ポリフェノールを整理する part1

ポリフェノールを整理する part1

こんにちは!antelopeのブルワー谷澤(やざわ)です。
今回はお酒作りにおいて、地味に重要なポリフェノールについて整理していきたいと思います!ビールやワインなら、渋味や品質の安定性に。ミードも同様ですが、単調な味わいにバランスを与える要素としても重要です。

今回はポリフェノールの導入です!渋味と渋柿の雑談をしたら、長くなったので2部構成にすることにしました。ポリフェノールって何なのか?渋味とどんな関係があるのか?がはっきりしていない人は、呼んでみて下さい。詰まっていた部分がすこしスッキリするかもしれません📙

ではいきましょう!

ポリフェノールは、あくまで「総称」

ポリフェノール(polyphenol)は、たくさんのフェノールという意味で、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称。ほとんどの植物に含有され、その数は5,000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持つ。

wikipediaより

まずはポリフェノールとは何か、を整理します。
ポリ+フェノールということで、1つの分子内にフェノールが複数あるものという認識で問題ないです。大切なのは、ポリフェノールというのは単なる「総称」ということです。その中に、カテキンやタンニン、イソフラボンなど様々なものが分岐しています。糖分の中に、グルコースやフルクトース、ラクトースがいる感じ。

ポリフェノールの仲間たち

ポリフェノールは総称と言うことで、一体どんな仲間がいるのか整理していきます。wikipediaに掲載されている代表的なポリフェノールを下記にまとめます。

  1. フラバノイド/Flavonoid
  2. フェノール酸/Phenolic acid
  3. エラグ酸/Ellagic acid
  4. リグナン/Lignan
  5. クルクミン/Curcumin
  6. クマリン/Coumarin
  7. オレウロペイン/Oleuropein

正直、醸造でよく出てくるのはフラバノイド、エラグ酸くらいで、バレル管理するならクマリンも勉強していて損はないかなという感じです。全部は覚える必要はないと思いますが、いつか役に立つかもしれないので、頑張ってまとめていきましょう。ただ、これはあまりにも長いのでpart 2でやることにします。

では、これから上記のポリフェノールを紹介していくのですが、「渋味」についての話が必ず出てきます。ですので、まずは渋味に関して理解を揃えておきましょう。

渋味とは何か

収斂味、とも称される渋味。日本茶に代表されるように、渋味は苦味と近いような感じでしょうか。渋柿を食べたことがある人は、舌がきゅっとするような感覚を知っているでしょうか。これは、実際に舌がきゅっとしているんです。

渋味の原因になるものとして、タンニンが挙げられます。タンニンなどの一部のポリフェノールは、タンパク質と結合して沈殿する性質があります。ビールではこの性質を利用して、モルトやホップ由来のポリフェノールとモルト由来のタンパク質を煮沸中に結合させて沈殿させています(ヘイジーIPAの濁りはこの結合したやつが沈殿してないやつ)。
話が逸れましたが、タンニンなどは口腔内の粘膜にあるタンパク質や唾液の酵素と結合してしまいます。タンパク質は結合して変性したり、唾液は流動性がなくなったりします。その結果、タンニンを多く口に含むと、口の中が乾き、すぼまるような感覚を味わいます。これが渋味の正体です。つまり、渋味というのは口腔内のタンパク質と結合する一部のポリフェノールに由来しています。

part1はこの辺までにして、あとは渋味に関する雑談を2つします。1つ目は、渋柿について。もう1つは、味覚受容体について。Hazy IPAの濁りに関してはこちらから☟☟

【濁り】ヘイジーIPAはどうして濁るのか【解説&考察】

渋柿の渋味と、渋抜きについて

渋柿を食べたことがある人は、食べた瞬間の「,,,,,!!!!!!」という感覚を覚えていますよね。。
生命に危機を感じるような感覚は、先も説明したようにタンニンに由来するものでした。特に渋柿に含まれているカキタンニンというのが、強力な収斂味を与えてくれています。part 2で説明するのですが、タンニンというのもポリフェノール同様「総称」であって、その仲間にカキタンニンがいます。カキタンニンは、4種類のカテキン(フラバノイドの1つ)が結合したもので、タンニンの中でも最もタンパク質と結合しやすいものの1つです。また、よく耳にするカテキンは、分子量が小さく、単体ではタンパク質と結合して渋味を与えるだけの影響がありません。カテキンが2つ以上にくっつくことで、渋味を呈するようになってきます(こうなると、タンニンと呼ばれる物質になります)。

