あけましておめでとうございます!
2021年は自分にとってかけがないのない1年となりました。クラフトミードを作ること、インプットだけでは美味しいお酒は作れないと学べたこと、一番大きかったのは何より自分のお酒を楽しい!美味しい!と言ってくださる皆様と出会えたことでした。今年はより一層面白くて、みんなと共有したくなっちゃうよなお酒を作っていきたいと思いますのでどうぞよろしくおねがいします👐
さて、本日は「Cold IPA」をちょっと深く考えてみます!
定義がないスタイルを考えるわけですから、もやっとする部分も多いかと思いますが少しでも納得するような説明ができれば幸いです。いってみましょう!
スタイル名の意義は?
そもそもスタイル名の意義とは何なのでしょうか。個人的には、「求めている味わいを求めやすくなること」に他ならないのかなと思っています。クラフトビールの文化は国内で少しずつ醸成しているように思えますが、いまだにこのビールはどんな味なのか?という疑問が大きい人がいると思います。そういうときにスタイル名がわかっていれば、なんとなくの方向性がわかりそうです。IPAが好きなのかとか、ヴァイツェンが好きとか、サワーが好きとか。
しかし、ビールのスタイル名には少しややこしいものも多いです。例えば、Cream Aleというスタイルには一切クリームが入ってませんし(乳糖が入っていると思っている人も多いのでは?)、India Pale Aleは別にもうIndiaは一切関係ないし、見た目が"Pale"じゃないやつだってあるし。ここであげたIPAは、人気が出すぎて色んな派生スタイルが多く出てきまして"IPA下さい"の一言ではお店の人が困ってしまう状況になってきました。
「ウェストコーストIPAみたいな、すっきりしたIPA下さい!」
こんなビールを求めている人に朗報です。Cold IPAできました。
Cold IPA の始まり【Relapse】
Cold IPAの特徴に行く前に、少しだけ歴史を振り返ってみようとかと思います。
始まりは、Wayfinderという2016年にオレゴン州ポートランドに誕生したラガー推しブルワリーでした。Wayfinderは2018年に「Relapse」というビールをリリースしました。NEIPAをすでに醸造していたWayfinderですが、それとは正反対でWest Coast IPAのファン層を置いていってしまうような飛び抜けたものを作りたいという想いから誕生したビールでした。
レシピはアメリカンピルスナーを作るようなモルトバランスで、ピルスナーモルトとお米やあるいはコーンをデコクションで施すシリアルマッシュで仕込みます。シリアルマッシュとはお米や精麦していない小麦などを糖化させるためのプロセスで、通常のマッシングを行う前に施す特別なマッシングです(興味がある方はこちらをどうぞ!)。お米やコーンの割合は20~40%で、attenuationは82~88%を目指すとのこと。この時点ですでに特徴的なんですが、イーストも特徴的でラガーイーストのW34/70を使っています。もともとはエール醸造で採用率の高いChico系(有名なのはUS-05とか)を使おうとしていたらしいですが元々W34/70がハウスイーストであったことや、Chico系はありきたりで面白くないかもという理由でラガーイーストを採用したという話もあります。ChicoもW34/70もエステル量が少なくクリーンで淡白な印象のあるイーストのイメージです。W34/70もラガーイーストと言えばこれでしょ、というイメージでしたので意外ですが。さて、このイーストは発酵推奨温度が12-18℃でラガーイーストの中では比較的高温を好む方です。Relapseではこちらを18℃で発酵させ、主発酵がほとんど完了したら大量のDHを施します。このときには発酵中のヘレスやピルスナーの麦汁を加えて再発酵を促します(kräusenという技術)。再発酵の狙いはホップの香りをより複雑にするバイオトランスフォーメーションを施すことのよう。また、この再発酵のときにSpunding Valveという圧力の操作できる安全弁のようなものを使用して、再発酵で発生したCO2でナチュラルカーボネーションを行います。矯正カーボよりも柔らかい印象になるとのことですが、何かあるのでしょうね。
デコクションに関しての記事はこちら↓↓
Homebrew Recipeでは
- OG 1.061
- FG 1.007
- IBU 70~
- DH 8g/L
こんな感じ。普通よりもちょい切れてるかなって程度の性格で、Brutではない感じ。Wayfinderによれば、Relapseはラガーイーストを使っているのでIPL(India Pale Lager)になりそうだが、味わい的にはモルティーでキャラメル感もあるからIPAだそう。厳密に言えばラガービールだけど、味わい的にはIPAなんだからスタイル名もIPAでいきましょう!的な感覚。IPAだけどラガーのニュアンスも込めて、「Cold IPA」と呼ぶことになったみたい。ちなみにいま現在ではRelapseという名称もすべて「Cold IPA」という商品名に変わっています。
さて、そんなRelapseですがアメリカのブルワリーで注目されて色んなところがCold IPAを作り始めます。メキシカンラガーのイーストを使うところもあるみたいで、いろんな趣がありそうです。
Cold IPAって何か
前章でほとんどCold IPAの概要を説明したような気もしますが、自分なりにもう一度整理してみたいと思います。
【Cold IPAの要素】
エステル量少ない
硫黄臭少ない
ホッピーで苦い
Attenuation高め(82~88%)
クリーンでクリスピーなフィニッシュ
モルト感はアメリカンラガーよりは強い主張
イーストはエールでもラガーでも良い
こんなところでしょうか。よくCold IPAはラガーイーストじゃないといけない、的な話があるかと思いますが遡ってみればそんなことないんです。現にWayfinderも「イーストの代用としてケルシュやチコ、カルフォニアコモンでも可能」と言っています。大切なのは、「酵母の特徴がクリーンなこと」です。Hazyが流行り始めたときと同じかもしれませんが、Alchemistが濁っているIPAに対して「求めている味の追求をした結果として濁った」という話があって、濁っていることが重要じゃないというポイントを見逃しがちです。求めている味わいに対してのアプローチならお米じゃなくて砂糖を使ってもいいし、エールイースト使ってもいいということです。
大切な想い
ただ、Cold IPAに対して特別な想いのあるWayfinderはこう語ります。
"It’s Wester than West Coast."
”Cold IPA is the anti-thesis of NEIPA.”
良き表現で、これ以上にしっくり来る説明はできません。いくら味わいの追求のためだからといって濁らせたり、London Ale ⅢのようにHazyで採用率が高いイーストを使ったものをCold IPAと呼ぶのは個人的にはうーんって感じです。
まとめ
お疲れさまでした!
Cold IPAについて想いを馳せる1日でしたので記事にしてみましたが、確固たる想いで作った作品が一つのスタイル名を持って世に広がっていくのはとても幸せなことだろうなとつくづく思いました。そして、それこそがものづくりの在るべき姿で、自分もより一層精進しないとなと改めて思いました!
"Wester than West Coast"
シンプルで分かりやすい表現です。日本でも色んなところがCold IPAを作っていますね!作り方のポイントなどはイースト管理やマッシングに現れてくるのかと思いますが談義できたら、更新してまとめてみたいなと思います!
では今年もどうぞよろしくお願いします👐
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