こんにちは!Ble_こと谷澤です。
前回の麦芽編に続いて、1年前の記事を更新していきたいと思います。
テーマは「【ホップ】について。基本的な事柄をさくっと説明していきます!
ではいきましょう!
ホップ/Hop とは
ホップ(勿布、学名:Humulus lupulus)はアサ科のつる性多年草。雌雄異株。和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)。
毬花はビールの原料の一つで、苦味、香り、泡に重要であり、また雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める働きがある。全国の山地に自生する非常によく似た植物にカラハナソウ(H. lupulus var. cordifolius)があり、しばしばホップと混同される。これはホップの変種であり、ホップに比べて苦み成分が少ないのが特徴である。
本来のホップは、日本国内では北海道の一部にのみ自生する。
出典:wikipedia より
前回に引き続いて【そもそもビールとは?ホップ編】です。
ウィキ大先生の解説は少し難しいことが多いので、かみ砕いて説明していこうかなと👀
ビールは好きだけど、以外とこのホップというものを知らない人も多いのでないでしょうか。
このホップについてちょっと学ぶだけでクラフトビールの世界は一気に輝いていきそうです。
(これは京都府与謝野町でのホップです。国産ホップを契約栽培でなく、クラフトブルワリー向けに販売しようと市が協力して行った初めての事例です。)
上記の画像がホップです!
これはカスケードというホップの画像です。生のホップを見たことがある人も少しずつ増えてきたような気がします。毬花(まりはな、きゅうか)という部分がホップとして使われます。英語だとConeなんて言ったりします。
余談ですが、学部生のころはこの京都与謝野町のホップ栽培に焦点を当てて論文を書きました。
ホップも麦芽同様、ビールの製造上でどういった役割を果たし、結果としてビールにどのような効果をもたらすかを説明してきたいと思います。
その前にホップとはどういったものなのか、基本的なことだけ説明します。
植物として
ホップはつる性の多年草です。
"つる"がグングン伸びまして、毬花【まりはな、きゅうか】と呼ばれるものをくっつけます。
多年草と言うことで、栽培するときは球根を地中深くに植えて、つるを剪定して伸ばして、収穫するときは実を摘むか蔓をまるごと切ってホップを収獲します。そこで、球根を丁寧に保管して、また来年地中深くに植えるわけですね。
また、このホップは商業用には雌株しか栽培されません。なんとも残酷な女尊男卑の世界でございます。
雄株のホップはルプリンというホップの香りや苦みを担当する部分が雌株に比べて少ないからです。
本来はあとでも述べますが防腐剤としての役割が強かったホップですが、香りの面も重要視される1つの要素になった時代では雄の株は製品としては不必要になってしまったわけです。
そんなホップはヨーロッパ、アメリカでものすごい品種改良を受けておりまして年々すごいホップがたくさん出てきております。
しかし、このホップちゃんたちは食卓に並ぶことはほとんどありえないんですね。
なんでかっていうと、めちゃくちゃ苦い。
サラダに入れたらもう、アウト。
熱を加えることによってホップ内の化学成分が変化して苦み成分になるので、生で食べるのが一番苦くないんですが、それでも強烈な苦みをホップは備えています。
良い香りですので、枕にいれたりとかあるんですけど、ほっとんどがビールに使用されます。
次は、ホップのビール醸造における役割をさくっと説明します。
一部品種紹介はこちら☟☟
【ちょっと古いけど】ホットな厳選6ホップ【紹介】
ホップの役割
- 香りを与える
- 苦みを与える
- 抗菌性を与える
- 泡持ちを与える
主に語られるホップの役割はこんな感じです。ホップは別になくてもお酒はつくることができるんですね。
ただホップがないとそれはただの麦ワインであって、ビールにはなりません。
それぞれについて更新前よりも詳しめに書いてみます。
香りを与える
一番ホットな特徴です。
この【香り】が現代のクラフトビール文化を支える要素です。
2000年以降もアロマホップ、ビターホップ、ファインアロマホップなんてホップを大別したり、ノーブルホップとかの呼び方もあったんですが、近年はだんだんと使われなくなっています。
基本的には、アロマホップ、ビターホップの2種と覚えてもらって大丈夫です。
苦みのところでこのあたりは解説しますが、今はホップがどんな香りをもっているかということをざっくり説明したいと思います。
《柑橘/Citrus》
《フローラル/Floral》
《ハーバル/Herbal》
《アーシー/Earthy》
《パッションフルーツ/Passion Fruits》
こんな感じに大別されがちです。
実は色んな成分がこの香りに起因していまして、僕もまだまだ勉強しないといけません。例えば、カリオフィレンはハーバルだったりスパイシーな香りの要因になります。
アメリカ産のホップは柑橘系の香りが印象的で、