カテキンやタンニンが結合して、巨大化するとより渋くなるというのは一部合ってますが、大きくなりすぎると今度は逆に渋味がなくなります。理由は、可溶性だったタンニンが大きくなる(酸化重合する)ことで、不溶性になるからみたい。あまりピンときた説明が見つからなかったのですが、僕の考えでは、口腔内の水分を含んだ環境で反応しなくなるからなのかなーと。

渋柿を干し柿にしたりすると、渋味が抜けるのはカキタンニンが酸化重合して不溶性タンニンになるからです。それ以外にも、アセトアルデヒドがタンニン同士を結合させるのを利用する方法もあるようです。アセトアルデヒドは、エタノールが酸化することで発生しますから、エタノールを渋柿のヘタから吸わせるなんて方法が実際にあるようです!

一つ疑問なのが、タンニンってアセトアルデヒドを介して重合するの?って思いませんか。アセトアルデヒドはグルコースがエタノールに変化する過程の中間物で、イーストが健全でないとそのままアセトアルデヒドとしてお酒に残ってしまいます。でも、それがタンニンと結びついて、いずれは沈殿するなんて聞いたことがないし、調べても全然ヒットしない。。
これは、何か知っている博士がいたら、是非連絡してください!📙笑

味覚受容体

2つ目の雑談は、味覚の話です。まだ勉強の途中ですが、面白いなと思ったものを紹介します。
現在証明されている味覚は、5つです。甘味、苦味、塩味、酸味、うま味。ここに油味、カルシウム味が入ってどうのこうの的な議論もホットなようですね。実は、昔はここに渋味が入るのでは?という議論もあったようです。

渋味は、口腔内のタンパク質がタンニンなどと結合することによって発生することを説明しました。では、残りの5つはどのように感じられるのかを紹介します。味は、舌上にある味蕾で感じるのですが、そこには味覚受容体というものが密集しているようです。それぞれがサインを受け取って、脳に味わいを認識させているように思えます。そんな味覚受容体は大きく2つに分けられるようです。「Gタンパク質共役型受容体」と「イオンチャネル型受容体」です。

Gタンパク質共役型受容体
ある物質と受容体にあるGタンパク質なるものが結びついて、結果的に脳みそに味を伝える受容体。

うま味/甘味受容体(T1Rファミリー)
苦味受容体(T2Rファミリー)

上記の二つがGタンパク質共役型受容体である。あんまり科学的なところは分からないが、これを刺激する「物質」がうま味、甘味、あるいは苦味を伝えることになるようです。例えば、グルコース(ブドウ糖)は甘味受容体のGタンパク質と結びつくってことなんでしょうね。

イオンチャネル型受容体
物質ではなく、特定の「イオン」に反応して味を伝える受容体。

酸味受容体(H+)
塩味受容体(Na+)

上記の二つがイオンチャネル型受容体である。先のが、物質だったのに対してこちらはイオンである。水素イオンがたくさんあれば酸っぱく感じるし、ナトリウムイオンが多ければ塩味を感じるということですね。食塩は塩化ナトリウムですし、想像が付きやすいですね!

part 2へ

お疲れ様でした!
今回は、ポリフェノールの概要と、渋味に関する話(+雑談)をしました。簡単にまとめてpart 2に行きやすいようにしたいと思います!

【まとめ】
①ポリフェノールはフェノール(厳密には、フェノール性ヒドロキシ基)がたくさん結合した化合物の総称。ポリフェノールの仲間には、フラバノイド、フェノール酸、などが存在する。
②フラバイノドが代表的な存在。フラバノイドには、カテキンなどが存在する。フラバノイド同士が結合し、大きくなるとタンパク質と結合するような性質を帯びる。
③渋味は、可溶性タンニンが口腔内のタンパク質と結合することによって発生する。
④可溶性タンニンは、分子量が大きいとより渋味が強まるが、大きくなりすぎると不溶性になり渋味を失う。

こんなところでしょうか!
フラバノイドなど聞き慣れない言葉も飛び交ったので、part2でポリフェノールの仲間達について紹介できればと思います!

質問や疑問点などあれば、お気軽に質問して下さい!
今回のポリフェノールの知識をなんとか醸造に活かして、今後も美味しいお酒を造れる努力をしていきたいと思います🙆
ではでは!

ANTELOPEブルワー谷澤 優気
お酒が好きで醸造の世界に入る。日本各地での研修期間を経て、2020年3月滋賀県野洲市で国内初のクラフトミードハウス・ANTELOPE株式会社を共同創立。
「ちょっと深く知るとお酒はもっと楽しい」をテーマに醸造学を発信中。

志賀→浜松→掛川→滋賀県野洲市[now!!]

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