糖分と結合していて安定しているが、植物を破砕したりすると外部の酵素と反応してクマリンが放出されて香りが出るらしい。
実はオークバレルにも豊富に含まれていて、樽熟成させた酒に大きな影響を与えます。よく言われるのは、赤ワインや蒸留酒。アルコール度数が高いこと、熟成期間が長いこと、樽が新しければ新しいほどクマリンがよく抽出されているようです。クマリンは刺激的な香りがするのと同時に苦味も与えてくれます。
樽は時間が立つと様々な外部の影響を受けて、クマリンやリグニンなどのポリフェノールが分解されていきます。その結果、古い樽を使用したお酒は新樽よりも角が取れた印象になる可能性が高いです。バレルエイジを挑戦されるときには、新樽や中古、アメリカかフランスかなど沢山選択肢があると思いますが、少しずつインプットした知識を活かせると楽しいのかな?と思います!
オレウロペイン/Oleuropein
オレウロペインはオリーブやイボタノキの葉から抽出されるポリフェノールの一種であり~。これらの化合物はすべてエレノール酸とチロソールのエステルであり、エレノール酸はさらにヒドロキシル化およびグリコシル化されている。オレウロペインとその代謝物であるヒドロキシチロソールは、生体内(in vivo)でも試験管内(in vitro)でも強力な抗酸化作用を示しており、エクストラ・ヴァージン・オリーブ・オイルの苦い辛味の元となっている。
オウレロペインは、オリーブの実に多く含まれるポリフェノールの一種。
wiki引用の2行目から訳が分かりませんが、オウレロペインとその代謝物(??)であるヒドロキシチロールなるものがオリーブオイルの苦い辛み成分になってるとのことです。
まとめ
色んなポリフェノールの仲間を見てきましたが、タンニンとポリフェノールの関係が理解できればとりあえずokのような記事になってしまいました。渋味と一口にいっても様々な構造を持つ化合物が存在していて、個人的には面白かったです🙆
特にミードは渋味を足す、という作業も豊富にあるので貴重なインプットでした。
これらの成分を醸造に活かしてこそなのは分かっているんですが、果てしない化学の旅に出ないといけなそうです。ただ、渋味を感じる食材を使うときに、一括りにポリフェノールとするよりも、果たしてその渋味は何が原因でどんな影響を与える可能性があるのかにアンテナを張れただけでも収穫です。他にもポリフェノールはバレルエイジと関係が深いので、いつか点と点がくっついて線になって、面になっていけばいいと願ってやみません。
質問やご意見などありましたら、どんな手段でもいいので連絡していただけると嬉しいです!!
ではまた🙌
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