イギリス産のホップはハーブ系の香りが印象的で、
オーストラリア系のホップはパッションフルーツの香りが印象的とされてはいます。(How to Brew より)
ただ、これだけホップの品種も増えていますからもちろんそうじゃないやつもあれば、そういった特徴が極めて強く出ているものもあります。
多くの地域で栽培されるカスケードというホップは代表的なホップですが、柑橘系の香りがしっかりしている印象で、わかりやすいでしょうか。
中でもIPAと言ったスタイルで、アメリカ産のカスケードホップをたくさん使用したものなんかは芳しいレモン、オレンジ、グレープフルーツの香りが感じやすいような気がします。使い方次第ですが。
【 PUNK IPA 】なんかは手軽に購入でき、柑橘感を感じやすいです。
ハーブ系の香りはイギリスのビターっていうビールから香ることが多いイメージ。
グラッシーとか、色んな表現がありますが、芝を嗅いだときのような香りがするときもあります。すごく特徴的で、僕もその香りが大好きです。
また、オーストラリア系のホップは、滋賀県近江八幡にある【TWO RABBITS BREWING】さんが積極的に使用しており、その特徴を捉えやすいかと思います!
Two Rabbits Brewing Company
Two Rabbits Brewing Companyは琵琶湖湖畔に位置し、古くからの近江商人の町である滋賀県近江八幡市に本社を構えるクラフトビールブルワリーです。
ホップの芳しい香りですが、揮発性の成分が多いです。この部分は後々もでてきますので、頭に入れておいてくれるとすごくありがたいです!
では次は苦みについてです。
ちょっとブルワー向けの内容になるかもしれないので、難しいことはちょっとなーという方はパスしてもらってかまいません!
苦みを与える
最近のは苦みが少ない、もっと芯の太いIPAが飲みたい~
何度聞いたことか、このビールの素晴らしい苦みについての是非。
もちろんこのブログを読んでいる方もこの苦みが好きか嫌いかは別として何かしらの意見をお持ちかと思います!自分はもちろん好きです!ただ苦すぎるのはあまり好きじゃないですね。
この爽やかな苦みがどう素晴らしいかは置いておいて、苦みの正体はこのホップが要因になることがほとんどです。
それ以外は何かというと、モルトなどからのポリフェノールなんかも収斂味(渋み)を帯びていて、苦いと感じられます。
どうして苦くなるのかというと、α酸が熱によってイソα酸に変化するからです。
実は香りのときにも出てきたんですが、この熱というのがホップの個性をどう活かすかを司る重要な部分です。
この熱なんですが、どこで加えられるかというと、煮沸のときなんです。
ビールというのは、麦芽を煮て、ホップ、酵母を加えて、発酵、という段階を踏みます。
例えば、このホップを麦芽を煮込むときの最初から最後まで一緒に煮るとします。そうすると、熱が大量にホップに入るので、苦みが一番出るわけですよね。
でも逆に煮込みが終わる5分前だったら苦みはあまりでないですよね。
さらに言えば、煮込みが終わって冷めてからホップを投入すればほとんど苦みは出てこないです。
ホップが酸化していると熱を加えなくても、多少苦くなりますが。
ホップのα酸とは
ホップの苦み成分の中核となるα酸。6つに分けられます。
- フルロン/humulone
- コフムロン/cohumulone
- アドフムロン/adhumulone
- それぞれのcis-,trans-型
3種類×2型という構図です。
これらの成分はこの状態ではあまり水溶液に溶け込まないのですが、熱を加えられてイソ化/isomerized すると、水溶液に可溶になり、苦み成分として認知されます。
どれくらいの温度からそうなるかというと、79℃以上と一般的に言われています。
ですので、煮沸後に入れるワールプールホップなんかも、温度を落として75℃くらいでホップを投入することがあります。
【ドライホップ / Dry Hopping】
クラフトビール業界で製造が盛んなエールビールの発酵は基本的に18℃~22℃前後で行われることが多く、そのときは熱はまったくないですよ。
そのときにホップを投入することを、ドライホップと呼びます。
発酵終了時に入れる説もありますね。発酵初期はディップホップ/Dip hop だ、とか。なんで分けて説明したい勢がいるかというと、発酵中はイーストの影響を受けて香りが変質することがあるからです。
でも、実際には発酵中でも発酵終了時にホップを入れてもドライホップと形容していいと個人的には思います。
キリンのデータによれば、発酵初期のホップ添加ではミルセンがかなり減っていて、リナロールは減っていません。それはそれで面白いですね。
Hop Creep【Dry Hop と二次発酵の不思議な関係】
香りのところで、揮発性について述べましたが、熱を加えれば加えるほど香りは飛んでいきます。
つまり、香りと苦みは一定の相関関係をもっているわけですね。
ドライホップがよく使われる目的は苦みを引き出さないことよりも、この香りをたくさんビールに残しておきたい、そういった思惑も非常に強いんですね!
