Yeast のスペックシートを見てみよう!【Fermentis】
こんにちは!やざわです!
今回は、酵母のスペックシートを見てみようかなと思い〼!
各会社が酵母の特徴を分析したものをスペックシートに公開していますので、今回はその一例を覗いてみます!第一弾として、ドライイーストの大御所Fermentis のスペックシートを見てみることにします。
・和訳して読めるけど、具体的に何を示しているのかわからない
スペックシートの数値について解説した後に、加水活性とピッチレートについても簡単に触れていきます!
ホップや、モルトのスペックシートについても簡単にまとめています☟
Hopを科学的に選択するために
酵母のSPEC SHEET
酵母をどこかから購入するときには、必ず酵母のスペックシートを確認することができます。そのシートに記載されている情報を一緒に見ていきましょう!
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Fermentis spec sheet
まずは、ドライイーストの大御所Fermentisから見ていくことにします。spec sheet はこちら☜
US-05 というアメリカンエールイーストを参考にします。メジャーすぎて、目を閉じていてもざっくりとした特徴が浮かんでくる人も多いかもしれません。それくらい汎用性の高いイーストですが、spec sheet にはどのような項目があるのか見てみましょう。
①原材料:
どんなイーストの種類かを書いています。
今回はS. cerevisiae なのでエールイーストです。これがラガーイーストならば、S. pastrianus ですし、ブレットを使っているなら B. ~ になっているかもです。品種ごとに大きな特徴があるので、基本的にはまずここを確認します。
また、Fermentis の場合はドライイーストなので品質の安定材(E491)が使用されています。特に発酵に何か問題があると指摘されていないので、気にしなくて大丈夫です。
②Total ester:
エステルがどれくらい出るのかをlow, medium, high, の3段階で評価しています。
スタンダードのウォートで実験しているとありますが、大体OG 1.048、使用モルト 2row とかだと思い〼。それを20℃で発酵させたときのエステル量が自社比でどんなもんかということです。 どんなエステルが出るのかなどは書いてありません。
③Total superior alcohols:
高級アルコールがどれくらい発生するかです。
高級アルコール/Fusel alcohol が最終的にビールに残っていると除光液っぽさやアルコール臭さを感じさせます。hot な感じ、と良く表現されます。高級アルコールも発酵中にフルーティーなエステルに変化するルートがあるので、一概に悪いとは言えませんが、一つの指標にはなります。
③Apprarent attenuation:
発酵率の指標。
78~82% と書いてあるので、初期比重が1.100だったら、最終比重は1.018~1.022 になりますよ、ということ。この数値が高ければ、ドライな仕上がりになりますし、低ければ糖分が残りやすいです。
ただ、これは「モルトの糖分をどれくらい分解できるのか」という情報なので、違う酒に使用すれば、糖分構成が違うのでもちろん違う結果になります。80%を基準に考えると分かりやすいかもです。
④Flocculation:
凝集性の指標。
凝集性とは、酵母がどれくらい沈んで固まってくれるかということです。+/- とあるのは、普通ってことです。+ならば、澱引きしやすく、クリアなビールになりやすい。- ならば、ビール中に長くイーストが漂うので、濁りやすい。沈みやすいイーストは発酵率が下がる傾向にありますが、二酸化炭素をタンクの底から注入してやりイーストを舞わせることで再度発酵が進行します。
ですので、比較的凝集性が高いイーストの方が発酵の自由度は高いかもなと個人的には思っています。
⑤Sedimentation:
酵母が沈むまでの速度。
これが遅いとずっと舞ってるので、長く発酵します。早いとすぐに沈むので、何もせずに放っておくと発酵が止まるまでの時間が短くなりやすいです。④と意味合いは近いです。
⑥Fermentation tempereture:
Fermentis がお勧めする発酵温度帯です。
この温度帯から外れたところで発酵させるのも自由です。ただ、何かしらの不具合が出ると思いますので、まずは実験をしてみるといいかと思い〼
⑦Pitching:
酵母を投入するときの方法について。
E2U と表記されているものに関しては、ドライイーストのままウォートに投入してもいいし、rehydration(加水活性)させてからでもいいよ、ということです。Easy to Use の略称です。このマークがないものに関しては、加水活性してから投入するのが推奨されています。加水活性については後に触れます。
