【月とビールの関係】Part.2 満月は醸造に影響を与えるか
こんにちは!Ble_です!
素晴らしく長いゴールデンウィークも終わりを迎え、平常運転に戻られた人も多いのではないでしょうか。帰省するもよし、旅行に行くもよし、何もしないもよし。
こと僕に関しては、小さなブルワリーで機械を動かすとはどういうことか、ホームブルーとの違いは何か、経営とはなにかということを非常に近い距離で学ばせていただいております。
いつかこの経験は記事にします。将来、ブルーイングを生業にしたいというかたに少しでも役に立つことができればと思います。
そんな志だけはいっちょ前の僕が今回紹介するのは、月とビールの関係。
第一弾はかっっっっっんぜんに高校物理の復習で、最後は「空想科学読本」にインスピレーションを受けまくったまとめとなりました。変態の方は、どうぞ。笑
じゃあ第二弾は何なのかというと、【醸造と月の重力】の関係に個人的な考察も含めアプローチしてみたいと思います。
スピリチュアルな科学の側面も理論と同様に評価されるべきと考えている僕は、月がもつ審美性なども記事にまとめたいのが本当です。
しかし、「満月のときに飲むビールは美味しい」「半月のときに施したドライホップはなんとなくコンタミ(雑菌混入によりビールが変になること:contamination の略)を起こしそう」などとボヤッとした記事で終わってしまいそうな気がします。
もちろん、これらを物理的に考察することも可能なわけで、『満月から受ける光の波長が脳に味覚を研ぎ澄ますホルモンを分泌している可能性』とかなんでもできます。しかし、きりがないので、今回は月の重力をメインテーマに醸造、すなわち生産との関わりについて考察してみたいと思います。
ながながとなりましたが、いってみましょう!
【月とビールの関係】Part.1 シュピゲラウのグラスを割らないためにどうするか
お久しぶりです!Ble_です。 浜松に移住してきたり、実際に小規模醸造所で研修させてもらったりと、非常に充実してばたばたした毎日を送っていたので気づくとほとんどブログの更新がなされていませんでした。 ちらちらと覗いてくれていた方がいたら、本当に申し訳ありませんでした。生活に余裕と言いますか、リズムが出来てきましたら定期的に書いていくつもりです。 では、早速今日のテーマについて。 ...
先行研究はいかに
月と醸造の関係については、検索してもらえば分かると思いますが日本ではまったく文献がありません。
ないというと語弊がありそうで、オープンアクセスできるものはぱっと見、みつかりません。もしかしたら大手が研究しているかもしれませんが、可能性は低そうです。
では、海外ではどうでしょうか。
ちらほらと満月の日に醸造しました、というビールが見当たります。つまり、海外の方が醸造と月との関係に関しての先行研究がありそうです。
ちなみに先行研究というのは、読んで字のごとく、似たようなテーマを誰かが先にやっているものです。先行研究をみながら、自分の研究との違いを発表するものよし、論文が見落としている点を自分が補うのもよし。知見を増やすにも、先行研究を探すのは大事なことです。
満月のときにしか仕込まれないビール
そうこうしているうちに、先行研究ではありませんが、面白い記事をみつけました。
ペリュヴェルという南ベルギーの小さな街。フランスとの国境付近にある街ですが、その街の一つに家族経営するブルワリーがありました。そこでは今でも秋頃(恐らく収穫祭ごろでしょうか、9~10月かと)の満月が昇る日、特別なビールを一回目と同じレシピで仕込みます。
めちゃんこビールに詳しい方はもしかしたらお気づきでしょうか。 もちろん僕は知りませんでした。笑
《 Brasserie Caulier》の Paix Dieuというビールのお話です。
Belgium experiments with mystical "full moon" beer
PERUWELZ, Belgium (Reuters) - Full moons are often associated with tides, insanity and creatures like werewolves, but it turns out they're also good for brewing beer. In Peruwelz, a small, sleepy town in southern Belgium, a family-owned brewery has produced its first batch of specialist beer brewed by the light of a full autumnal moon.
このPaix Dieu というビールは、れっきとしたアベイビールです。アベイビールが何なのかというと、修道院と何かしらの関係がありますよ、という醸造所がつくるビールのことです。ちなみに、Abbey はイギリス英語ならアベイ、アメリカ英語ならアビーと発音します(発音記号としては同一なのですが、イギリスでは最後のIの音は、ちょっとエの音が入るみたいです。なんでアビーじゃなくて、アベイです。:http://www3.famille.ne.jp/~chikashi/emille/pron.html)。
修道院ビールにはトラピストビールとアベイビールとありまして、トラピストビールは定義ががちがちで正式に認められている醸造所の数も非常に少ないです。
代表的なものが、Chimay,Orvalなどです。リカーショップなどでも財布を少しはたいてやれば購入することが出来ます。
じゃあアベイはなにかというと、厳格な定義には添えないけども、修道院と関係がありますよくらいの感じですね。
なにかしら宗教や信仰と結びついているようなアベイビールの中で、唯一この Paix Dieu というビールは満月のとき限定で醸造されます。ちなみに、ペデューという発音します(違ったら申し訳ないです)。
話を本題に戻すと、どうして満月のときに醸造するのかと。
“We made several tests and noticed that the fermentation was more vigorous, more active,”
何回か試してみて気づいたことがあるんだ。(満月のときに仕込むと)発酵がめっちゃ活発になるんだよ!