苦みも強くて、香りも強いIPAはどうなるんでしょうか。
これは、考えてみると非常にシンプルで、何回も分けてホップを入れていれていることが多いです。つまり、苦みを引き出したいのか、それとも香りをだしたいのか、中間か、などそれぞれ目的をもったホップの投入期間があります。
IBU
IBUという単位があります。
International Bitterness Units の略です。
苦みの単位。これが大きいと苦いという風に捉えられます。だいたい日本の大手がつくるラガービールが20前後だとすると、IPAなどは40~60前後くらいあることが多いです。
数値的には、イソフムロン酸がどれくらいの濃度で溶け込んでいるかの指標です。単位はppm。
1L中に何mg溶けているかです。
倍ですから、当然苦いだろと思うかもしれませんが、実は飲んでみるとそんなに感じない例も沢山あります。
香りで苦みがマスキング【隠されてる】状態にあるからなんです。
面白いですよね。ブルーパブなんかではIBUいくつみたいな表記をたまにみかけます。一つの指標にビールを楽しんでみてもいいのではないでしょうか!
抗菌性を与える
ホップは抗菌性を与える役割としても有名です。
よく聞く話では、IPAの誕生はイギリスからインドまでの航路が長く、ビールが腐らないようにたくさんホップを入れて保存性を高めていたからというのがあります。
実は僕もまだこの抗菌作用については分かっていないのですが、イソα酸が抗菌作用を持つともいわれています。グラム陽性の菌~みたいにウィキに書いてありましたが、文系の僕にはここまでが限界です。
面白い話の一つにサワービールというスタイルがあります。
乳酸菌発酵させて酸味をつけるパターンの多いスタイルですが、この乳酸菌はホップの抗菌性にやられがちです。ですので、乳酸菌発酵させる前はホップをあまり使いません。IBUは5前後のことが推奨されたりしています。
ですので、伝統的なサワービールは苦みが少ないことが多いです。
ケトルサワーという手法では、乳酸菌発酵させたのちに煮沸する工程を踏むので、苦みを付けることができます。
Sour IPAというスタイルもキテます。
泡持ちを与える
ビールには泡が立つことが多いです。
なんで泡が立つかというと、泡を保持してくれる機能があるからです。シャンパンやコーラに泡が立たないのは、発生した泡を保つ機能がないからです。
では、その泡を保持してくれる機能はなんでしょうか。
そのうちの1つがホップのイソα酸です。
構造的に泡と泡と結びつける能力がありますから、発生した泡をぐっと保持してくれます。ですので、一般的にIPAなどのホップが多いスタイルは泡持ちがいいことが多いです。
それ以外にも泡持ちに影響を与えるのは、
タンパク質、デキストリン、ポリフェノール、などでしょうか。
小麦はたんぱく質を多めにもっていますので、白ビールは泡持ちが良いことが多いですね。しかし、プロテインレストというマッシングスケジュールを多めに設定すると過剰にたんぱく質を溶かしてしまい、泡持ちに影響を与える可能性もあります。
まとめ
というわけでホップのなんとなくの話はこれで終わります。
もっと細かい話などは別の記事でまとめながら、この記事にも簡単に紹介できるようになればいいのかな。がんばります。
お次は酵母に入っていきます🎈
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