⑧Dosage:
酵母の投入量。
大体の目安として1hl(100L)に対して何グラムの酵母を入れてください、という話。今回は50g~80gとのこと。ピッチレートと大きな関りがあるので、すごく重要。
⑨Typical analytics:
数量分析。
Purityは無視してもらって、Viable yeast の数だけ見てもらえば問題ないです。Viable yeastは、活動可能なイーストの数です。今回は、1.0*10^10 cfu/g 以上と表記されています。cfuは、colony forming unit のことで、1gに何匹の「活動可能な」イーストが存在しているのかという指標です。
⑩Storage:
ドライイーストの保存方法と期限について。
基本的には冷蔵保存されると思いますが、半年以内に使い切るようにしましょう。
24℃~:7日間以内
15~24℃:~6か月
~15℃:6か月以上
⑪Shelf life:
再利用するときの注意点。
一度使用したイーストが余ったら、しっかりパッケージングして、4℃で保存。なおかつ一週間以内で使ってくださいとのこと。300Lなどのマイクロブルワリーの場合は、イーストが使い切れないことも多いと思います(一袋500gとか)。なので、その場合はしっかりパッケージングした上で保管してください、とのこと。
個人的には、パッキングして保管するのは非常に怪しいプロセスだと思うので、推奨できません。まだイースト用のタンクにウォートと詰めて冷蔵しておいた方がましだと思い〼
加水活性/rehydration
簡単に加水活性についてまとめます!詳しい内容は別の記事でやります。
ドライイーストは、イーストが文字通り乾燥しているので、そのままウォートに投入するとストレスが多くて大変でしょ?という認識が一般的でした。ここでいうイーストへのストレスとは、浸透圧です。
ウォートなどのお酒造り前のジュースは、砂糖が豊富に溶けていて、イーストの細胞内にある液体よりも比重が大きいです。ですので、しっかりとした細胞膜がイーストの周りを覆っていないと膜にストレスがかかりすぎてしまいます。きちんとした細胞膜ができていないと、イーストは特殊な動きを見せます。
そこで投入されたイーストはまず細胞膜を強固にする動きを見せます。ステロールなどを作るのですが、そこに必要なのが酸素です。だから、ウォートは酵母を投入する前にエアレーション/Aeration という酸素を溶け込ませる作業を行うことが多いのです。加水活性は、この工程をまず、イーストを比重の大きいウォートに入れる前に小さい規模で行ってあげましょうということです。
加水活性のやり方
加水活性はドライイーストを使用する際にやるのですが、Fermentisの場合、E2Uと表記があるものは加水活性をしなくても良いと認めれています。乾燥させる前のイーストに十分な栄養を与えて、そもそもしっかりした細胞膜を作らせて、なおかつ特殊な乾燥方法によって細胞膜に負荷をかけずに製品化しているからという説明をFermentisの説明会で聞きました!
具体的な加水活性/rehydration と スターターのやり方は別の記事を作成中です!
殺菌した容器に、殺菌した水やウォートなどのジュースを25~40℃に温める。ピッチングする前の10~20分前に、容器にイーストを入れて混ぜ混ぜしておく
Pitch rate/ピッチレート
ピッチレートについても別の記事でしっかり取り扱いつもりですので、ここでは簡単に触れていきます。
【pitch rate(pr)】
糖度とウォート量に対して、どれくらいの酵母量をピッチングするか、の指標。
0.5~2.0 くらいの範囲で採用されることが多い。
以上の式で表されるのが、pitch rate です。以下の式に書き直すことができます。
糖度1%のウォート1Lに酵母を1billion(10^10, 10億)個投入した場合のpr=1.0 ということです。分かりやすい式を書きますので、そのまま記憶してもらうと何かと便利です。
糖度10%(OG=1.040)のウォート1L に10billion の酵母を投入した場合、pr=1.0
まとめ
酵母のスペックシートとして、まずはドライイーストの例を見てきました!会社ごとに異なる書き方や注意書きがありますが、概ね必要な情報は載っています!
これまでスペックシートを見てなかったよ!という人も、今回を機に是非スペックシートを見てみてはいかがでしょうか🎈
研修先のイーストもパッケージを眺めて、会社のHPを辿れば必ず見つけることができます。
質問などありましたら、DMやコメントしていただけると幸いです🙆
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