非常に興味深い話がでてきました。参考文献ではありませんが、貴重な伝聞です。
何度かテストをしたというのは、満月のときと満月じゃないときで同じレシピ、同じ作り方、同じイーストを使用したら明らかに差があったということでしょう。
このペデューというビールはアルコール度数が10%あるトリペルというスタイルになります。
ハイアルコールのビールなので、酵母君の頑張りは普通のビールよりもかなり大きいです。そんな酵母君が満月のときになると、うぉおおおおおおお!!ってなるという主張です。
あ、そうですか、済ますのは簡単ですが、今回はここに切り込んでいきたいと思います。
“The end product was completely different, stronger, with a taste lasting longer in the mouth,”
完成したビールは満月じゃない日に仕込んだものとまっっったく違うよ。力強いし、味わいが口の中に長く残り続けるんだ。
ここまでいうんです。商売ごとですから幾許か誇張表現は仕方ないにしろ、気になります。
The full moon speeds up the fermentation process, shortening it to five days from seven, which adds extra punch to the beer without making it harsh, according to connoisseurs.
満月は発酵プロセスのスピードをあげ、通常なら7日間かかるものを5日間にするんだ。加えて、ビール玄人に言わせれば、味わいにパンチが増しているんだけど、嫌な尖り方はしていないのである。
きましたね。日数まで明記しています。データこそ載っていませんが、長い歴史のなかで何度も繰り返された結果でしょう。味わいもやはり力強くなるようです。力強くなるということが、どういうことかは個人的な解釈と共に後に設定したいと思います。
The idea came to Caulier after he visited a friend in Alsace, a winemaking region of eastern France, who told him about how he planned his entire production schedule according to the lunar calendar.
どうしてこの方法を用いることになったのかというと、東フランスのワイン製造地域であるアルザスにいらっしゃる友人を訪ねたことにルーツはあった。その友人は彼に、すべての製品を月齢にあわせて作るその工程を教えてあげたのである。
この教えに感銘をうけて、ペデューは誕生するわけです。
商品を完成させるまでに9つのステップをふむわけですが、そのうちの一つは瓶内二次発酵を2週間とるというものです。
ハイアルコールのビールではよくあることで、時間をかけて発酵を促します。
最後に、月には色んな神話があるんやから、どれかしら神話じゃなくて本当に実在する話もあるはずだぞ、ということで締められています。
もうこれは僕にベルギーからご依頼がきたとしか考えられません。
残りの参考になりそうな文献、、、
では、これ以外の醸造と月の関係に関する文献はどうでしょうか。
Google scholar で検索してみたところ、なんと、めぼしいものがないではありませんか。加えて、なんと月の引力が人間に影響を与えないという文献の方が目立ちます。
特に、月の力を科学的に考察するという記事を書いている方もいらっしゃって、月の引力が酵母に与える影響も微々たるものすぎて考慮する必要なしという結論にもなってしまいそうです。笑
http://karapaia.com/archives/52216537.html
月の神話は本当なのか、科学的に考察して下さった記事です。
他の論文をかろうじて探したものも、かなりのスピリチュアルを感じるもので、懐疑的な人も多いのではという内容でした。つまりどういうことかというと、ここから先は僕自身が考察していくことになります。もちろん、他の論文や側面からアプローチすることになりますが。
その際に、パート①で長いこと時間をかけて予習復習した【月、太陽による流動体がうける力】をメインに醸造と月の関係にメスを入れてみたいと思います。
パート①の復習
パート①の内容を使いますので、簡単に復習を。
月による潮の満ち引きというのは全世界(極点を除く)で1日に満ち潮2回、引き潮2回起きます。これは月が一番近くなるとき、一番離れたとき、その中間のときの4パートに分かれます。
○で囲んだ範囲を一日で動く潮のサイクルで表してみました。
一日に2回ずつ満ち潮と引き潮が起きます。これが、満月のときと新月のときは波の高さの上下がもっとも大きくなります。どうしてかというと、月と同様に太陽も引力を持っていますので、太陽と月の引力のベクトルが重なるときに最も力が大きくなります。
仮に酵母が月による満ち潮の影響を受けて、などという話になると、毎日その影響をうけることになります。
ですので、月単体では現実路線ではあまり影響がないとおもわれるので、太陽との引力が重なるとき、すなわち満月と新月のときにだけなにかしら酵母が影響をうけると仮定してみたいと思います。
現状は影響なさそうですが、
とりあえず令和元年現在では、太陽の引力を加味しても酵母に影響を与える論拠はあまり見つかりません。
が、めげずにちょっと長い時間をかけて何か一つでも可能性を示唆できたらなって思います。
ずっとこのまま考察していると物理学者になってしまいそうなので、一旦この記事は《随時更新していく記事》ということでお許しいただけるでしょうか。
諦めずにこつこつ何かきっかけを模索しますので、温かい目で見守ってくれたらなと。笑
アベイビールがここまで結果が違うというので、きっと何かしら影響はあってもおかしくないはずですから、きっと何かあるかと思うんです。でも、それはなにかっていうのは、ちょっとすぐには出せそうにありません。
ちょくちょく更新したいと思います!
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