Yeast Counting【2つの指標】
あけましておめでとうございます。
こんにちは!Ble_です。
新年1発目の記事は、Yeast Countingについてです(2発目だった😂)。
酵母を数える、というだけの技術に見えて非常に奥深く、醸造技術の方針を大きく左右することになるはずです。というか、そう言われています。
では行きましょう!
参考文献は、Yeastという書籍をはじめとした、様々な文献からとっています。
Yeast Counting/何をみるのか?
そもそも酵母を数えると一口に言っても、何を数えて、何に利用するのでしょうか。
簡潔に基本を抑えてみようと思います。
Yeast Countingをする意味は、酵母の状態を正確に捉えて、安定したpitch rateと、*初代よりも良い状態の世代を作り出すことに集約できます。そのためには、正しい知識と経験が必要です。
(コスト的にも酵母代が浮くので得です。だからといって、何十世代とくり返すと痛い目にあうので気をつけて。)
Viability:生きている酵母の割合
Vitality:酵母の健康状態
この2つがcountingをする上で重要です。
そして、忘れてはいけないのが、Yeast Countingをするということは酵母を再利用することと直結するということです。工場から送られてきた酵母をいちいちカウントする必要はないです。
*醸造家へのアンケート結果によると、3世代目の酵母が一番良い状態という回答になった。科学的な知見よりも経験的にそうみたい。
Viability/生きてる酵母の割合
一つ目がこのViability(以下、VB)です。
酵母がどれくらい生きているのかの数値です。酵母を製造している工場から送られてきたものはviable yeastなどと言って生きている酵母の数を書いてくれていたりします。
VBは割合です。
全体の酵母が100匹いて、50匹が生存していたと測定できた場合:VB=50%となります。
非常にシンプルです。測定方法については、次の記事で紹介しますのでVBの基本を抑えます。
適正なpitch rate
pitch rate というのはビールのキャラクターを左右する重要な値です。
簡単に説明すると、以下の通りです。
pitch rate=酵母数/L/P°あるいは、billion/L/4points (unit: billion)
pitch rate: 糖度1(P°, SGなら4ポイント)のwort 1Lに、酵母を何billion投入するかの値。ちなみにSGは、Specific Gravityの略で単に比重を示します。比重の1.###となっている###の三桁をポイントと示します。SG1.050は、50ポイントの比重となります。
比重と糖度は直線的な関係じゃないので、この通りじゃないですが無視します。
お家でノンアル作るときの例として出してみると、OG1.012のwort, 10Lに対して40billionの酵母を入れたらpitch rate はどうなるでしょうか。
pitch rate=40/10/(12/3)=4/3=1.33
となります。
これを応用して、求めるpitch rateに適切な酵母数を手に入れます。購入してきた酵母は、あらかじめ活動する酵母数が記載されていますから、それを計算するだけで問題ありません。
しかし、酵母を再利用する場合には、発酵タンクから澱引きしたもの(slurry)を使用するので、そこに一体どれくらい酵母がいるのかを自分で把握しないといけません。
把握しないで、とりあえずでピッチしてしまっても発酵はしますが、再現性がありません。
研修中に発酵タンクからBBTに輸送して、そのまま仕込んだ麦汁をその発酵タンクに入れるという方法を勉強しましたが、これは相当な場数が必要なはずです。
コンタミのリスクも少ないので、その点では理にかなってはいます。
Autolysedという香りのコントロール
VBを知ることは、適正なpitch rateを実現するために必要です。
では、仮にVB=50%のslurryをpitch rateに従って5L投入するとします。全く同じ状況で、VB=90%のslurryがあったしたら、同じpitch rateの実現には何リットルのslurryを投入すべきでしょうか。
投入すべき量=5L*50/90≓2.78L
となります。
pitch rate的には全く問題がありませんが、果たして出来上がるビールは同じものになるでしょうか。
結論から言うと、なりません。
原因は、slurryの中に含まれている死んでいる酵母から出る特殊な香り/Autolysedです。
よく知っているようなDMSとかDiacetylなどと異なり、これはAutolysisとかAutolysedといった現象に由来する香りの呼称です。
このAutolysedは、ビールに「meaty」だったり、「うまみ?」を感じるような香りを与えるとされています。ワインではあえてこれを添付する方法もあるようです。酵母の自己融解からこの香りが発生しますので、活動していない酵母を多く入れて発酵させたビールは自ずとこの香りがつきます。
詳しいAutolysedについては↓↓
ビールの香り【Autolysed/自己融解臭】
まとめると、Viability(VB)を求める目的は2つ(Vitalityも同様)。
②Autolysedをコントロールするため
三代目まできちんと①②が達成できるなら、自ずと良い状態の酵母、良い状態の発酵を実現できます。
次は、Vitality(VT)についてです。
Vitality/酵母の健康状態
VBが酵母の存在割合で、Vitality(VT)は酵母の活動状態を示します。
あの人、バイタリティーに満ちてるよなーのバイタリティーですし、想像しやすいですね。
VTが高いslurryをpitchしたビールは発酵の立ち上がりも早く、発酵が終了する時間も短くなります。逆の場合は、そのまんまです。
酵母を再利用する場合には、適正なpitch rateだけでre-pitchしても良い発酵になるとは限りません。
酵母もDead or Alive ではなく、中間の状態ももちろん存在します。ですから、適正なpitch rateと、適正なVTを把握する必要があります。VBを求める理由と一致しています。
VB=95%でも、VTが低ければ、pitch rateを調整するために計算したslurryの量よりも多めにピッチするなど調整をする必要があります。
測定方法は次回
では、いよいよVBとVTの測定方法についてまとめてみます!
長くなりそうなので次の記事にします🎈
目次的なの上げておきますので、これらに該当する技術に興味がある方は次の記事も読んでみてください👀
全部紹介できるかどうかはやる気次第。
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